教師の役は飽きたのか、多少はまともに授業に参加して教科書とにらめっこしたあげくショートして倒れるまいを背負って、大学から帰路についている。
重くはない。隣に舞と佐祐理さんはいるし、別に疚しいことなんてない。全然ない。なぁ、そうだろう?



何てことはない、うさみみ付きの小さな子供を背中に乗せて、現役大学生の綺麗な女性二人と一緒に堂々と商店街を歩いているだけだ。










――― どう考えたって、明らかに変なグループだった。




















"まい"のいる生活。 -5-




















商店街は商店街だ。
そんなことは当たり前なんだが……多くの店が集まっているから商店街なのであって、それはつまりたくさんの人が何かしらのモノを求めにやってくるわけで。

要約して言うと、人々の視線が痛い。
見た目40代くらいのおばちゃん達は、知り合いでもないだろうにひそひそ話をするのだ。
聞こえない。聞こえないからもどかしい。
でも、聞いてしまったら人として生きていけないような気がする。



…………それでも耳を傾けてしまうのが人間のさがか。



「あらあら、あの男の子、可愛い女の子を二人も連れてるわ」
「それだけじゃないわよ。背中に背負ってるの……もしかして子供?」
「やあねぇ。あんなに若いのに…………」

…………父さん、ボク挫けそうです。

「あははー、祐一さん有名になりましたねー」
「………………世界に羽ばたけ」

それは無理だと思うぞ、舞。
佐祐理さんも佐祐理さんで、ちょっと意味深にも取れる台詞を吐かないでください。



結局、逃げるように商店街をダッシュで走り去った。











玄関のドアを開け、靴を脱いでリビングに直行。
そのまま、背中のまいを投げ飛ばすように床に落とす。
蛙のような声と共に一度弾んで、まいがむくっと起き上がった。

「いったー…………何するの祐一くんっ!?」
「それはこっちの台詞だー!」

よほど打ちつけた腰が痛かったのか、涙を浮かべながら叫んでくる。
でも俺だって泣きたいんだぞ? ……いやマジで。

「なぁ、まい。……学校、どうだった?」
「楽しかったよー。明日も行きたいなー」

殺気を覚えずにはいられなかった。

「学校は遊ぶところじゃないぞ」
「知ってるよ」
「…………なら、何故さんざん俺に絡んだ挙句教科書見てぶっ倒れてその痴態を晒したんだ?」
「えっと……………………ほら、若さ故の過ち?」
「帰れ」
「うぐぅ…………」

いつの間にかあゆあゆのうぐぅ語をマスターしていたらしい。
しかし、勢いというのは怖いものだ。
俺も昔は色々やったからなぁ………………

だが、まあそんなことはどうでもいい。


…………さすがに、あのおばちゃん達の言葉は効いたぞ。
何故、何故こんなようなやつが俺の子供と間違われなくてはいけないのだ! 俺の品性が疑われてしまうではないか!

「もとからない」
「うぅ、舞さん間も置かずにひとことでバッサリですか……」
「もしよろしければ商店街も手の内に入れちゃいますよー」
「いや佐祐理さんマジで止めてくださいお願いします、っていうか俺何も喋ってないよっ!?」





―――――― もしかしなくても俺、尻に敷かれるタイプなんだろうか。



今更になって、別の意味で自分の将来が心配になったりした。











ようやく五話。今回のあとがきは彼女が担当です。

舞「………………よろしく」

色んな意味で血迷った話なんだと思うんだけど…………どうだろ?

舞「その通りだと思う」

うぅ、相変わらず正直で鋭い台詞…………

舞「…………なんかまいが祐一化してる」

いやほら、そっちの方が動かしやすいから?

舞「……………………安易な考え」

…………お願い、それ以上ずばり言われると血吐くから止めて………………

舞「…………じゃ、今度書いて」

……………………マヂで?

舞「マジ」

うわ、こういう時は即答ですか。即答なんですか。わかりましたよぅ…………

舞「………………やった」



とりあえず今回はここまで。明日は佐祐理さんねー。

舞「ようやく終わった」

じゃ、次は八話でよろしく。一応全部で十六話予定だから……あと三回だね。まいだけ一回多いけど。

舞「……………………本文でも頑張る」

うぃ、わかりました。ではでは皆さん、また見てくださいねー。

舞「…………………………お願いします」





ホント、やっていけるのかなぁ(滝汗