やっぱり俺は文章を書くのが苦手だけど、それでも、今日からこれは続けていこうと思う。 交換日記はもう全部埋まってしまって、二冊目もいっぱいで、結婚してからは書いてない。 わざわざそんなことをする必要は、もうなくなったから。だからもういいかって話を二人でしたんだ。 俺は旅をして、一緒に暮らして、たくさんのことを知った。 ずっと昔から生きてきた彼女には、世界の皆が忘れた知識もあって。 ホルスの翼、アルトネリコの成り立ち。レーヴァテイルの力。様々な過去の出来事。 ……プラティナで、親父に反抗しながら騎士をやっていた頃には。 こんな日々を得られるなんて、全然思わなかった。未来のことも考えちゃいなかった。 ただ、漠然と、未熟な自分はどこかを目指してたような気がする。どうすればいいのか、明確なイメージもなく。 全てはあの日、飛空挺に乗ってホルスの翼に降り立った時から始まった。 長いようで、短い旅だったと思う。 オリカやラードルフ、ジャックにクルシェ、クレアさん、亜耶乃さんにフラウトにリルラ、スピカにメイメイ。タスティエーラ。 たくさんの人に会って、たくさんの話をして、たくさんのことを分かち合った。戦ったり助け合ったりもした。 ミシャにも再会した。大事なことを忘れていたのは、本当に悪いと思ってる。 一度は敵対したアヤタネが、俺達に力を貸してくれたのは凄い有り難かった。 そしてミュール。 あいつには、盲目的に相手を否定することの間違いを、互いに理解し合える可能性を教えてもらった。 この世界は小さくて、人々はいがみ合ってばかりだったけど、旅の中で俺達は、確かに力を合わせられたんだ。 いっぱい泣かせた。辛い思いもさせた。 でも、どうにか俺はここまで来れた。二人で、幸せを掴めた。 きっと、これから先も苦労を掛けると思う。 馬鹿な俺の所為で、悩ませてしまうと思う。 ……だけど俺達は、もう一人で苦しまなくたっていいんだ。 かけがえのない仲間がいる。伸ばした手を取ってくれる誰かがいる。 ―――― そして、一生を共にすると誓った、一番大切な人がいる。 「ライナー、朝食ができましたよー!」 「わかった! 今行く!」 苦手なりにも、できることはあると思った。 過去は消えない。思い出は、俺達が忘れない限り失くならない。 だから、遺していく。俺の大好きな人のために。傷つけることになるとしても。 ―――― いつか俺は、彼女を置いていってしまうだろうから。 それまでに、少しでも多くのものを、幸せを、送りたいんだ。 この日記を、開いた時。 愛する人が笑顔でいられるように。 back|index|next |