セカイジュは葉を落とす。
散る葉は天使となり、地上へ降り注ぐ。
もしそのまま葉が落ち続け、天使が増え続けたならば、地上は白に埋め尽くされるだろう。

今はまだ、少しずつしか散っていかない。
けれど、わたしの本体――――――天の亡骸、と呼ばれるモノが動いたら、その時は一瞬で全ての葉が落ちてしまう。


この星の生物達が、好きだから。
彼らを死なせたくはない。例えそれが星自身の願いだとしても。わたしが此処にいる理由だとしても。



"アリストテレス"。
各惑星の頂点に立つ生命体。
地球が滅びても共に滅びない人間を、死滅させるためだけに現れた存在。





その中の一体、水星のアルティメットワン。それがわたし。




















note-3 Angel "fake".




















彼が行ったあと、わたしは其処に残っていた。
動かず、ただずっと。何かを待つように。


一時間。


二時間。


三時間。


…………もうすぐ、一日。





立ち上がり、外に出る。
昏い空が、さらに昏くなる。

十字架。
巨大なソレは、空を覆い尽くした。
地上に光を突き刺し、悠然と通り過ぎていく。
セカイジュにもその光は届き、着弾と共に爆発するエネルギーがわたしの身体を傷つける。
所々は抉られ、散った葉は大量の天使の死骸となって、無人の場所へ堕ちていった。


ギターを抱きながら、空を見続けた。
十字架が地平線へと消えていき、セカイにはほんの僅かな明かりが注ぐ。



わたしは生きている。
ボロボロだけど、生きている。



それだけ見届けてから、家の中に舞い戻った。





ひとりで、またわたしは居続けた。










◇











身長の半分ほどもあろうかというギターを弾いてみる。
相変わらず音がヘンだ。彼の言った通り、チューニングをしていないから狂ってしまっているんだろう。
わたしにはギターに関する知識なんてほとんどない。ほんのちょっと、演奏ができるだけだ。

「…………弾きたい曲が、あるんです」

誰に伝えるでもなく、言葉を吐き出す。
弦に手が触れた。振動が伝わり、細かく震える。
頭に浮かぶ旋律。それをそのままギターに移すように、両手を使って音を鳴らす。
巧くいかない。一回やっても二回やっても、音色は飛び飛びでカタチにもなってくれない。
繰り返す。ひたすら繰り返す。指が疲れたってお構いなしに、できる限り動かし続けた。



手が止まる。
もう、これ以上は無理。
酷使の結果引き攣るような痛みを放つ両手を休めながら、じっと座ってぼーっとする。
ギターは膝に乗せ抱えたまま。しばらくしたら、また弾こうと心に決めていた。





轟音。
一瞬で目の前の景色が崩れ去り、ぱらぱらと天井の破片が軽快な音を立てる。
どうしようもなく見事に大穴を開けた原因となるモノは、わたしの目前の地面に突き刺さっていた。
流線型をしたソレは、羽を持たない生物が空を飛ぶために使う船。
きっと彼の言っていた"十字架迎撃戦"の際に使用されたモノなんだろう、と思う。
搭乗口は開いている。中に誰かいるんだろうか、そう考えたのと同じタイミングで、姿が見えた。



「…………………………あ、」





「――――――お前、まだ生きてたのか」





立っていたのは紛れもなく、わたしを堕した彼だった。





◇






すぐに寝てしまった彼をそっとしておいて、食料を横に置いてから座る。
お腹は減ってない…………というと嘘になるけれど、食べなくったって平気だ。ちょっと辛いけど、大丈夫。


…………わたしも、眠ってしまおう。
彼の隣で、できるのなら安らかに。





ありがとう、と呟いて、ギターと彼を抱きながら目を閉じた。