賑やかなのはいいことだ。
一人増えるだけで、空気はガラリと変わる。


「ちびまい、そこの皿取って」
「ちびまいとか言うなっ! ちゃんと"まい"って呼んでよー」
「それじゃ舞と同じだから混乱するだろ?」
「大丈夫だって。文字で記せば漢字とひらがな、読者さんは違いがわかるでしょ?」
「…………なるほど、それもそうだな」

ふたりして「はっはっは」と笑ってみる。
その間にも、箸は音速で起動中だ。水中の白鳥の足の如し。

「あ、舞っ、その玉子焼きは俺のっ!」
「………………げっと」
「まだありますから、そんなに焦らなくても結構ですよー」
「隙ありっ!」
「む、まい如きに俺の玉子焼きは渡さーん!」





………………実際はあんまり変わらない。
朝食は、四人生活一日目にして早くも白熱していた。




















"まい"のいる生活。 -3-




















危うく乱闘になりかけた第一ラウンドあさごはんの後始末を終え、鞄を持って出かける準備をする。
今日だって学校だ。なるべく欠席はしないというのが今年の抱負である。

……しかし。

「なぁ、まい。お前これからどうするんだ?」
「大学に行くけど」
「そっか、大学か………………ってはぁ!?」

今、冗談にしか聞こえない台詞を耳にした気がするぞ?
念のため、もう一度訊いてみる。

「まい…………俺達は大学に行くが、お前はどうするんだ?」
「だから、あたしも一緒に行くって言ってるでしょ」
「おお、そうか。お前も立派な大学生だもんな…………って違ーうっ!」
「え? あたし何か変なこと言った?」

何も乗っていないテーブルをひっくり返し一回転させる。
気分は某大リーグボールで有名な野球一筋青年の親父だ。巨人の星はあそこにっ(天井を指差し)
ちなみにだが、テーブルの上に醤油でも乗っていようものならひっくり返した瞬間に殺られる。経験済みかだなんて訊かないで。

「まあまあ祐一さん…………どうしたんですか?」

台所から、佐祐理さんが顔を出す。
とりあえず状況説明。

「いや、こいつが学校に行くって言うんです」
「あ、それはいいですね。皆さんに大ウケですよー」

それはちょっと観点が違う。
佐祐理さんには付いていけない時がある、と思うのは気のせいなんだろうか?

「大丈夫です。わたしが何とかしてみせます」
「………………マヂですか?」

さらりと怖いことを言ったような。

「あ、でも手続きに三日ほど掛かりそうなので、それまでは留守番してもらうしかないですね」
「えー、それじゃ暇すぎて死んじゃうー」

まいがぶーたれる。
相当に不服らしい。もともと無茶な話だとわかっているんだろうか。



―――――― そう、有り得ない話だと思ってた。










ちょうど三日後。


ごくごく自然に大学に付いてくる(通う)まいと、それを当たり前のように享受する周りに呆れる自分がいた。
っていうか佐祐理さん、何ヤッタンデスカッ!?





…………これも"微笑ましい"光景に見えるんだったら、俺はどうすればいいんだろう。

相沢祐一、人生を疑う秋だった。











冒頭のノリは長く続かないらしいです。
日常もあれくらい賑やかだったらいいなぁ、というどこか歪んだ願望を持ってます。
そしてふたり、さり気にNGワード。裏方を知らないでください(ぉ
舞があまり喋ってませんね。出番ある時は結構喋るんですが。祐一くんノリノリ(笑

次回からは流行りの座談会風味でお送りしてみようかな、と墓穴を掘りそうな台詞を吐いてここまでとさせていただきます。
ではでは、またー。