十二月未明。
師も走ると言われるほど皆が忙しいこの時期に、俺はまいと商店街を歩いていた。
理由はない。敢えて言うなら、こいつに連れ出されただけだ。

「ほらほら、今度はあっちだよあっちっ」
「だーっ、手を引っ張るな痛いから」

本当は四人で街中を闊歩しているはずだったのだが、どうも予定があったらしい。
佐祐理さん曰く、

「すみません。今日は"仕事"がありまして」

とのこと。
その際に見せた表情は笑顔だったが、アレは"にっこり"というより"にやそ"の方が近い擬音だ。
不気味な、底の見えない微笑みだった。

で、舞はというと、

「…………今日は向こうの街を制覇してくる」

と。
最近舞は牛丼屋荒らしに凝っているらしく、その内容は材料が尽きるまで牛丼を頼み「お客さま、もう出せません」と泣きついてくるまで食べ続けて店の看板を奪う、というもの。
この周辺の店は全て制覇したらしく、そういえばどこかで見たような看板が舞の部屋に置いてあったことを思い出す。
……鬼だよ。俺が言うのも何だが。

まぁ、こんな感じで二人は一緒に来れないので、今はまいと"ふたりきり"なわけだ。
しかし………………


「ねぇねぇ、あのドレスあたしに似合うと思わない?」
「有り得ない。だいたいサイズがどう見たって合わないだろ」
「酷い、祐一くんはそんなに冷たいのねっ」


この有り様を他人が見たら、



――――――――― 仲睦まじい親子と映るだろうなぁ。きっと。
…………考えてぞっとした。それはマズイ。果てしなくマズイ。知り合いなんかに目撃されたら人生が終わる。
例え親子と取られなくても、ロリコンと断言される。
…………いや、俺は違うぞ? むしろ年上の方が(発言コードに引っかかったため割愛)





「あら、相沢くん?」





ああ、当然の如く神は我を見放した。




















"まい"のいる生活。 -8-




















現在俺の前に立っているのは、美坂香里18歳。
彼女も大学に行ったらしいが、詳しく何処に行ったかは覚えていない。まぁ、もともと学年トップの頭の良さなのだから俺なんて逆立ちしても行けない大学に入ったのだろう。
さりげなく友達思いのナイスな乙女だ。たぶん。

そんな香里、学年トップの賢さを持っているからか理解力が非常に優れている。
状況を見て瞬時に判断できる人間だ。……それはつまり、

「相沢くん。………………もしかして」
「あ、どうもはじめまして。あたし、相沢祐一の隠し子です」

……ってオイマテコラ。
今、明らかに間違った単語がなかったか?

「………………早まったわね、相沢くん」
「違う、誤解だ香里」
「お父さん、はやく行こー」
「だー、お前も何煽ってんだー!」

案の定と言えば案の定か、もう予想通りの流れで思いっきり誤解されておりますよワタクシ。
まいの演技はやたらとリアルで、俺でも傍から見てたら間違えるだろう完成度だ。
実際香里も見事に騙されている。……いやお願いだから俺の方を信じて。

「あなたはそんなことしないって信じてたのに…………見損なったわ」
「だからちーがーうーっ!」

目に涙まで浮かべて大袈裟に振舞う香里。
よく見たら、周りには随分と人が集まっていた。



……………………いや、ちょっと待って。
前々回の放送室ジャックに続いて、また恥晒しデスカっ!?

「あたしのことはジェニーとでも呼んでくれたまえ」
「えー加減にせんかこらぁあああぁあぁあぁぁぁぁぁあぁぁっ!!」
「だからアイアンクローはキツイってば止めて痛い痛いっ!」





いっそキレてしまえとヤケになった俺だった。











「ごめんごめん。だってからかうと面白いんだもの」
「だよねだよねー。もうその反応が見てて楽しくて楽しくて」
「…………もう言い残すことはない。さらばだ」
「あーっ、今にも首吊りそうな顔で雑貨屋に入らないでっ! あまつさえ縄なんて買わないでっ!」



…………うぐぅ、ボクのこと忘れてください。



こうして、俺はまいと共にこの街中の有名人になったとさ。
――――――――― わたしもう、笑えないよ…………











はい、もう八話です。
びっくりですね。話の唐突さとか、ギャグのキレのなさとか、使い古しのネタとか。
…………責任者呼んでこーい!(ぉ

で、です。
今回のあとがきは、何とcamelさんに書いてもらうことになりましたっ! ひゅーひゅーぱふぱふ。
こんな無茶なお願いを聞き届けてくださった師匠(笑)に感謝。
ちなみに今日は舞の回だったんですが、彼女の出番の有無もcamelさんに一任します(マテ

ではでは、よろしくお願いしますー。




というワケで意外なことにあとがきを任されましたcamelです、よー。

舞「…………川澄舞」

うん勿論皆知ってるから。ボケだよねソレは? 一流の。

舞「そう」

また変に反応早いねぇ。ていうか、牛丼屋荒しって胃の方はどうなのよ?

舞「……消化剤がある」

ああ、無茶は承知の上、と。

舞「…………………けぷ」

…まあいいや(数歩離れつつ)。でもホント、まいに出番食われちゃってるけどその辺は?

舞「…………期待してるし信じてるから」

神海さんは人望有るなぁ。あと僕の心の代弁を有難う。

舞「………」

何か言いたそうな舞さんは置いておいて、まとまりませんがコレにて。ごめんなさひ(汗