目覚めた瞬間、激しく嫌な気分になった。
普段ならこのまましばらくぼんやりと布団のぬくもりに浸るんだけど、全身に重く圧し掛かる倦怠感がそうさせてくれない。
小さく息を吸うと喉の方から瀕死の鳥の鳴き声みたいな掠れた音が聞こえ、苦しさで思わず咳き込む。
勿論それで楽になるわけもなく、むしろ今の最悪な体調を認識してますます気が沈むだけだった。

「ごほっ……あー、風邪かー……」

昨日一昨日と雨が降って寒かったものだから、正直油断してた。
どうも、季節の変わり目や急な温度変化がある日にはよくこうなってしまう。体調管理がなってないと言われれば確かにその通り。でも、手洗いうがいをきちんとしてたって、駄目な時は駄目だとも思う。そもそもあんまり外出てないし。
まとわりつくようなだるさを歯噛みして我慢しつつ、上半身をゆっくり起こす。ずりずりと腰を動かし、何とか布団から出ることができた。頭痛がないのは幸いだ。これで二日酔いよろしく鉛めいた鈍い痛みが頭の中で響いていたら、歩き回るどころか二度寝さえ危うくなる。痛み止めを飲むにも薬箱が置いてある居間まで取りに動かなきゃいけないわけで、というかどちらにしろ、そっちには一回足を運ぶ必要があった。
自室の扉を半ば体当たりに近い形で開け、情けないくらいの低速で縁側を抜ける。すっかり春めいてきて、冬と比べ明るく、瑞々しくなった庭の光景に意識を配る余裕はない。たった二十歩ほどの距離が、恐ろしく遠く感じた。
どうにか居間に辿り着き、あまり出番のない薬箱の中に仕舞ってあった体温計を見つける。緩慢な指遣いで取り出し、寝間着の襟元から差し込んで腋に挟み固定した。新しい型じゃないので、熱を測り終えるまではちょっと時間が掛かる。
とりあえず、冷凍庫の氷をひとつ摘まんで口に放り入れた。少し、喉が潤う。

「……ん」

舌の上で氷が溶けきった頃、体温計が控えめな電子音を響かせた。
小指よりも小さな画面に表示されている数字は、三十八度九分。四捨五入して三十九度。
完全に、完璧に平熱をオーバーした、典型的な風邪の諸症状そのいち。
ああ、そういえば昨日喉の調子が怪しげだったんだよなぁ……。一晩眠って治ってくれるのを期待してたのになぁ……。
なんて考えているうちに知らず体温計を床に落としていて、拾い上げるのにまた体力を消費する。
食欲は全く湧かない。この調子じゃお湯を沸かすくらいしかできないだろうし、ある意味好都合かもしれないけど。

「とりあえず、表に、貼り紙しとかないと」

誰より、星宮さんのために。
急な外出の時とかに使っている『本日休業』の字が書かれたそれを引っ張り出し、途中何度か本棚に寄り掛かりながらも、玄関の扉を開けてぺたりと貼り付ける。ふっと吹き抜ける風が火照った身体に心地良く、鮮やかな青色が見える空は雨と無縁そうで、絶好のお出かけ日和な天気が逆に恨めしかった。

……星宮さんは、どうしてるかな。

平日だから、きっと今頃は学校で勉学に勤しんでるんだろう。
勿論自分にも学生だった時期がある。退屈で、でも時折楽しかった懐かしい日々。
ほとんどいつでも誰かがそばにいた、賑やかな居場所。
熱に浮かされていたから、かもしれない。そんな昔のことに思いを馳せて、寂しさを覚えてしまったのは。
こうして風邪をひいても、家族と離れて暮らす私を介抱してくれる人は、どこにもいなくて。
何もかもを一人でやるしかないのだと、実感する。

