「お久しぶりです。四年ぶり……でしょうか? リメイク版『ひとかけらのぬくもり』より、星宮陽向です」
「同じく、鈴波信一です。ああ、私は本当に出ちゃっていいのかな」
「ええと……『今年は君達二人が一番しっくり来るから問題なし』とのことです。そうなんでしょうか……」
「まあ、確かに、私達の物語は、彼にとって特別な意味と価値を持っているみたいだから」
「特別な意味と価値?」
「人が生きていれば、その中で色々なことを経験する。些細な出会いが、一瞬の過去が、大切な時間になるんだよ」
「……そうですね。思い返すとすごく簡単な始まりだったのに、気づけばかけがえのないものに変わること、ありますよね」
「それを公然と語れるほど情けなくはなりたくない、と思ってるようだけど……遅いんじゃないかなぁ」



「さて、本題に入ろうか」
「まずは一年を振り返り、ですか」
「去年の更新履歴を見てみると……ちょうど『シュレリア様の以下略』が連載中だったみたいだ」
「ちょっと拝見しましたけど、可愛らしい方ですね、シュレリアさん」
「同感。でもそれだけじゃなくて、過酷な運命を孤独に背負おうとする強さも併せ持ってる」
「ライナーさん……でしたよね。何だかとっても鈍くて、女性として言わせてもらえるなら、ちょっと、と思います」
「あはは、男の私もそう思う。でもまあ、何事も上手く行かないのが人生だし、彼も大事なところは決めてくれる人だよ」
「指輪を渡すシーンなんかは、実は……少しだけ、憧れたりもしました」
「あんな風にロマンチックな状況で、告白とかされてみたい?」
「私だって、少女漫画のような恋を夢見ることはありますよ」
「そっか。……一応言っておくけど、私にそういうのは期待しないでね」
「わかってます。鈴波さんには、鈴波さんの良さがありますから」

「で、その途中に何か挟まってるみたい、だけど……これは見なかったことにしておいた方がいいのかな」
「触れられたくない、って雰囲気が肌に伝わってきますね……」
「カンペには何て書いてある?」
「あ、はい。……『行けそうな気がしてたけどまだ無理だった』とのことです」
「……あるよね。自分だけ変な確信持ってやってみたはいいけど途中で挫折することって」
「そういえば鈴波さんも、よく「大丈夫起きられるから」って言いながら寝ちゃいますよね」
「…………ごめんなさい」

「次は十一月、封印解除なんて言うと格好良く聞こえるけど、要するに過去の遺産か」
「閉鎖してしまった方のサイトに掲載させていただいてたものみたいですよ」
「一日目はCROSS†CHANNELから『possibility』。月姫から『片翼の鳥、空に向かう時を待つ』。このふたつは同じところのだね」
「投稿先がどこだったか、覚えてる方はもうほとんどいないでしょうね……」
「むしろこの場合は、忘れられた方がいいのかもしれないよ。あの頃も色々、あったみたいだし」
「人に歴史あり、ということでしょうか」
「正しく。―― 次は、ろっどめいとさんのサイト Sinnersが開催した夏祭りに投稿した作品だ」
「好きな歌を題材にしたKanonの短編四つと、夏祭りとは別の、AIRの短編が一つ、でしたね」
「彼も随分張り切ってたようで、一人で四つも投稿した奴は当然ながらいなかったらしいけど」
「その後長編まで一ヶ月以内に書き切ったところが、気合の入りようを示してるのかもしれません」
「KanonとAIRのクロスオーバー『Blue Sky Dream』。彼は今でも気に入ってるとか」
「割に、感想の類はあちらの掲示板で一件いただけただけ、というところが、えたみすらしいと言えばらしいですね」

「それから、半年続けた『シュレリア様の以下略』が十一月の終わりに完結したわけだけど」
「ニッチな需要だったこともあってか、愛された物語になりました」
「彼自身、可能な限り気持ちを込めた結果で、そう考えると今年はお気に入りばっかりなのかも」
「去年とはまた違った形で、頑張った……と言っていいんでしょうか」
「その問いに答えてくれるのは、やっぱり結果だけなのかもしれないなあ」

「年を越すと、ごった煮のひとことがぴったりな更新内容になったね」
「東方プロジェクトに化物語、Kanonにアルトネリコも引き続きで……ええと、節操なし?」
「ぷっ、あはははは! 本当にその通りだ! 星宮さんいいこと言った!」
「え、私、そんな笑われるようなこと言いました……?」
「いや、痛快だなぁ、って思って。考えてみれば、節操なしって形容は気持ちいいくらいに嵌ってるよ」
「喜んでいいものでしょうか……」

「大きな変化と言えば、ロリータこんぺ2と、 つい先日のNight Talkerへの投稿かな」
「確か……作者さんは、精神的引きこもり、でしたよね?」
「またストレートな。見事に的を得た指摘なんだけど」
「ですが、小さくても勇気を振り絞らなければ、何事も為し得ないものです」
「千里の道も一歩から。まずは足を前に、だ」



「そうして迎えた五周年。五年もやってるのかと思うと、感慨深い……ってカンペには書いてあります」
「簡潔に言い表せちゃう時間の中にも、簡単には記せない思い出がたくさんある、ってね」
「それを形にするのが、文章書きさんの使命なのかもしれません」
「ここからは、連載中の二作品……『ミュールIFルート(仮)』と」
「もう一度描かれる私達のおはなし『ひとかけらのぬくもり -Re:Warmth-』に集中するつもりだそうです」
「できれば化物語や東方の短編とかもちまちま書いていきたいらしいけど、余裕があるのかは怪しいところじゃないかな」
「ただ、マイペースに行くのは変わらない、と。ある意味身勝手ですよね」

「それじゃ、このくらいでいいと思うんだけどどうだろう。星宮さんはもう言うべきこととかない?」
「ありません。『ひとかけらのぬくもり』がちゃんと終わるのか、心配ではありますけど……」
「彼ならやるでしょう。人気や感想の有無に関わらず」
「なら、他に望むこともないですよ」
「ということでお役御免。帰ろっか」
「はいっ」





幸せを約束された、素敵な彼らの未来を夢見て。





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