・願い事って三つで足りる?(魔法使いサラバント) そして彼は願った…… 「ヨメに来ないか!?」 にこやかな顔のまま、しかし涙をぴたりと止めて黒髪の少女は足下に転がるランプを掴み彼の頭部へ振り下ろした。 快音一発。ごいん、という鈍い音が響き、彼は昏倒する。どこか幸せそうな表情をしているのは気のせいだろうか。 あれ、そもそも彼はこんな人だったっけと少女は怪訝に思う。 聞き間違いかもしれない。ううん、幻聴の類に違いないと結論を出し目覚めの時を待つ。 抱いた姿勢を解かず、ん、と声を漏らす彼の顔を見つめる。 腕の中で覚醒した彼は、 「避妊するから!」 今度は絨毯で首をきつく絞めた。 とりあえず、二度あることは三度あると無理に納得することにした。 吹き荒ぶ風は砂を巻き上げて 若い旅人の行く手を阻む 旅の道連れは二等の駱駝 長い黒髪の少女と娘 >一人増えました。 >終わクロ+C†C。太陽王とラバの組み合わせは正直駄目だと思った。 ---------------------------------------- ・空を翔ける(恋人を射ち落とした日) それは、翼を持っている。 それは、硬く鋭い爪を持っている。 それは、しなやかな筋肉を持っている。 そしてそれは、人に仇為す力を持っている。 仇為す者は、魔物と呼ばれた。 彼らは明確な意思を持たない。自分の肉体を持たない。 ただ、彼らは自らを増やす術を心得ていた。 その爪に傷つけられたなら、人は呪いの二文字と共に姿を変えられてしまうだろう。ほんの僅か、掠る程度でもいい。 傷から呪いは身体を、精神を侵蝕し、陵辱し、自身の存在を広めるだけのモノへと変化せしめる。 そうして魔物は、数を増やし続けてきた。今までも、これからも。 彼らを誰も殺し切れない。まだ、人であった頃に抱いた感情故に、あるいは無知という罪故に。 繰り返される輪廻の如く、過ちや悲しみもまた連鎖する。 途切れずに、途絶えずに、人の手によって。 まず手足が動かなくなり、 次に肉体が変化を始め、 人間という生物の枠から外れ、 遂には思考さえも儘ならなくなって。 彼女は、覚えていた。 幾度となく引いた、弓弦を弾く感覚を。 つがえた矢が大気を貫き、目指す先の相手を射ち抜く様を。 最後、心臓の位置に穴を開けられ、聞くに堪えぬ悲鳴と共に、逆さまの姿で墜落し砂塵となって消えた光景を。 そしてその相手が、かつて恋人だったものだという、事実を。 呪いが彼女を侵していく。 救いなんて、どこにもない。 この手で愛する人を殺し、自身も同じ末路を辿るのだから。 世界は、あまりに空虚だった。 永遠に忘れモノは見つからない。花の色も、何も思い出せない。 背中から、黒とも灰色ともつかない汚れたような翼が生えた。 意思が薄れる。自分が消える。失くなってしまう。 閉じていく世界の視界が、最期の瞬間に見たのは、 ……気持ち悪いくらいに、白い、月。 魔物は次の獲物を探す。 探し始め、探す途中で終わりの運命と出会う。 煌めく銀光が空を翔け、月光を纏いながら悲鳴すらも切り裂く。 断末魔の叫びは、記憶にのみ残る呪詛。 死の間際まで生に執着した浅ましい一体の魔物は、重力に従い地へと堕ちる。射ち堕とされて、灰となった。 夜空の下に咲く、一輪の花。 それは血よりも、月の赤光よりも赤く―――― 。 >魔物のイメージは聴く限りガーゴイルチックな。 >感染するウイルスみたいですよね。呪いという名の病。 >空を翔ける銀光、そんな絵を書きたかっただけ。美しい……。 ---------------------------------------- ・パパちょっとそこまで買ってくるからねー(エルの楽園) 「ねぇ……お父様」 「何だい、エル?」 「明日は何の日か知ってる?」 「ははは、世界で一番可愛い娘の誕生日を忘れるわけないだろう」 「ふふ、嬉しい。わたしね、お誕生日プレゼントは絵本がいいと思うの」 「どんな絵本がいいかい?」 「えっとね……そう、アダルトな」 「よし今すぐパパ買ってくるよ!」 「……冗談だったのに」 >これぞ小ネタ。