「寝よう……」

居間から自室へ戻るのに、行きの倍の時間が掛かった。
二個目の氷を噛み砕き、少しばかり蒸した布団を被って、眠りに就こうと目を閉じる。
けれどなかなか寝付けず、古風に羊を数えてみたり、読みかけの本に手を出したりして、ようやく意識が薄れてきた。
次に起きたら、お腹が減ってなくてもご飯を食べておかないと、そう思って。










まず感じたのは、全身を包む不快な湿り気。
嫌になるほどの熱さに勢い余って掛け布団を蹴り飛ばし、朝より幾分すっきりした頭で時計を見やる。一時半。見事に昼過ぎ。
だいぶ汗を掻いて、寝間着がぐしょぐしょ……とはいかないまでも、酷く濡れている。嗅覚が微妙に麻痺しててよくわからないけど、匂いも結構きついんじゃなかろうか。
さすがにこのままでいるのは色々といい気分になれないので、着替えることにした。
箪笥の中から別の服、薄手で吸汗性の良さそうなシャツとスウェットパンツを選び、その場で袖と足を通す。居間に向かうついでに汗臭い上下を洗濯機へと放り込み、本日三個目の氷をもごもごと頬張った。冷たさと水分で思考がはっきりしていく。どうやら多少は体調もマシになったらしい。空っぽの胃がいつもの六割減の音量で空腹を訴えてきて、私は苦笑して冷蔵庫を開けた。

「材料は、あるか」

使いかけのベーコンを細かく刻み、グリンピースはないから丁度こないだ買ってきたブロッコリーの残りを適当な大きさに手で裂く。冷凍してあった白米は電子レンジで解凍し、鍋に牛乳を注いで強火で沸かす。沸騰する前にベーコンとブロッコリーを入れ、さらに白米も投入。おたまでほぐしたら、塩、胡椒、コンソメで味付け、最後によく溶いた卵を流してご飯に絡める。
充分に火が通れば完成だ。あとは器に食べられそうな量を装い、一欠けのバターを加えて、牛乳おじやの出来上がり。

「いただきます」

舌を火傷しそうになりながらも、はふはふと熱を逃がして咀嚼する。うん、おいしい。塩加減もばっちりだし。
スプーンで引っ繰り返していると次第に冷めてくるので、後半は苦もなく飲み込むことができた。
丼一杯を平らげ一息。まだ鍋には二人分あるけど、それは夜に食べればいい。気力が萎える前に、とついでに使った食器を洗い、確認のために再度体温を測る。八度七分。さほど変わってない。

「やっぱり、今日は一日おやすみ、かな」

星宮さんの残念そうな表情を不意に思い浮かべて、何というか、複雑な気持ちになった。
けれどもこんな体調で応対するわけにもいかない。風邪だってうつしちゃうかもしれない。
結局、私が取れる最善の行動は、とにかくさっさと治して本調子を取り戻すこと。大人しくしてるのが一番。

「……ただ、一回寝ちゃうと眠くないんだよなぁ」

体温計を仕舞って布団に戻り、朝と同じように栞を挟んだ本を開く。
そのうちまた瞼が落ちればと期待して読み始めたのに、中盤に差し掛かってから先の展開が気になって、気付けばあとがきまでしっかり目を通してしまっていた。いやなかなか面白かった……じゃなくて。
例え夜に目が冴えちゃっても、今は安静にして身体を休めないと。そう自分に言い聞かせて無心になろうとしてみたけれど、余計な雑念はどうしたって消えてくれない。色々なことがぐるぐる頭の中で廻って、現実と夢が段々溶け合っていく。

……あつい。喉に痰が詰まっていきぐるしい。
辛いなぁ。いやだなぁ。こころがどこかに深くしずんでいって、底なし沼に引き込まれてくみたいで――



―― リン、と。
毎日のように耳にする、季節外れの鈴の音が聞こえた気がした。



「あ、っ」

覚醒すると同時、私は跳ね起きて、ぽとりと額から何かが落ちたのを知った。
丁寧に畳まれた白のタオル。掴めば湿り気を感じる。熱を吸い取っていた所為か、冷たくはない。
誰がしてくれたかなんて、考えるまでもなかった。
立ち上がる。荒い足取りで居間に向かうと、見慣れた小さな人影が、テーブルの前で正座して本のページをめくっている。

