「あなたにありったけの想いを」 〜後編〜 まだ、クドリャフカは漂い続ける。 いつか見える、光に向かって。 たった一つの約束を胸に…………。 ―今年の春― クドは二年になり、クラス替えをした。 (どんな人がいるんでしょう? また仲のいい人と一緒になれればいいのですが…) そんなことを考えながら教室の前でおたおたしていると… 「あれ? もしかしてクド?」 という声がしてクドは振り返った……、そして驚きと喜びの入り混じった幸せそうな顔をした。 「リキッ!! もしかしてこの教室なんですか?」 「うん、そうだよ。もしかしてクドも?」 「はい!! そうなのです!! いっしょになれてべり〜はっぴ〜なのです!!」 「はは!! そうだね、これからよろしくね!!」 「こちらこそなのです!!」 そして二人で教室に入っていった。 知り合いこそは少なかったが、クドは理樹と一緒になれてとても幸せそうだった。 理樹はこの教室にたくさんの幼馴染がいるらしく、紹介してもらった。 「みんな、この子は能美クドリャフカって言うんだよ」 「はじめまして、能美クドリャフカって言います。よろしくなのです!!」 「へぇ、理樹が女子を紹介するなんて珍しいな。……なんだ、二人はもう出来てるのか?」 「えっ!! えっ!! わふ〜、あの〜私と直枝さんはただの知り合いで、え〜と、 付き合ってるとかそんなことは全然なくて〜、でも、付き合いたくないのかといわれると〜、 そんなことは無かったりあったりで〜」 「ほらっ恭介、能美さんが困ってるから!! 早く自己紹介して!!」 「お!? そうだな……棗恭介だ、よろしく」 「棗さんですか? よろしくなのです!!」 「俺たちも、自己紹介していいのか?」 「うん、謙吾も真人もお願い!!」 「宮沢謙吾だ、剣道をやっている。よろしく」 「わふ〜、剣道ですか!! 日本の偉大な文化なのです!! すごいのです!!」 「井ノ原真人だ、筋肉をやってるぜ!! よろしくな!!」 「わふ〜!? 筋肉ですか? 筋肉をやっているのですか? さすが日本なのです、私が知らないこともいっぱいあるのですね〜」 「いや、筋肉はするもんじゃないし、そんな文化無いから」 「そうだったのですか!? わふ〜〜、びっくりしてしまったのです」 「ほら、鈴も自己紹介して?」 「……棗鈴だ………よろしく……」 「よろしくです!! 鈴さん!!」 「っ!!(ちりんっ)」 「逃げられてしまいました!? ……嫌われてしまったのでしょうか?」 「いや、あれは恥ずかしがってるだけだから大丈夫、仲良くしてあげてね?」 「もちろんなのです!! 皆さんよろしくお願いします」 「「「「「こっちこそな(よろしく)(ちりん)!!」」」」」 自己紹介が終わり、HRになった時クドは嬉しそうだった。 (もう4人も新しく知り合いになってしまったのです、しかもみんな普通に私のことを受け入れてくれたのです) クドにはそのことが何よりも嬉しかった。 そんなこんなでクドの新しい生活が始まった。クドは理樹と一緒のクラスになれたことに幸せを感じていた。 そして、このクラスでリトルバスターズのみんなと出会ったのだ。 はじめは、理樹が誘ってくれたことから始まった。 クドは不安を抱きながらも野球の練習に参加し、他のメンバーと出会った。 ほとんどが同じクラスの人であったが、あまり話さない人もいた。 でもみんながみんな本当にいい人たちでクドもすぐにそのメンバーの一員となった。 そこから時間が経つのは早かった。 とても楽しい幸せな時間、恭介さんが何か楽しいことをはじめてそれにみんなが加わって。 失敗することもあったけどそれでもみんな関係なく本心から笑っていた。 自分もその中で笑ってて。たまにからかわれることもあったけど、それは他の人とはちがって、暖かいからかいだった。 ある時、クドはみんなに聞いたことがあった。 「私は、こんな姿なのに日本の文化が大好きで英語がだめなのです。 アンバランスでおかしいとおもいませんか?」 そういったらみんなに大笑いされた。 「それが、クド公ですヨ!!」 「うむ、おねーさんはまったく気にする必要は無いと思うが…… それのどこが悪いんだ?」 「なんだそんなことを気にしてたのか、この中にそんな細かいこと気にしてる奴は一人もいないぞ?」 「それは能美の個性なんじゃないのか? べつに気にする必要は無いと思うぞ?」 「そんなことより、筋肉じゃねえのか? 筋肉が無い方がよっぽど気になるぜ!!」 