ということで『こころ、ここに』、これにて終了です。
あとがきにまで付き合ってくださった方々に、精一杯の感謝を。
一年と少しの間、ほとんどずっとこれに心血注ぎっぱなしでしたが。
まぁ、それなりにそれなりの出来にはなったかと思います。

ポジション的に言えば、このおはなしは『ひとかけらのぬくもり』に近いです。
理由はいくつかあってそのうちひとつは後述しますけど、一番最初に決まったのは題名なのですよ。
そこから発展していって、人物、物語が出来上がって。
絡み合い、繋がり、何とも危ういバランスで構築された、不安定な形。
全て違うストーリーを考えるのはかなり骨でした。つか、その辺の初期構成で一ヶ月掛かってたのでw
しかも第一稿(ここここ設定概要、って名前のtxtファイル。40KBオーバー)は本当に適当なあらすじだけ。
一話最低5KB以上(prologueとepilogueは除く)という制約付きだったので、そこまで膨らませるのが大変で。
あーでもないこーでもないと脳味噌をフル回転させたのもいい思い出です。現在進行形で。

今回、名前に関してはあんまり凝ってません。割と適当に決めた部分も多く。
完全なサブキャラ三人は友人に決めてもらったという手抜きっぷりw
あ、真朝さんと優都さん、灯子さんは違いますね。この人達は遺産ですw
よって、名前で語るべきところはないのです。ひとかけらの時のあとがきとはまた趣が違いますので。
しかも掲示板の方に載せたなかがきのおかげでだいぶあとがきのサイズが削れます。重畳重畳。

テーマはタイトル通り、というか。
彼ら彼女らのこころのおはなしです。
指示代名詞って便利ですよね。"ここ"って言葉ひとつに、たくさんの意味を込められる。
いくつかありますが、そう難しい解釈じゃないので読めばわかると思います。
それに、言葉では表せないものも、あるので。
最終的に彼らは学校の外で、あるいは中で色々なことを終わらせ、結論付け、振り切り。
自分なりの、自分にしか出せない答えを導きます。
でもそれって、特別なことではないのですよ。きっと、誰もがしてきた、そしてしていくことなのですよ。
これはそんな当たり前のおはなし。若干幻想が混ざってますが。

そして、もうひとつ、後述と言った部分。裏テーマ。
『ひとかけらのぬくもり』が私という人間の理想を描いたおはなしだとすれば。
『こころ、ここに』は私そのものの一部分、もしくはそうなるだろう可能性の形を描いたものです。
オリジナルのキャラは作者の内面が出る、と言いますがこれはその極地。自己顕示欲バリバリw
理想の未来からこころの現在へ。こうなると次は過去になるかもしれませんね。過去の私は何だったろうか。



では、章毎に。


1.ひなたのはじまり

若かりし頃の真朝さんとひなちんの名の由来のおはなし。
引っ繰り返せば真朝さんは"孤独を恐れる私"、日向さんは"理想を目指そうとする私"。
これほど『一期一会』の意味を感じることはないんじゃないでしょうか。
唐突な出会い、偶然の結びがかけがえのないものになる。
人生何があるかわからないものです。たったひとつの出来事がこれからを左右したりとかね。
真朝さんにとってのそれが日向さんで明成さんだったと。単純単純。


2.ちっぽけな奇跡にも似ていて

ここまではひとかけら過去話、桜葉夫婦の出会いからまあ色々。
優都さんは"夢を望む私"、灯子さんは"居場所を失くした時の私"。
六話の合唱コンクールの部分は脚色してますけどちょっと実話入ってます。
いえ、現実の結果はどうにかなっちゃって六組中二位だったんですが。
人の気持ちってわからないから素敵ですけど、わからない分怖いですよね。
心の中が読めたらいい、って思ったことのある人はたくさんいると思います。
でも、そうじゃないから好きでいられる。言葉がある。おはなしも、そのためにあるんじゃないか、と思ってます。


3.at a distance,keep one's distance.