「おはようございます。それとも、こんにちはの方がいいでしょうか」
「星宮、さん」
「まだ夕ご飯には早いですし、寝ていた方がいいですよ」
「いや、喉が、乾いて」
「なるほど、ではお水を用意しますね。鈴波さんは座って待っててください」
「ありがとう……って違う、そうじゃなくて。どうして、いるの?」

私の問いにはすぐに答えず、食器棚からコップをひとつ取り出した星宮さんは、冷蔵庫に入った浄水を注いで置いてくれた。折角の好意を無碍にするつもりはないので一気に飲み干す。ぷは、と息吐き、改めて向かい合う。

「下校中にいつも通り寄ってみたら、本日休業の貼り紙があって、どうしたんだろうって思ったんです。それで勝手ながら踏み込んだところ、奥の部屋で鈴波さんが寝ていたのを見つけて」
「ちょっと待って、ひとついい?」
「はい」
「鍵は? 掛かってなかった?」
「普通に開いてましたけど……」
「あれ、そんなはず……、あ」

そういえば。
朦朧としててあんまりよく覚えてないけど、貼り紙をしに行った時、閉め忘れてたんじゃ……。
すごい情けなくなって、自分の馬鹿さ加減に頭を抱える。そうしたら頭痛ですか、と星宮さんに訊かれ、もういいとこなしだった。

「熱冷ましの薬は飲みました?」
「ううん。今切らしてて」
「お昼は……食べたんですよね。すみません、少し失礼します」

不意に手のひらが伸びてくる。
些か冷たい感触が額に触れ、私は自身が幼い子供に戻ったように錯覚した。
仄かな人肌のぬくもり。心地良い、星宮さんのあたたかさ。

「さっきより下がったみたいですけど、今日は一日安静にしてないと駄目ですからね」
「勿論、言われなくても大人しくしてるつもりだよ」
「……でも、たまに鈴波さんは無茶をするので、正直信用できません」
「こんな体調じゃしたくてもできないって」
「それに、もしかして夕ご飯はあのおじやの残りで済ませる気ですか?」
「まあ、うん」
「……わかりました。電話、借りますね」

唐突な申し出に釈然としないものを感じつつも頷くと、星宮さんは手早く番号を押し、通話を始めた。
声が小さくて上手く聞き取れない。長話にはならず、三十秒もしないうちに受話器がそっと置かれる。

「誰と話してたの?」
「お父さんです。鈴波さんのところで泊まってもいいかって訊きたくて」
「え?」
「ちゃんと事情を説明したら許可はもらえました。お父さんも心配してましたよ」
「いや、あの、えっと……」

おかしい。色々とおかしくてもうどこから突っ込めばいいのかもわからないくらいおかしい。
こう見えても私だって健全な男で、付き合いがあるといっても一年弱、血の繋がりも当然ない赤の他人に対しこうも無防備なのはどうなんだろう。仮にも年若い女の子が一人暮らししてる異性の家に泊まるってのに、いくら何でも警戒心が無さ過ぎる。明成さんも明成さんだ、見知った仲とはいえほとんど二つ返事で許可を出すなんて、万が一を想像したりはしてないのかと。