「……クドはクドだ」 「そうですね、鈴さんの言う通りだと思います……気にするだけ損ですよ?」 「そうだよ〜、それにクーちゃんが英語を勉強したいなら私が教えてあげるよ〜。 こう見えても私前回の英語のテスト一番だったんだ!!」 「「「「「「「「「「ええ〜〜(信じらんねー)(くっいつも一番だった私が二番になっていたのは小毬君のせいなのか)!!!!!」」」」」」」」」」 「あうぅ〜みんなひどいよ〜!!」 「「「「「「「「「「「ははははははは!!!」」」」」」」」」」 みんな自分のことを普通に受け入れてくれていたのだ、それが凄く嬉しくて、 笑いながら涙を流していた……。 理樹は…、理樹はただクドに柔らかい優しい笑みを向けていた。 みんなで、色んな事をやった。 馬鹿なこともした。 お泊り会もした。 野球もした。月日はどんどん流れていった…………。 ――――そして、あの修学旅行―――― 〜ガタンッ!!〜 という音がしたと思ったらもう体は宙に浮いていた………。 そして……。 深い眠りに入っていった……。 そこは、とても優しくて、そして残酷な世界だった……。 みんな自分たちは助からないと知っていながら、それでも理樹と鈴のためにあの日々を再現していた。 あの楽しかった日々をもう一度………。 みんなで、色んな事をやった。 馬鹿なこともした。お泊り会もした。 野球もした。みんなも楽しそうだった、自分も楽しかった。 でもみんな少しずつこの世界にいられる時間が短くなっていった…… それでもあの日常を繰り返す。 終わりなど無いかのように………。 理樹と鈴は強く、逞しくなっていった。 そしてそれは自分たちとの決別を意味していた。 みんな、最後に自分の願いをこの世界で叶えて消えていった。 恭介と謙吾、そして真人はそれを悔しそうに見ていた……… まるで、力の無い自分たちを責めるかのように…。 それを見たクドは、自分もその運命を受け入れることを決意した。 それから、世界は自分の願いを叶えるように動き出した……。 「大好きです、リキ……」 「うん僕もだよクド………」 ここは家庭部の部室…、理樹とクドは二人で、愛を確かめていた……。 「クド……」 「リキ……」 今日何回目かのキスを交わす……。 「ふふ、クドの髪凄くさらさらだね……」 「くすぐったいですよリキ、でももっと触ってほしいです……」 「うん、そうするよ…でもその前に」 ――――(チュッ……)――― 「わふ〜〜〜、リキはキス魔なのです〜」 「そうかな? そんなでも無いと思うけど」 「お返しなのです!!」 「うわっ!!」 ゴチンッ!! 「わふ〜!? 大丈夫ですか!?」 「うん大丈夫……、ちょっとびっくりしたけどね」 そんな、何気ない恋人同士のやり取りが理樹と出来ることがクドの願いだった……。 (私は今世界で一番幸せです、もう他には何も要りません) そう思えるほどにクドは幸せだった……。 でも………… 「あっ、クドごめんね? ちょっとだけ寝させて?」 「いいですよリキ、さあこちらへどうぞ……」 そういってクドは膝を貸す、パタンッとその上に理樹は頭を乗せ、眠りに落ちる……。 「スー、スー」 その穏やかな寝顔を見つめながら、いつも思い出す……。 ここは優しい世界、決して現実などではないということを……。 永遠には続かないということを………。 ――――そして事件は起こった―――― 思い出したお母さんとの約束…… 実験の失敗、テヴアの情勢悪化……。 今までの穏やかだった日々が幻だったように、突如優しい世界は残酷になった。 理樹と一緒に見るテレビ、ついさっきまではとても幸せだったはずなのに、 今は、心配で胸が張り裂けそうになりながらじっと画面を見つめている……。 「クド、きっと大丈夫だよ。クドのお母さんは大丈夫……」 「はい……、そうだといいのですが………」 しかし、希望通りにはいかなかった。 住民のクーデター、外国からの隔離、 病気の蔓延、国の崩壊………。 情勢は次々と悪化している、もうクドはいても立ってもいられなかった。 お母さんに会いに行かなくては、そう思った。 (でも、それだとリキとお別れしなくてはいけません……) この試練を乗り切っても、きっとその時にはもうこの世界には時間が無いだろう……。 お母さんをとるか、リキを取るか、クドは迷っていた……。 そんな時だった………。 「クド、お母さんに会ってきなよ……」 何も知らない理樹の残酷な言葉……。 