あゆと観鈴は、並んで同じ場所に立っていた。
それは白く、そして青く、果てのない寂しさに満ちた世界だ。
広いようで狭い。どこにでも行けそうなのにどこにも行けない。
空の檻。そう、檻という表現が最も相応しい。まるで自由の存在しない、悲しいほどに小さな箱庭。

すぐに二人は「これは夢だ」と理解する。
そして、同じ夢を共有していることに、少しも驚きを見せなかった。
きっと必然。来るべくして自分達はここに来たのだと。

「……あゆさん」
「観鈴さん」

どちらからともなく、手を握る。ぎゅっと繋ぐ。
歩幅を合わせて進む先は、いつ途切れるかもわからない青の道。
けれど終わりはあまりにも近く、世界の隅、最奥に佇むのは、一人の少女。

彼女は傷ついた翼を畳んでいた。
彼女は膝を抱え世界そのものに背を向けていた。
彼女は誰にも見せることなく俯き静かな嗚咽を漏らしていた。

……なんて、苦しそうな姿なんだろう。
こんなにも泣いて、泣き続けて、それでもまだこの人は救われない。

「…………て……」
「え?」

微かに、あゆは声を聞いた。
観鈴からではない。勿論自分のものでもない。
ならばその声は、目の前の少女が発したものだ。
そして今、前に見た夢ではわからなかった言葉を、たった四文字の言葉を、あゆはもう知っている。

「たすけて……っ!」

―――― 救いを求める声があった。
心の底から、喉の奥から搾り出したかのような願い。

解き放ちたい。
できることがあるから。だから、

「ボクが」
「わたしが」

絶対にあなたを、

『救けるよ……!』

瞬間、あゆと観鈴の想いは一致し。
二人の答えを得た空の少女は、顔を上げ、ゆっくりと振り向き、涙でくしゃくしゃに歪んだ表情を、笑みの形に崩した。


夢が―――― 覚める。





救われぬ魂に救済を。
千の夏を越えて呪いは解け、されど少女は未だ囚われしまま。

解き放つには一人では足りぬ。
法術士の末裔、その力を以ってしては片方しか救えはせぬ。

奇跡を求めよ。
それは願いを叶えし力。祈りの強さを現実に昇華せし力。
救けたいと思う心が、空の少女を自由にするだろう。


……幸せになりなさい。
あなたたちは、その資格を持っています。






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