―― でも、困ったことに。本当に困ったことに。
星宮さんがいてくれると聞いた私は、どうしようもなく、嬉しさを感じてしまった。
だから。

「……お世話になります」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」

春の陽が徐々に陰っていく。
縁側から微かに射し込む光の色が、夜の到来を告げていた。










昼に食べた牛乳おじやは、星宮さんの手によってさらにいくつか野菜を加え温め直された。
ついでにもう一品、軽くあっさりしたものを作ってもらい、二人で食べる。

「はふ、ん……おいしい、ですね」
「何でそんな驚いた顔で言うのかな」
「だって、今まで鈴波さんが作ったものの中では一番まともですよ」
「む」

片手で数えられる回数、彼女には料理を振る舞ってるけど、いつも微妙な顔をしていたのをしっかり覚えている。
どう考えても星宮さんの方が腕はいいし、残念ながら否定できる材料は見当たらなかった……というか、褒められてるのかそうじゃないのかいまいちわからない。
釈然としない気分で星宮さんの表情を窺うと、柔らかな笑顔を浮かべていた。嘘は、言ってないんだろう。
まあ、気兼ねなくそういう言葉を使えるくらいには信頼してくれてるんだと思えば、いいことなのかもしれない。

「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」

親切心に甘え、後片付けは星宮さんに任せる。
重くなったお腹の調子を確かめ、念のため三度目の体温測定。

「……やっぱりそう一気には下がらない、よなぁ」

無機質なデジタル数字は、相変わらず三十八度台なのを示している。
かなり汗を掻いたからできればお風呂に入りたかったけれど、悪化させたくはないし星宮さんにも間違いなく止められる。
ならせめてと、皿洗いを終えてこっちに戻ってきた星宮さんにひとつのお願いをした。

「あーそうだ。お風呂は入る?」
「えと、鈴波さんがよければ」
「だよね。女の子だもんね。着替えは……持ってきてないか」
「借りるにも私と鈴波さんではサイズが違うと思いますから、このままでいいですよ」
「星宮さん、結構華奢だからなぁ。私も細い方だけど、そっちと比べて一回り大きいみたいだし」
「はい。だから気にしなくても大丈夫です」
「わかった……っと、バスタオルとマット出さなきゃ。場所は、」
「知ってます。前に鈴波さんが雨の中をはしゃぎまわってた時、取りに行きましたから」
「……よく覚えてるね」

そう呟くのを待っていたかのように、鈴波さんが忘れっぽいだけですよ、と星宮さんは返してきた。
タオルを持って洗面所に向かった彼女の背中を眺め、

「敵わないなー……」

聞こえないところで、苦笑いを浮かべるしかなかった。










星宮さんがお風呂に入る前に歯磨きを済ませ、頼んでいたもの―― お湯で濡らして絞ったタオルを受け取る。
シャワーで汗を流せない代わりに、それで最低限さっぱりしておきたかった。着替えるついででいいし。
上半身をまず脱ぎ、力を強めに入れて肌を拭く。べたつきがさらりとした湿り気に上書きされ、すぐに窓を通ってくる風が身体の表面を冷やす。この時期の夜はまだ涼しいというより寒くて、なるべく急いだ方がいいのはわかっていた。
両腕から胸、お腹に下り、左、右の順に腋へ上る。汗が溜まりやすい箇所は重点的に擦り、首元、背中、顔も同じように。
そうしてくしゃみが出ないうちに別のシャツを着用、足も軽くやっておいて、新たに増えた洗濯物を投げ込みに行く。
と、普段は開け放たれた洗面所の引き戸が先を閉ざしているのが見えた。

「そっか、入ってるんだった」

仕方なく衣服とタオルを端に置き、日頃の習慣で表の鍵をチェック。ちゃんと掛かってる。
星宮さんの手際に感心しながら部屋へ帰って、もうすることもないので布団に包まった。
仄かに汗臭い。明日体調が良くなってたらシーツは洗って干そうと決意し、しばらく天井をじっと睨む。
どうにも目が冴えて、瞼を落としただけじゃ眠れそうにはなかった。
何となく本を読む気にもなれず、自分が酷く無為な時間を過ごしているように思えて嫌になる。