好きになって勝手に諦めて失恋した女の子のおはなし。こういうと身も蓋もないなぁ。
草歌さんは"本当の気持ちを抑えちゃう私"。
遠くから眺めて、愛しく思って、それでも近づけないのは弱さ、だけですかねぇ。
もともとの性格とかもあってそこで損するとこも少なからずあるだろうさと。
結局は彼女も割り切ります。踏ん切りつけるために結果わかってて告白までしちゃうんだから変わったというか。
弱さを補うのも、強くなろうとするのも自分自身が決めること、ですね。


4.雪景色と冷たい手、涙で少しにじんでる

想いが通じ合ってるのに別れちゃうけど好きだから会いに行くおはなし。
八冬くんは"不器用な私"、水絵さんは"自分が傷つくのを選ぶ私"。
誰かを守るために嘘をついたりできるのは、はてさて本当に強さなのか。
気づいてくれればいいですけど、気づかれなかったらただ悲しいだけですよね。
……それでも守りたいものがあるのは、どれだけ素晴らしいことなんでしょうか。
大切なもののために、人はどれほどのことができるのか。そのひとつの答えになってればいいなぁ、と。


5.sound of wind

今まで逃げてきた答えと向き合うために何をするべきか、なおはなし。え、違う?
涼風くんは"嫌われても求めようとする私"、鈴音さんは"偶然の重なりを必然にして嫌う私"。鈴音さんのとこちょっと狭いですが。
脈絡なく異能力付きに。何故かと訊かれても理由は特になかったりしますw
ここからやたら家族絡みになりますが、私の家族は完全無欠に健在です。
いや、自分だけで解決しない話もたくさんあるんですよ。上や下が関わってくるだけでいきなり複雑な問題に。
家族って"どうしようもなく大事"な存在ですからね。例え世界が理不尽だとしても、それでも好きなのです。


6.ひっくりかえした手紙の裏。

拗ねて失わなければいいという少女の仮面を剥がすおはなし。
いこいさんは"自分を隠して見せる私"、希有さんは"強引でも外に連れ出そうとする私"。
失った時の痛みは物凄く、物凄く激しくて辛いです。
でも、失ったならまた新しく絆を作るしかないと思います。
昨日より、今日より良い形を目指して。一度の喪失で全てがなくなるわけじゃないのですから。
いやしかし、格好良いおばあちゃんだよなぁw


7.ひとりのさみしさ、ふたりのあったかさ
8.冗談みたいに青いうみ。

変わっていこうと頑張って、変わっていくための努力をした二人のおはなし。
蓮華くんは"涙(とその他諸々)を忘れた私"、青海さんは"自分のために他人に干渉する私"。
若干『なみださがしのおはなし』に共通する部分も。
一人じゃできないことってたくさんあります。ありすぎるくらいです。
二人なら、少しくらいはできることも増えますよね。それだけのことですが、それほどのことなのですよ。
子供は親を選べません。だから、たったひとつの家族を大切にしたいものです。
できない人もいて、贅沢言ってるなぁ、ってのはわかってますけど。でも、できるのだから、と。


9.午後1時39分、「ううん、今来たよ」と言うところ。

叶わない恋があれば叶う恋もある、そんなおはなし。
稚紗さんは"無力な自分を自覚する私"、つかさくんは"守ろうとするものを持つ私"。
ベタもベタ、王道と言えば王道な構成ですわな。単純とも言う。
物事を壊すのには勇気が要ります。人間関係もそう。
難しいですよね、人間って。同じでも同じじゃなかったりして。
解り合うのに何が必要か。最後には、自分の気持ちが一番ですよね。


exist.こころ、ここに、ありますように
ex.机の中には紙の束、使われなかった遺書の山。

『こころ、ここに』はこれだけでも一応成立するおはなし。
憐ちゃんは"今こうして生きている私"、ひかりくんは"死に傾倒する私"。
一番大事なのに一番説明し難い物語です。質問には簡単に答えられるんですけど。
都合良くひかりが生き返ったりとかはしません。ただ、思い出と言葉だけ届きます。
でもそれも、ささやかだけど大きな奇跡ですよね。それくらいなら、許されてもいいですよね。
あ、ひとつだけ。憐ちゃんがこころに伝えて、って言った「ばか」の意味は、
「何がどうであっても自殺なんてしたひかりくんはばかだ」っていうことです。
結局、生きてる方が絶対的に正しいのですよ。生きてれば何でもできますから。


……こうして語ってると、あとがきがよかったのか悪かったのかわからなくなります。
言葉にすると劣化する想いもありますよね。上の文章がそうであるかは、私には判断できませんが。
でも、ここまで来てようやく、ああ、終わったんだな、って思えます。

ではラスト、スペシャルサンクス。

せっちゃん。助言ありがとー。おかげで最後が書けたのですよ。
camelさん、Rodmateさん。読んでるよー、って言葉だけでも救いになってました。
夜月氏。色々と有り難かったよん。サブキャラ三人の名前はホント助かった。
がちゃ。読んでる、って言われてびっくりしたw
けけさん。毎度感想ありがとうございました。それだけでも推進剤には十二分。

冗談でも過大な台詞でもなく、皆さんのおかげでここまで辿り着けたのです。

それではまた。
わたしのこころは、いま、たしかに、ここにあります。