不安だ。酷く不安だ。 何が不安かって、今日の朝に登校してからのまいの姿を見ていない。 あいつは毎日毎日俺の前に現れてはどたばたを起こすのだ。まいと会わない場所なんて、今のところ存在していない。 昨日は舞の背中にくっついて一緒に剣を振り回していた。 一昨日は佐祐理さんとマシンガンを乱射していた。 …………此処では銃刀法違反は問われないんですか。 どこだ、どこにいる。 超破天荒娘が見つけられない限り俺の死は確定だ。 日を追うごとにまいのはちゃめちゃぶりはエスカレートしているのだから、そろそろ巻き込まれたらマジで命に関わるだろう。 せめて生きていないと先なんてない。くそぅ、何で俺が生死を賭けた日常を過ごさなくちゃならないんだよ。 どきどきしながら迎えた昼休み。 まいは、結局その姿を俺の前に現さなかった。 "まい"のいる生活。 -7- あいにく、昼ご飯を持ってきていない。 何故だか知らないが、佐祐理さんが弁当を作るのを忘れたらしいのだ。 ………………うわ、嘘くさ。 あの佐祐理さんに限ってそんなことあるわけがない。 これは策略だ。何から何まで計画済みなのか。 …………………………なぁ、俺。もう少し人を信じようぜ。疑心暗鬼になりすぎだよ。 いくらなんでも疑いすぎな自分に閉口。しかし可能性として否定できないのが痛い。 通りすがりの人間に肩とかがぶつかるのも気にせず、昼食確保のために食堂へ向かう。 思考を切断。とりあえず今は飯に集中して全て忘れよう。 「うぐぅ、たい焼きお願いっ!」 「牛丼ひとつっ!」 「………………おかわり」 最悪な光景が目の前にあった。 テーブルの上には三つの皿。 あゆあゆの前にはご存知たい焼き。皿の上に置かれた瞬間、頭から大きく齧られる。実に可哀想な魚だ。 まいは牛丼を前にして、鬼の形相で食べ続けている。丼に溢れた肉とたまねぎと白米が空になるのに、およそ二分弱。 さらに恐ろしいのが舞だ。山盛りのつゆだく牛丼を目にも留まらぬ速さでかきこむ。一杯に一分掛けているだろうか。しかも、食べ終わると同時に皿には新しいできたての牛丼が盛られているのだ。…………わんこ牛丼? 彼女達以外、此処には誰もいない。 佐祐理さんの所為だろう。……お願い、それ以外理由なんて思いつかないよ。 その佐祐理さん本人は、彼女達の後ろで人間味の欠けた食べっぷりを見物している。 「はぇ〜」と聞こえてくるということは、彼女にとっても馬鹿げた光景なのだろう。実際馬鹿げていると思う。 「なぁ…………お前ら、何やってるんだ?」 そんな自分の台詞がそもそも馬鹿げていると気づいたが、一度言ってしまったことだ。わかりきった答えだが訊いてみる。 「お昼ご飯だよっ」 「昼食に決まってるじゃん」 「……腹ごしらえ」 [腹拵え(はらごしらえ) = 事に当たる前にしっかり食事をしておくこと。 goo国語辞書より] 舞。…………お前、この後何するつもりだ? 狩るのか? 「………………あと五人くらい」 "あと"ってことはもう殺ったのか。殺ったんだな。 っていうかやっぱり地の文読まれてるよ。……もういいさ、気にしないから。 舞は置いといて、見た目小学生組二人の方を向く。 「まい、お前の行動に関してはもはや何も言うまい」 「ついに祐一くんもあたしを認めるようになったんだねっ」 「違うわい。まぁ、それはいい。だがな…………あゆ」 「何、祐一くん?」 開いた右の手のひらを握る。 渾身の力を込めて、 「お前まで何混ざっとるんだあぁぁぁあぁぁあぁああぁっっ!!!」 「うぐぅうぅぅぅぅっ!」 昇竜拳をかましてやった。 高く跳ね上がり重力に従って落ちてくるうぐぅを受け止め……ようとして躱した。 蛙が潰れたような声を上げて、地面にへたり込むあゆあゆ。踵落としで追撃しようと思ったが止める。 腰を打ったらしく、うぐうぐ言っているあゆあゆに優しく手を差し伸べてやる。 「立てるか?」 「う、うん…………」 突然のこちらの変貌に驚いたのか、少し戸惑いながらも差し出した手を掴むあゆあゆ。 …………同時に、彼女は空を飛んだ。 俺の人間ハンマー投げでそのまま窓から退出。ふぅ、月宮あゆ、恐るるに足らず。 「あの…………祐一くん?」 「何だ、まい」 極上の笑顔が眩しすぎたのか、口をつむぐまい。 そんなまいを尻目に、今だわんこ牛丼中の舞とその舞を見て驚きっぱなしというか牛丼おかわり回数記録中の佐祐理さんの傍に座って、カレーを注文した。 メシアン特製らしいカレーは、本場インドの味がした。 「………………祐一くん、怒らせると怖いね」 「ここで漢を見せなかったらさすがにいかんだろ」 「単にストレス解消したかっただけなんじゃ…………」 「お前がそのストレスの元凶だってわかっとんのか」 「ギブギブ、だからアイアンクローは痛いってっ!」 こんなのも、当たり前のように日常に混ざった風景さ。 …………ヤバイ、言ってて虚しくなってきた。 さぁ、一周したねー。じゃ、まいよろしくー。 まい「うぅ、まだ頭がズキズキする…………」 スリリングな毎日を送るためにはそれなりの代償を支払わねばならないのです。 まい「あんたが書いてるんでしょうが」 まぁまぁ、そんな些細なことを気にしていては主役の座が危ういぞ(ニヤソ まい「大丈夫だよー。それくらいじゃあたしの地位は不動だもーん」 余談だけど、まいとあゆあゆはキャラ被るんだよね。 まい「そうだね。一人称同じだし、口調もあんまり変わらないし」 ということで、さんざん引っ掻き回した挙句吹っ飛んでもらいました。 まい「祐一くん、外道だね」 決まってんじゃん。キミと付き合うにはこれくらいじゃないと耐えられないよ? まい「なんかでも今回は暴れ足りないなぁ……」 あゆあゆに出番食われちゃってるしね(ぼそっ まい「むぅ…………来週こそはっ(ぐっ)」 よし、じゃここまで。 まい「りょーかーい。それじゃみんな、まったねー」 camelさんにあとがき頼んでみようかなぁ(マテコラオイ |