「……風に当たってこよう」

毛布で後ろから全身を包み、猫背で歩いて縁側に向かった。
西に位置する庭は月明かりに照らされ、見上げれば空で星が瞬いている。
毎日眺める、少しずつ変化していく景色。ふと淡い匂いを感じ、並ぶ草木を注視してみると、先日まで蕾だったはずの花が一輪ひっそりと咲いて、鮮やかな彩りを加えていた。

「何を見てるんですか?」
「早咲きの花だよ。ほら、あそこに」

いつの間にお風呂を出たのか、背後から飛んできた声に私は振り向くことなく、庭の一点を指差す。
隣で星宮さんが腰を下ろし、示した先へと視線を送って、本当ですね、と嬉しそうに言った。

「調子はどうです? 寒気がするようなら戻った方がいいと思いますけど……」
「大丈夫大丈夫。朝と比べたら遙かに良くなったし、たぶん明日は星見堂も開けるよ」
「そうですか。でも鈴波さん、あんまりここに居続けるとぶり返すかもしれませんからね?」
「星宮さんこそ、長居したら湯冷めしちゃうんじゃない? 私の風邪だってうつらないとは限らないよ?」
「だから、もうちょっとだけ、にします。鈴波さんが自分の部屋に戻るまで」

つまり、こっちが立たなきゃ星宮さんも動かないと。

「……しょうがないなぁ。もうちょっとだけ、ね」
「はい」

主導権を取られっぱなしなのは歯痒いけど、意地張って星宮さんに風邪をひかせたくはない。
それに言葉の端々から気遣いの色が伝わってきて、くすぐったくも、ほっとするようでもあった。
一人は寂しい。どんなに取り繕っても、誰かがそばにいてくれるのは、心強い。

「あの、鈴波さん」
「ん?」
「今更ですけど、どうして本屋さんになろうと思ったんですか?」
「宿題か何か? 身近な人の職業を調べよう、とか」
「中学生じゃないんですから……。単純に興味があってです」
「なるほど」

―― どうして、か。
私は腕を組み、軽く頭を後ろに傾けて、昔のことを思い出した。
漠然と夢を抱いていた自分。それを叶えるために何が必要かもわからなかった自分。
今こうしていられるのは、運が良かったからに過ぎない。でも、

「好きだから、かな」
「……好き、だから?」
「うん。好きならそれをみんなにも見てもらいたい、もっと知ってほしいって考えるよね。そういうこと」
「他にも、色々理由があるんじゃないかと想像してました」
「勿論あるよ。ひとつじゃない。ただ、好きな気持ちが一番ってだけ。簡単で拍子抜けした?」
「いえ、とっても、鈴波さんらしいです」

私の答えを聞いた星宮さんは、晴れやかな笑みを見せてくれた。それが結果。私の得た、かけがえない日常。
望ましい反応に満足して、ぶらつかせていた足を戻し立ち上がる。こっちに合わせ星宮さんも同じ動きをした。
当然ながら一緒の部屋では寝ない。彼女は居間を借りると言っていた。肩身の狭い思いをさせて正直心苦しくもある。

「本当にいいの? 私がそっちで寝ようか?」
「病人に無理させて気持ち良く眠れるような神経はしてません。心配しなくても大丈夫です」
「んー……わかった。それじゃ、今日は色々ありがとう。おやすみなさい」
「あ、待ってくださいっ」

振り返ったところで急に呼び止められた。
見れば星宮さんは俯いて、何かを言おうと口をもにょもにょさせている。……どうしたんだろう。

「こちらこそ、ありがとうございました」
「別に私は何もしてないよ?」
「えっと……実は、ちょっと相談したいことが、あったんです。だけど、鈴波さんの話を聞いてたら、自分で頑張らなきゃって」
「そっか。駄目そうだったらちゃんと言ってね。なるべく力になるから」
「……その時は甘えさせてもらいます」
「よし」

今度こそ、おやすみなさいを告げて別れる。
実際布団に入って寝付くまでは時間が掛かりそうだけど、とりあえず、悪夢を見ることはないような気がした。





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