シュレリアの日記:冒頭

現在、私はプラティナの宿屋でこれを書いています。
前の日記はまだページがありましたが、心機一転のつもりで新しく書き始めることにしました。

短い間ですが一緒にいたみんなと別れて、寂しくないと言えば嘘になります。
でも、それ以上に、ライナーが私を選んでくれたのが嬉しい。
オリカさんとミシャには申し訳ないけど、プラティナに残ると言ってくれた瞬間を、私は忘れないでしょう。

……私の使命は、誰にできることでもありません。
誇張ではなく、文字通りホルスの民の命は、私に懸かっているのですから。
だから、あの時。私はサスペンドによって塔の機能を停止させることを選びました。
この世界を、守りたいから。そう叫んだ気持ちに、嘘はなかった。
ライナー達が平穏に生きていけるなら、自分一人の犠牲で済むのなら、それでいいと本気で思ったのです。
なのにライナーは私を目覚めさせ、結果としてミュールも活動を再開しました。
今でこそそれも笑って語れることですが、一歩間違えば、過去の悲劇は繰り返されたでしょう。
よくもまあ、危ない橋を渡ったものだと思います。

だけど。思わずライナーを叱りましたが、私は、本当に嬉しかった。
それから一緒に世界を旅して、多くのものを見て、知らなかったことをたくさん知って。
いつの間にか、もう、すっかり駄目になっていたのです。

ライナーと離れたくない。
彼の隣で、幸せになりたい。

そう願う私は、ある意味では腑抜けてしまったのかもしれません。
でも、いいのです。過去の私では得られなかったことを、今の私は得られたのですから。

これからは楽しい日々を記していこうと思っています。
そして、再びこの日誌を開いた時、笑顔になれることを祈って。










「……ライナーは、これからどうするんですか?」
「え? 実は……まだ何も考えてないんですよ。オリカやミシャに付いていくことも考えてますけど」
「あのね、ライナー。その、ね?」
「シュレリア様、どうしました? 顔、赤いですよ?」
「…………プラティナで、私と一緒に暮らさない?」
―――― へ?」


「レアード、話があります」
「おお、シュレリア様。ライナーを連れて、何があったのです?」
「あ、いえ、事件があったわけでは。……えっと、ですね」
「……ライナー。シュレリア様はどうしたのだ? 熱でもあるのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
「レアード!」
「は、はい」
「今日から私はライナーと暮らしますので、そのつもりで!」
「はぁ…………は!? あの、シュレリア様?」
「ライナー、行きますよ」
「わ、あ、親父、今度しっかり説明するから! ちょっと、シュレリア様そんな引っ張らなくても平気ですって!」
「………………」
「総帥、報告に参りました。……あの、総帥?」
「……シュレリア様に何があったのだろうか」










ライナーの日記:冒頭

シュレリア様と暮らすことになりました。同じ家で。…………同じ家で?
てっきり「暮らす」っていうのは言葉のあやだと思ってたんだけど、そのままの意味でした。
半ば強引な流れですけど、まぁ、少なくとも悪い気はしません。嫌だなんてことも全く。

ただ、シュレリア様は可愛い女の子であって。
一緒に暮らすとなると、ドキドキすることばかりで、もうどうしようって感じで。
……とにかく退屈だけはしないと思います。

この日記も、何故かシュレリア様が「交換日記を書きましょう」って言い出したのが始まりですし。
あんまり俺は色々書いたりするのは苦手ですけど、大目に見てくれればありがたいです。

頑張って、シュレリア様を困らせないようにしよう。



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