ていうかアビスパパ教育に悪いよ。 >あとエルはどこでアダルトな知識を覚えてきたんでしょう。 ---------------------------------------- ・パパもう一度ちょっとそこまで買ってくるからねー(エルの楽園) 「ねぇ……お父様」 「何だい、エル?」 「明日は何の日か言わなくてもわかるよね」 「それは勿論宇宙で一番可愛い娘の誕生日に決まってるだろう」 「わたし宇宙一になったのね。それはともかく、あのね、」 「今度はまさか!?」 「……いいわ、止めないからお父様言ってみて?」 「絵本に描いてあったことを実践しぶふぉっ!」 「お父様はどうしてもわたしにエロいことを教えたいの?」 「ああ、エル、絵本の角で殴るとはバイオレンスだね……そんなところも好きだよマイドゥーター!」 「仮面の上からだからそんな痛くないでしょ?」 「思いっきり仮面のない顎狙いだったんだが」 「愛情込みのスキンシップだと思って」 「エルがそう言うなら信じようではないか!」 「ふふ、お父様無条件ね? わたしと世界ならどっちを取る?」 「勿論愛しの我が娘だよ」 「ありがとう。えっと、話思いっきり逸れちゃったけど、お願いがあるの」 「エルのお願いならどんなことでも可能にしてみせよう」 「じゃあ、わたしの結婚相手を探してきてって言ったら?」 「全世界の男どもをぶち殺して私がその座につこう」 「最悪な答えをどうも。……簡単なことなんだけど、いい?」 「何だい?」 「その日は……一日、わたしと一緒にいてほしいの」 「……ああ、当然だ。どこにも行かないよ」 「嬉しい。……約束ね?」 「ああっ、今私は娘と"はじめてのやくそく"を……!」 「ゆびきりげんまん、うそつかなくてもはりせんぼんのーます」 「セメントなエルも可愛いよ……」 「指切った。なお、当日は一切わたしに触れないでね」 「それは……本当は触ってほしいという意味かい?」 「ううん」 「即答するところも素晴らしく愛らしい……!」 「……お父様、わたしが何しても喜ぶでしょ」 「娘を愛するのは親として当然のことだ」 「絶対不純な意味合いにしか取れないと思う」 「よし、そうと決まれば早速私は外出する!」 「……どこに? というか、何をしに?」 「誕生日に必要なものを揃えに、町まで買いに行くんだよ」 「帰って……くる?」 「この私が、約束を守らない親に見えるかい?」 「いい話に纏めようとしても無駄だと思う……」 以下エンドレス。 >マゾくて変態なアビスパパ像。だってじまんぐだし。じまんぐ。 >セメントなエルってのも可愛くていい? 銀髪幼女! ---------------------------------------- ・この世で一番美しいのは誰?(詩人バラッドの悲劇) 女王は問う。 自らの絶対的な権力を振りかざし、その強さを信じ、目の前で片膝をつく詩人も己の望む言葉を紡ぐだろうと思いながら。 しかし彼は、譲らなかった。 表情に一切の迷いなく、目を閉じ、 「私の世界では、陛下は二番目にお美しい……」 ならば一番は誰かと女王は問う。 漏れ出る怒りを隠しもせず。答えによっては、相応の結果が待っているという無言の言葉を込めた視線を詩人に向けて。 果たして詩人は、目をそっと開き答えた。 「ああ、それは喩えるならば薔薇よりも気高く、百合よりも美しく、待雪草より肌は白く、 赤い唇は柔らかくそして地上のどんな花よりも素晴らしい我が恋人! そう、それはまだ二人で暮らしていた頃のことです、 夜、寝室で床に就こうとした私を力無き声で呼び止めた時の彼女のあの仄かに頬を染めた表情の何と愛らしいことか! 私がどうしたんだい、と訊けば無言で服の裾を掴み、眠れないのと囁いて、私の背中を追いかけてくるのです。 布団に入れば続いてその中に、私が彼女を抱きしめれば彼女も抱き返してきて…… ああ、彼女の抱き心地と言ったらそれはもう言葉でも詩でも伝えきれないほどの至福!」 「お、おい、そなた、」 「そして私達の距離は次第に縮まり、唇が触れ……離れた彼女は恥ずかしそうに身を捩って、 しかし私は逃がしませんでした。