雪は静かに降っていた。 一日前だって、一年前だって、その冷たさも柔らかさも同じまま。 ずっとずっと変わらずに、同じ景色を繰り返す。 何度見れば飽きるだろうか。 降り積もり溶けて流れ、そしてまた降り積もる純白の世界を。 一月二十九日。 川澄舞の誕生日。 パーティも滞りなく終えた、夕焼け頃の空は雪一面だった。 "まい"のいる生活。 -15- 「はーい、みんなちゅうもーく!」 まいの掛け声と共に、視線が全てそちらに向く。 寂しげでもなく、小さな笑顔のままで佇む彼女は、手を後ろに組み窓の側に振り返った。 長い黒髪が揺れる。うさみみもそれに合わせて、ぴょこんと跳ねた。 雪は止まない。 夕方の茜空は、きっと拝めないだろう。 振り返る。 涙に濡れているわけでもなく、まいは笑っていた。 俺も笑っていた。舞は相変わらずの表情で、佐祐理さんもいつも通り。 普段と何も変わらない。 これから後片付けをして、風呂にも入って、四人でひとつのベッドに固まって寝る、そうすればまた明日が来る。 ずっと続けばどんなに幸せかと、誰もが願っているはずの日常。 転機はいつだってあるだろう。 大学を卒業したら、仕事の違いで一緒にいられる時間もきっと減る。 別れることもあるかもしれない。……考えたくはないが、必ずいつかは誰かが死ぬ。 永遠なんてモノはなくて、終わりはすぐ傍で待っている。 そんな酷く脆い日常というヤツに、人間はどうしようもなく惹かれるんだ。 壊れるコトを知っていながら、それでも毎日朝起きた時、隣に大切な人がいることを願う。 だから別れが辛くなる。ずっとそのままで、と祈ってしまうから。 「今日であたしはみんなとお別れだよ」 「…………理由は、聞かせてくれるな?」 「もちろん」 話が始まった。 「あたしは、舞の"力"から生まれた。それはわかるよね」 「ああ」 「祐一くんと舞はわかっているよね。舞の"力"は強く願ったことを叶えるモノ」 事実のひとつひとつを確かめるように、まいは言葉を紡いでいく。 「……つまり、今の実体化したあたしは舞の"願い"そのものなんだよ」 「それは、舞がまいという存在を願ったってことなのか?」 「そういうこと」 一瞬、舞の顔がぴくりと動く。 その様子を気にするでもなく、まいはまだ続ける。 「ずっと楽しい日々が続けばいいなんて、誰もが思っていることなんだよ。祐一くんも、佐祐理も、舞も、あたしも」 「………………」 「あたしは、舞の願いから生まれた存在なの。それ自体があたし」 「……………………じゃあ、どうして舞はまいを願ったんだ?」 「…………………………そこに、まいがいなかったから」 あの日から、あたしは『魔物』じゃなくなってた。 舞の"力"の欠片。でも、既に独立してしまった存在。 あたしはあたしで、舞とは違うモノになってしまっていて。 ずっと見ていた。 舞の中で、三人の生活をずっと見ていた。 羨ましくて、あの輪の中に入りたくて、黄金色の麦畑はあたしひとりで寂しくて。 過去しか持っていないから、 いつの間にか、強く願っていた。 あたし自身の幸せを。あの中に"まい"がいる生活を。 その祈りは、舞に届く。 舞は優しいから、本当に優しいから、一緒に願ってくれて。 声にならない、心の中でだけ響くその想い。 ほんの二ヶ月ほど前、"力"は舞の願いを受け入れた。 「……もう、本当に終わりみたい」 「………………ずっと、いられないのか?」 まいは静かに首を横に振る。 否定の返事。これ以上ないってくらいの、無音の言葉。 「理不尽だよね。勝手に出てきて、祐一くん達を振り回して、それで勝手にいなくなっちゃうなんて」 自覚あったのか、とは声に出さない。 「…………本当だ。自分勝手すぎるぞ」 「…………………………祐一くん」 「中途半端にするなよ。