「何でそんなこと言うんですか!! リキは私と一緒にいたくないんですか?」 つい声を荒げてしまう。 「そんなことないよ、僕もクドと一緒にいたい」 「だったら……、だったらどうして?」 「僕にはまたいつでも会えるじゃないか…、僕はいつまでも待ってるから」 「うそです!! リキは嘘つきです!! っく、リキは何も知らないくせに!! 何も知らないからそんなことがいえるんですよ!! リキっ、リキ〜〜〜〜」 クドはたまらず理樹の胸の中で泣き出してしまう。 理樹はそんなクドの頭をなでながら真剣な表情で言った。 「確かに僕は何も知らない、でも一つだけわかることがある。 今しかお母さんとの約束は果たせないんだよ?」 「っ、確かにそうです、でも!! でもっ!!」 クドは抗議しようとして何もいえなくなった……。 理樹の表情があまりにも真剣だったからだ。 「僕が会いに行くから…、どんなにクドが遠くにいっても僕が必ず会いに行くから……」 「本当ですか? リキ、約束してくれますか?」 「うん、約束する。…だから行っておいで?」 「………はい、わかりました……リキが会いに来てくれるなら行ってくるのです……」 それは悲しい約束だった。 きっとこの世界が終わった時自分はもうリキの手の届かない場所に行ってしまうであろう。 それでも、その気持ちが嬉しくて……切なくて………。 「リキ……ギュってしてください……」 「うん………」 二人で抱きしめあった。 少しでも二人でいられるように、この気持ちが折れないように……… そのあとは、この世のものとは思えないほどの過酷だった。 久しぶりに見たテヴアはもはや、地獄とかしていた………。 そして、お母さんとの再会。 「ただいま、クドリャフカ」 「お帰りなさい、おかあさん……」 「約束守ってくれたのね?」 「うん……」 だっ!! クドはすぐにお母さんに抱きついた……。 母親も最初はびっくりしていたが、すぐに抱き返した……。 ふたりは無言で抱きしめあった。 (ピシッ!!) 当然不思議な音がなった、しかし今のクドにはそんな音は聞こえなかった。 クドはそれが終わりの始まりを告げる音だということをまったく知らなかった。 ………避けられないお母さんとの決別……… 「おかあ〜さ〜ん!!」 「早く逃げなさい!! はやく!!」 「いやです!! お母さんと一緒がいいです!!」 「いい、よく聞いて? お母さんはいなくならない、たとえ見えなくなったとしても ずっとあなたのそばにいるから!! ずっと見てるわよ、いたずらなんてしちゃだめよ!!」 「うっ、それでも!!」 「早く行きなさい!! これは母親からの命令よ!! ……だれかこの子をお願い!!」 「わかりました」 「お母さん…………」 「あと、これはお母さんのお願い……聞いてくれるかな?」 「なんですか?」 「笑ってお別れしたいなって」 「ううっ……じゃあ娘からもです、お母さん、笑ってお別れしましょう」 「わかったわ」 「じゃあまたあとでです……お母さん」 「またあとでね」 ふたりはくしゃくしゃな顔で笑いあった……。 そして別の方向を向いた。 もう二人は振り返ることは無かった………。 そして、クドは捕虜となり、 生け贄として洞窟の中で鎖につながれた………。 暗い洞窟、今日が何日なのかもわからないような場所で、クドは一人たたずんでいた。 (リキに会いたいです………) (リキ……) 来る日も来る日もクドはリキのことを考え続けた……。 (パシッ!! ピキッ!!) ある日クドは、ひよこが卵を割っているかのような音を聞いた。 それは、気をつけていなければ聞こえない小さな音であるような気もすれば。 耳を塞いでも聞こえる大きな音のようでもあった……。 (ピキピキッ!! パキッ!!) クドにはその音の意味がわかっていた……。 (もうすぐ、世界が終わるのですね……) (なんで!! もう本当にリキには会えないのですか!? いやです!! このままお別れなんて嫌です!! どうしてなんですか? どうしてこの世界は私の願いをかなえてくれないんですか!!) でも、もうクドはそれがなぜか気づいていた。 (私は欲張りです、リキと一緒にいること以外にもう一つ願ってしまいました……) それはお母さんとの約束を果たすこと……。 そしてもうそれはこの世界によって叶えられてしまっていたのだ。 願いをかなえたこの優しい世界は、終焉へ向かって進む……。 それはもう、誰もとめることは出来なかった………。 