再び、今度はさらに長く口づけを交わし、彼女の言葉を待ちました。 次に来るお願いが私にはわかっていましたから。 だから声を聞くより先に私の手はそのまだ小さくも柔らかな胸に触れ、片手でゆっくりと服を脱がし、」 「こ、こここの者を今すぐ押さえよ!」 「陛下話の途中です! ここからがいいところなのですよ!」 「急ぎ牢へ連れていけ! ……人選を間違ったかのう、宰相」 「そのようで」 女王は思った。 とりあえず、今のは全部忘れた方がいいと。 天才と謳われし詩人……彼の名はBallad。 今は冷たい地下牢の隅、延々と牢番の兵に対し語り続けている。 「露わになった彼女の肌は一瞬触れるのを躊躇わせるほどに神々しく、 如何なる芸術家の彫刻にも勝る女神と錯覚せんばかりの美しさで…… 聞いていますか? 話はまだ終わっていませんよ?」 兵士は泣いた。 この時ばかりは女王のことを本気で呪った。 後に、彼の最期の詩は世に語り継がれることとなる。 それが彼女にとって幸いだったのかは、未だ明かされぬ謎である。 >所構わず惚気るエンディミオさん。最悪やねアンタ。 >ちなみに最期の詩は、 > >運命よ、例えお前が瞳から光を奪い去ろうとも、 >この私からは彼女を奪えないそう神ですら不可能! > >とそんな感じだったとか何とか。 >でもちゃんと亡くなってるので黒の歴史的にはおっけーらしい。 ---------------------------------------- ・いつものルートなんです(澪音の世界) 荒れ果てた野を往く一人の少女は、緩慢な足取りで、しかし決して止まることなく歩き続けていた。 まるで目的地が初めから定められているかのように。その一歩には躊躇や迷い、戸惑いの揺れは感じられない。 両の瞳が、閉じられているのにだ。 右の手指は細いものを持っていた。 赤い紐。それは少女の僅か先まで伸び、同じく赤い首輪へと繋がれている。 時折くい、と引く力が伝わり、その度に少女の手は前へ、前へと動いていた。動いていたが、歩みは変わらなかった。 その手を引くのは首輪を着けた犬。 しなやかな筋肉の上に黒銀の毛並みを持ち、ともすれば人を軽々と御し、喰い殺せそうな獣。 しかし黒犬の瞳は理知的で、逃げ出そうとも、急ごうともせず、ただ少女を先導するかのような動きで前を往く。 主人の目たらんとしているのか。主人の騎士たらんとしているのか。 答えはそのどちらでもなく、黒犬は少女の良き理解者であり、そして裁き手を罪人の下へと導く者だった。 まだ雨は降っていない。少女の出番ではない。 故に、一人と一匹は荒野を往く。役目を果たすその時まで。 「………………お手」 「わんっ」 少女の名は、澪音。 要するに、現在散歩中。 「………………おすわり」 「わんっ」 「よしよし、帰ったらご飯を上げるからね」 「くぅーん」 >澪音のイメージは割と人によって違うというか。 >三つ目だったり片目隠してたり両目隠してたりと様々。 >彼女の世界に喰われてはいけません。 >瞳の中の世界に囚われたが最後、発狂した世界の夢に放り込まれます。 >そんな私的イメージ。貴方が今日の犬の餌ね。……わふっ。 ---------------------------------------- ・それゆけノア養父さん(黒の予言書) そして彼女は、組織から飛び出した。 いつか再び舞い戻るために。養父の愚行を止めるために。 歴史は変えられる、そう信じているから。だからこそ、彼女は探す。改竄を許さぬ黒の歴史に抗うに足る、人の力を。未来を。 ……その背を見つめる、ひとつの影があった。 それは柱の影に隠れ、草花の中に埋もれ、あるいは遙か山の高みから、駆け回る彼女の姿をずっと目で追っていた。 「ああ、ルキア……」 闇より深い黒のローブに同じく黒の、鼻上まで隠れるフードを被り、円錐型にぴんと立ったフードの天辺を揺らして、 ひっそり少女のことを舐めるように視姦……いや、見守る様子は、傍目には控えめに言っても超ストーカーである。 