何処ともわからない場所。
白くもなく黒くもない、無色の世界。

誰もいない其処。何もない其処。
その中で、在るのは彼女だけだった。



彼女が着ているのは黒い服。風があれば、緩くたなびく幻想的な姿に見えるだろう。
髪は、酷く白かった。着用物とは対照的で、腰の辺りまで伸びている。

目に付くのは、闇より深いその黒瞳と。
蝋のように透き通った白い肌。

何故か靴だけは、あまりぱっとしない薄い灰色だ。


上もなく下もないその空間で、彼女は"空"を見上げている。
瞳には何も映っていない。映るモノもないのだから当たり前だろう。





――――――では。
彼女は何処を、見ているというのだろう?





終わりという名の昏い闇か、
始まりという名の尊い光か。



それとも、何処にもない幻想か。










それは、彼女にしか理解わからない。










ただ、ひとつ言えることは。










その表情に、翳り以外のモノはなかった。