身体がだるい。
掛け布団を退かし、起き上がろうとしたところでふらついた。

力が入らない。
頭には鉛が入っているかのように重く、右手を握ってみても、これではきつい瓶の蓋すら開けられそうにない。
頬が熱く感じるのは気の所為じゃないだろう。
ゆっくりと立ち上がってみたが、まともに歩けるようにはとても思えなかった。


熱を測る。 電子体温計が示した数字は、39度2分。どう考えたって標準体温を大幅に上回っている。
喉も痛く、加えて酷いだるさと頭痛まで。





………………相沢祐一、風邪ひきました。




















"まい"のいる生活。 番外編:風邪をひいた日は




















朝、いつまで経ってもリビングに顔を出さない俺を見に来た佐祐理さんに、コトを告げる。
すぐに状況を理解した彼女は、二人に俺の病態を知らせると同時に何処ぞやへ電話。
一分弱で話を終え、こちらにもう一度向かい「学校は休みになりましたよー」とのたまった。

何があって平日営業の学校が休みになったのかは謎だ。
その辺を問いただすと色々悪夢を見るので(既に経験あり)訊かないのが吉。好奇心というのは無闇に持ってはいけない。
だいたいあまり喋る気力も動く元気もないので、ツッコめるはずもなかった。

「用意をしなくちゃいけないので、ちょっと待っててくださいねー」と言い残し、佐祐理さんは部屋を出ていった。
ひとりになって、することもできることもなく、眠気も今は全くないのでぼーっとしているしかなかった。











風邪を治すには寝るのが一番だ。
別に起きてる理由もない。朝食を食べなかったことは申し訳ないが、今胃に何かを入れたら吐く。
目を閉じじっとするが、火照った身体がやっぱり簡単には寝かせてくれそうになかった。
それでも眠ろうとひたすら動かないでいると、ドアが開いた。

ちらっと音のした方向を見る。



「…………………………何故に巫女服?」



三人は正月に報酬として貰ってきた(11話参照)巫女服を着用していた。
まいはコップと水、舞は氷水入り洗面器とタオル、佐祐理さんは蓮華とお粥を持ってきている。

「我らっ」
「…………みこみこ」
「三人娘ですよー」

…………いや、一回持ってきたモノを置いてからポーズ取られても様にならないんですが。
でも巫女服を着る意味はあるんだろうか。

「これがホントのみこみこナース、なんちゃって」
「なるほど…………ってそれだけかい」

実に微妙な一発ネタだった。










彼女達の服装は置いといて、その心遣いはありがたい。
まさかその水は自分で飲むために持ってきたわけじゃないだろうし、お粥は自分で食べるために持ってきたわけじゃないだろう。
…………そうだよね、そのはずだよね?(自信なさげに

「はいどうぞ」
「ん、ありがと。もう一杯頼む」
「おっけー」

まいからコップを受け取り、一気に飲み干す。
渇いた喉が潤い、僅かながら楽になった。

「………………寝てて」
「お、冷たい。ありがとな」
「…………水取り替えてくる」

額によく絞ったタオルを置かれる。
ひんやりとした感触が心地良い。

「はい、祐一さん。口を開けてください」
「いや、それは………………」
―――――― 佐祐理のは嫌ですか?」

温かいお粥は胃に優しい。
ある種極寒の笑顔に当てられながらも完食。










色々と体力の消耗もあったが、何とか昼時は過ぎた。
腹も一杯で多少は調子も良くなった。明日にはきっと動けるようになっているだろう。

まいと佐祐理さんは何やらまたすることがあるらしく、今は舞が傍にいる。

「…………ありがとな、舞。おかげで多少楽になったよ」
「…………………………よかった」

タオルを絞りながら返答する舞。
額に再度冷たいタオルが乗っかる。濡れた手をぱっぱと払い、まだ冷えたその手で頬を撫でられる。
ゆっくりと上下に動く舞の手は気持ちよかった。安心したのか、眠気が襲ってくる。

「………………眠くなってきた。俺、もう寝るよ」
「……そう。………………私も一緒に寝る」
「いやいや、やめとけ。風邪、うつっちまうだろ?」
「気にしない。……………………私が、祐一のそばで寝たいから」

そう言って、ベッドの中に入ってくる舞。
四人分のサイズはあるので、二人がいても余分な幅は十分。
いつもの朝と同じだけれど、俺の体調は同じじゃない。
…………でも、舞は自分の意思で言っている。

「……………………それに、風邪をひいたら祐一が看病してくれる」

すぐ近く、耳元から聞こえて来る声。



その言葉ひとつで、なんかもうどうでもよくなってしまった。





「…………おやすみ、舞」
「…………おやすみ、祐一」

眠りに就く少し前、穏やかな少女の顔を見た。















起きたのは七時頃で、目が覚めたと同時にまいと佐祐理さんも一緒に布団の中にいた。
五日ほど後に舞と佐祐理さんが風邪をひき、俺が逆の立場になって看病したのがせめてものオチだろうか。


「あれ、なんであたしは平気なの?」
「…………まぁ、何とかは風邪ひかないっていうしな」
「むー、夏には祐一くんに看病してもらうもんっ!」


…………………………お前は自分が馬鹿だと認めてるのか。











まいwith巫女服「みんなー、ちょっと時間空いたけど寂しくていじけてたりしてないよね?」

舞with巫女服「…………………………ひさしぶり」

佐祐理with巫女服「左のが鬱陶しいですねー。あ、皆さんお久しぶりです。さゆりんですよー」

まい「いきなりだけど、なんか酷く中途半端な文章だよね」

舞「………………やっぱりどうしようもない」

佐祐理「オチてるのかどうかもわかりませんしね。何度バッサリ切り捨てれば学習できるんでしょうか」

仕方なかったんだっ(二流役者っぽい台詞

まい「ダメ作者の登場だねー」

舞「……………………出直してきて」

うぅ、相変わらず手厳しい…………

佐祐理「出てきてすぐで悪いですが、期待を裏切った罪は大きいのでこれからフルコースに付き合っていただきますよー」

もう地下室は嫌だぁー………………(ずりゅずりゅ

まい「…………それにしても、今夏真っ盛りなのに話の中の季節は冬なんだよね」

舞「…………………………よくわからない」

まい「ホントホント。あたし達も未だに作者は理解できないから困ったもんだよ」

舞「……作者が勝手すぎる」

まい「ま、この辺にしとこ。じゃ、camelさん…………よろしくねー」

舞「………………作者、ダメ人間」



さあ舞ッ!(右手挙げ)

舞「…………ヘイ(若干躊躇いつつハイタッチ)」

ひょっとしたら僕よりも喋っていなかったっぽいと思われなくも無きにしも非ずな舞さんおめでとう。

舞「…………自分で言ってて解らなくなるようなことは言っちゃダメ」

はいありがとう。いやーそれにしても、番外編。見事にかっさらってくれました。主にアタクシの心を。

まい「それはあんまり関係無いっていうか皆無だよね」

お、難しい言葉を覚えたなまい。5点やろう。

まい「わーいバカにしたねー?」

舞「…………それはしょうがない」

ねぇ。

まい「……いいもん、こういうキャラだもん。どうせ今回は弾けなかったもん。巫女服着たもん」

そろそろ抗欝剤が必要っぽいうさみみは置いておいて。とにかく神海さん番外編お疲れ様でしたー。

舞「…………満足」

個人的には他の2人が入ってこなければ以下略。

舞「…………下衆」

……さあ適度に心も痛んだ所でお開きー。良いモノをありがとうー(涙ながら)。

まい「……次、有るのかな?」