だからクドはもう一度だけ心のなかで呼んだ……、 その愛しい人の名前を……。 (リキーーーーーーーーー!!) 「クド!!」 「リキ!? リキなのですか?」 「そうだよ、クド!!」 「リキーーーーーーーーー!!」 「クドーーーーーーーーー!!」 (パキッ!! ピキピキパキ!! ピキピキ!!) ―――――奇跡は起こった―――― (もっと急ぐのです、もっともっと急ぐのです!!) クドは走っていた、愛しい人のもとへと……。 もう世界が崩壊しかけていることは知っている。 その証拠にさっきまでいた色んな人達も今はいない。 途中で険しい顔の恭介に会った……。 恭介はこちらを見て、 「本当にすまない……」 と言った。 クドは泣きそうになったがぐっとこらえ、そのまま一直線に、 理樹のもとへと向かった……。 「リキ!! リキ!! リキーーーーーーー!!」 もう理樹のことしか考えられない。 そしてついに理樹の姿が見えた……、校門の前にちょうどこっちが見えないような場所に立っている。 クドは走っている速度を緩め、一度呼吸を整えた……。 世界で一番愛しい人に、自分の一番の笑顔が見せられるように………。 そして……………。 「ただいまです…… リキ!!」 「おかえり、クド………」 もう二人の間に言葉は必要なかった。 ただ、お互い抱きしめあって唇を求めあった。 クドは最後まで、笑顔だった。 最後の最後まで………。 ――――理樹は静かに眠りについた―――― クドはそれを優しく受け止めこう言った。 「おやすみなさい」 クドは、理樹が眠ってしまっても絶対に泣かなかった。 笑って、理樹の髪をすいていた……。 (これでお別れじゃありませんもんね?) (リキは約束してくれました、必ず会いに来てくれるって) (リキ、愛してます……………) クドは最後に優しくキスをした………。 初めは、ただ、感謝がしたいだけだった。 いつしかそれが、初恋に変わって………。 そして想いが伝わった……。 その想いは膨らんで二人を包みこんだあと……。 いま、静かに消えていった………。 ―――――目が覚める―――――― (うっん、う〜〜〜ん、う〜〜〜ん?) 体中がさすようにいたい………。 (ここは一体どこなんでしょう?) (さっきまで、とても嬉しくて悲しい夢を見た気がします……) 声が聞こえる………。 (誰かが呼んでいます……) 「クドッ、クドッ!!」 (誰の声でしょう、なんだかとっても懐かしい声です………) 「ついにきたよ、ほら約束を果たしにきたよ!!」 (それになんだかこの声を聞いてると安心します………) 「ほら!! おきてよクド!! 聞こえてるんでしょ!? 僕だよ!! 僕!!」 「んん…………り……き?」 クドがゆっくりと目を開ける……。 するとすぐに抱きしめられた………。 「痛いです…リキ……」 「クド……、約束どおり迎えに来たよ……」 「リキ…………」 リキが笑顔を見せる、その笑顔はいつもよりたくましくて……。 クドは、初めて涙を流した………。 その涙を理樹は優しくふき取りこう言った……。 「お帰り、クド……」 「ただいまです、リキ……」 ――――――(チュッ………)―――――― もう消えてしまったと思った想い、 切れてしまったと思った絆……。 それが今、静かにつながった………。 ――――――ここから二人の物語がはじまる―――――― 〜FIN〜 「あとがき」 こんにちは、こちらに始めて投稿させていただきましたヒロタカです。 え〜とまずは、すいません長くなりすぎました。 一度書き始めるとなかなか止まらなくて つい長くなってしまうんです!! ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます!! え〜と 今回のテーマは、リキとクドのゲーム中の想いを 書こうと思いました。 リトバスの中でも一番シリアスで、感動も深いのがこの クド編だと思います。 それを乗り越える話が書きたかったのです。 まだまだSSを書くのは初心者なのですが、 自分なりに一生懸命書いたつもりです。 この話を読んで、何かしら皆様に感動を与えられたらなって思っています。 もしこの話を読んで、感想やアドヴァイスなどがありましたら お気軽にメールか掲示板に書き込んでください!! 感想をいただけると凄く嬉しいです!! じゃあ失礼します!! メールアドレス basketman.takahiro@hotmail.co.jp 専用掲示板にじゃんぷですー |