今日は運が悪かった。
何故か任された雑務が重なり、帰る時間が遅くなった。

三人は先に帰宅。なんでも「ちょっと用事があるので先に帰りますねー(by佐祐理さん)」らしい。


「よいしょっ、と」

荷物を運び終え、これで全て終わり。
すれ違う奴らに別れの挨拶を交わしながら帰路につく。





普段は騒がしい帰り道、声が聞こえないことは酷く寂しく思えた。




















"まい"のいる生活。 -9-




















いつものようにドアを開けて、ただいまを言って靴を脱いで、
荷物を部屋に置き居間に行ってみたところで、何かの音と声が聞こえた。

ちらっ、と覗き見る。

「舞、これお願いー」
「…………任せて」
「んしょ、んしょ………………届かないっ!」
「あ、これ? はいどうぞ、まいちゃん」
「ありがと、名雪さん」
「いえいえ、どういたしまして」

………………ぱっと見、天外魔境(違)だった。
ていうか何故名雪が?

「あ、おかえり祐一」
「おかえりなさい、祐一さん」
「………………おかえり」
「ずいぶん遅かったねー」

そうこちらに言いながらも、四人とも手を休めない。

とんとん、ぐにゃっ、じゅー、ぐつぐつ。



誰がどう見たって料理中だった。
いや、擬音がおかしいっていうツッコミは却下だって。










「昨日、まいちゃんに料理を教えてほしいって言われたんだよ」
「……ほぅ、それは何故?」
「祐一くんを密かにぎゃふんと言わせるためだよっ」
「もう言わせてんだろが」

かなり別の意味でだが。



まぁ、理由はわかった。
簡潔に記せば、まいが料理を覚えるために名雪にコーチを頼んだ、と。
………………如何せん面白味がないな。もうちょっとアドリブは利かないのか?

「無理」
「よりにもよって舞が即答しなくても……」

やっぱり地の文読まれてるし。……みんな、ちゃんとこのノリには付いてこれてるよな?


哀愁漂う俺を道端に生える雑草の如く無視してまた作業を再会する四人。
こうして見ると名雪のコーチもまいに行き届いているようで、この話には相応しくないほどいい感じの空気だ。

だがしかし、まともに料理が完成するのかは心配になる。
話の展開的に、食べるのは間違いなく俺なのだ。少なくとも、あゆの碁石クッキーのような産業廃棄物は絶対食べたくない。
怖いので現在の進行状況を訊いてみる。

「名雪ー、今どんな感じだー?」
「けっこううまくいってるよー。まいちゃんも手際いいし、倉田さんは普通に慣れてるし」

この調子なら大丈夫らしい。
佐祐理さんのおかげで、毎日の食事だけはある程度の平和が保障されているのだ。
俺の平穏な日常(そんなモノとっくにありません)を守るために、今回だけは真面目にやってくれっ!






十数分後。

見た目だけは美味しそうなモノがずらりとテーブルに並んだ。
艶のある白米にデミグラスハンバーグ、香りのいい豆腐の味噌汁。
漂ってくる匂いは空腹感を加速させてくれる。できたてで湯気の立つ温かさだというのもポイントだ。


「さーどうぞ祐一くん、あたしの手作りだから一片たりとも残さず食べてくれたまえ」
「どうしてお前は腹立たしい台詞でのたまうのが得意なんだ」
「まーまーそんなことどうでもいいからちゃちゃっと食べて感想聞かせて」
「ふぅ、全く…………」

このまま言い合っていても収拾はつかないので、いただきますをしてからまずは味噌汁の入ったお椀を持ち上げる。
ずずーっと啜って、ほっと一息。

「うん、美味い。味噌のバランス、ダシもいい」
「それは佐祐理と舞が作りましたよー」
「………………ありがとう」

僅かに頬を染める舞が可愛い…………じゃなくって。
味噌汁はまいが作ってないのか……

ならばとハンバーグを箸で切り取り、まだ熱い欠片を口に放り込む。
しっかり飲み込んでからひとこと。

「ん、かなり美味い。さほど濃くもなく薄くもない絶妙な味のデミグラスソースと、同じく絶妙な焼き加減のハンバーグがまた」
「それ、わたしが作ったんだけど…………」


沈黙。


「…………じゃ、まいが作ったのは?」
「あたし米研いだだけー」



にっこりと笑うまい。










何かが、ぷっつんと音を立てた。





「お前は偉そうに何を口走りやがったんだええこの口かこの口が悪いのかっ!?」
「ひふぁいひふぁい、ひょっふぉふぁふぃひふぁひってふぉふぇっ!(痛い痛い、ちょっとマジ痛いってこれっ!)」
「これで済ませるかぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!」
「だから無理無理、チョークは無理だって息ができないからギブギブっ!!」

「うん、祐一楽しそうだね。ちょっと心配だったんだけど、元気そうでよかったよー」
「祐一さんのことは佐祐理達にお任せですよー。毎日スリルな日常をお届けしますから」
「…………………………おいしい」










舞は将来絶対大物になるな、と思った。
ていうか佐祐理さん、お願いだから止めて。
あと名雪。…………お前の目は節穴か?





いつも通り、無駄に騒がしく夜は更けていくのだった。











はいはーい、いつも異常に無茶ノリでお送りしました今回。ネタが尽きてきたのかも(汗

佐祐理「そうですねー。ちょっと反省しないとマズイと思いますよー」

わかっとります。でも書き直さずに送ってしまう自分バカっ(涙

佐祐理「学業捨ててるんですからもっとちゃんとしないとダメですよ」

うぅ、努力足りないんだよねきっと…………

佐祐理「………………(ニヤソ」

いや何その笑みはっ!? ちょっと待って怖いよっ!?

佐祐理「いえ、何でもないです。それより舞の出番――――――

お願いですその話題は止めてください今度これが終わり次第番外編とか書きますから、

佐祐理「わかればいいですよー」

……さて。前回のcamelさんのあとがき、非常に好評(脳内で)だったので、しばらくお願いしちゃおうと思います。

佐祐理「このあとですか?」

そう。私のあとがきも削らずに両立しちゃえば文句なし?

佐祐理「いい加減色々粗が出てきそうですねー」

もう出てる。

佐祐理「あ、そうでしたね。忘れてましたー」

いいもん能天気に生きていくからっ。ではでは、camelさんお願いします(ぺこり



ではではcamelさんの後書き第二回。

佐祐理「結構楽しみになってきてますよね」

そう。こういう座談会的なのはやったことなかったんです僕。

佐祐理「まあ、camelさんは一話の短い連載がメインですから」

ハイ一話短いとか言わないソコ。…僕の話はいいから、後書きチックなことを。

佐祐理「そうですねー。佐祐理はやっぱり祐一さんのカルシウム不足が心配です」

彼のカルシウムを削ってるのは佐祐理さんだと思います僕。

佐祐理「あははー、ごめんなさいよく聞こえませんでしたー(スゴイ笑顔)」

…ゴメン佐祐理さん一発どついて良いですか?

佐祐理「後悔しますよ?」

……ですよねー。あははー。

佐祐理「あははー」

…命の危機って結構あちこちにおちてます。気をつけませう皆さん(泣)。