ぶっちゃけただの変態で不審者だが、当の本人はまるで気にしていない。 むしろ今の状況に幸せすら感じているらしく、だらしなく口元を緩め、 「可愛いよルキア……ハァハァ」 鼻息が物凄く荒かった。ついでにその鼻からだらだらと血も流していた。 黒の教団、予言書を崇め予測された歴史を完遂せんとする使徒達を纏める立場にある魔術師ノアは、 義理の娘をもうどうしようもないほどに溺愛しているのだった。 彼は今日も、遠くから愛しい娘を心ゆくまで視姦する。 「ああっ、転んだねルキア! そんなところも可愛いよハァハァ」 物心ついた時、母は既に居なかった。 病死だとボクに告げたのは、孤児であるボクを引き取り養育した組織の長、ノア養父さんだった。 やがて組織(の養父)に疑問を抱いたボクは(身の危険を感じ)、組織から逃亡した。 >ノアとアビスは駄目パパだと思います。これは駄目過ぎですが。 >自信が習得した魔術を最大限に活用して娘をストーカーする養父。 >貴方何のために魔術師になったんですか。 >ポジティブ変態のアビスパパとネガティブ変態のノア養父。 >こいつらコンビ組ませたら最凶だよなぁ。 ---------------------------------------- ・崇拝すべき偶像、もしくは対象(黒の予言書) 黒の教団とは、有史以来のあらゆる記録、つまるところの過去から未来を記した書物、 黒の予言書の意思を遂行せんとする者達の集まりである。 それは決してただの予測ではなく、計算でもなく、まるで世界の全てを知るが如き文字通り予言の連なりで作られており、 巻数は二十四、表紙は黒く年月の経過を感じさせる。 本来、古代の法螺吹きが綴った予言は、その内容を曖昧にしてどうとでも解釈できるようにしてあるものだ。 が、黒の予言書は違う。あまりにも正確で無慈悲な、歴然とした年代記。 黒の予言書は、自らの予言を決して外さない。 何故なら、それは決定された未来、史実であるから。 故に……近い未来、この世界が終焉を迎えることも、逃れ得ぬ史実だ。 ローブを纏いし者達、黒の教団の人間は、予言された歴史を守る運命論者。 全ては崇拝する存在、彼らが唯一神のため。 地下大聖堂に集まりし黒い影。彼らの視線の先、中心に佇むのは、組織を統べる教祖とも言うべき者、ノアである。 ノアは両手を広げ、 「皆の者、呼びたまえ! 我らが唯一神の名を!」 「クロニカ! クロニカ!」 「皆の者、讃えたまえ! 我らが崇拝の対象を!」 「クロニカ! クロニカ!」 「そして叫びたまえ! 我らが真理、偶像の概念を!」 「ブラックロリコン!」 ――――黒の幼女(ブラックロリコン)。 教団に所属する全ての者が理想とする幼女であり、崇拝者の望みに応じて彼女は如何なる姿をも取る。即ち、理想の幼女。 予言書の使徒は、自分の脳内に必ずクロニカを描いているのである。……激しく己にとって都合の良いビジュアルで。 「我らが幼女(クロニカ)に祈りを捧げよ! 黙祷!」 「………………(クロニカ様可愛いよ可愛いよクロニカ様)」 「………………(幼女ハァハァ)」 「………………(俺クロニカ様の足舐めてもいいよ……)」 「………………(馬鹿野郎俺はクロニカ様のためならぬっはぁ!)」 「………………(貴様妄想で抜け駆けしおって! 俺も負けん!)」 「………………(俺も俺も!)」 念話じみたアイコンタクトで使徒同士の仁義なき戦いが火蓋を切って落とされた頃、ノアは。 「………………(ああルキア今お前は着替え中だね!? 私の魔術からは逃げられんよ即ち現在脳内実況中! 誰もいないのに恥じらいに頬を染めながら上着を脱ぎ…… ま、まままだノーブラなのかルキア! ふおおおおおおおおおおおおお!!)」 ……正直、放っておいても教団は潰れると思う。 >何かノリノリで書いてました。 >「ブラックロリコン!」に関しては、 >クロニカ学習帳→みんなの大辞典→黒の予言書の項を参照。 >幼女好きが集まる黒の教団。崇拝の対象はクロニカ様(幼女)。 >ちょっとこれで引っ張ってみると面白いかも。 |