俺の我が儘かもしれないけど…………でも、最後までいてくれよ。ずっといてくれよ」 やっぱり、俺は弱い。 笑って送り出す、なんてできない。こんな大切な日常を、手放しても大丈夫だなんて言えない。 「毎日、楽しかった。……………………まいにいてほしい。それが正直な私の気持ち」 「そうですよ。一緒に色々やったじゃないですか。まだまだやってないこともたくさんあるんですよ」 「舞…………佐祐理…………祐一くん…………」 結局。俺も、舞も、佐祐理さんも、まいも…………みんな泣いていた。 「まい。俺達は祈ってるから…………………………戻ってこいよ。そうしないと一日飯抜きだからな」 「あ、それはちょっと厳しすぎるよっ」 帰ってこないかもしれない。戻ってこないかもしれない。 不安は尽きないだろう。でも、信じれば叶うと教えてくれたのは他ならぬまいだ。 俺達が見守る中。 「それじゃ…………またね」 約束を残して、まいは消えていった。 希望は、まだ此処にある。 三日後。 学校帰り、玄関に足を踏み入れると声が聞こえた。 「おかえりー」 靴を脱ぎ、廊下を小走りで通り過ぎる。 突き当たりで右向き直角に曲がり、リビングに辿り着く。 そこには、三日前に最後に見た姿。 うさみみに白いワンピースの、小さな少女。 「みんな…………ただいま」 「ああ、おかえり………………まい」 二月の頭、"まい"のいる生活はまた始まる。 終わったーっ! そして第二声は「ごめんなさい」です(滅 『"まい"のいる生活。』、どうだったでしょうか。 ええ、わかってますよわかってますとも。「失望した」とか「がっかりです」とか「帰ってください」と思われるのは当然ですねー(涙 発案当初と比べて全く違う展開、結末、その他etc…………となってるんですが、その辺は気にしないでください。 文章というのは読者さんに委ねるモノと思うのですが、しかしその読者さんも千差万別の読み方をします。 ある人に受け入れられる文章も、別のある人には全く受け入れられない。 なので、私はひとつの境地に達しました。 自分である程度納得できれば良し(オイ 皆さんの考えを蔑ろにするわけではないのですが、そんな深く受け取ったって堂々巡りになるだけだと。 ……いえ、どうでもいい悟りを開いてしまったところで言い訳にもなりませんが(苦笑 あ、感想は大歓迎ですよー。何言われても表向きは平気です(ぇ さて、ひとりごとはこの辺にして三人のところに行ってきますねー。 まい「遅いよー」 佐祐理「まぁ、相変わらずのことなので気にしませんが」 いきなりそこまで言いますか………… 舞「………………自分の気持ちに正直に」 佐祐理「そうだね、舞ー」 ぐさぐさっ。 まい「なんか傷ついてるらしいソレは置いといて」 私は"ソレ"扱いですか。 まい「随分とまた適当でお茶もさんざんに濁して何の説明もない締め方だね」 ごふぅ(クリティカル26HIT 佐祐理「佐祐理なんかほっとんど出てきませんしねー」 げふぅっ(さらに追加で52HIT 舞「…………………………適当」 ぐはぁっ!(エリアル×5→追撃に17分割で上との合計78HIT 佐祐理「はい、ちょっと待っててくださいねー。粗大ゴミを処分してきますから(ずるずる」 舞「……………………腿の辺りだけ残しといて」 まい「バターでじっくり焼くんだねー」 佐祐理「さて、邪魔者もいなくなったところで少しぶっちゃけた話をしちゃいましょう」 舞「…………当初は私の剣も物語に絡める予定だった」 まい「でも作者は行き当たりばったりで毎回書いてるから絡められなかったんだよ」 佐祐理「人様に送ってるのに適当な部分ばかり目立ちますねー」 舞「……………………単に馬鹿なだけ」 まい「うんうん」 佐祐理「あとはゲスト。あゆさんは最初から出てくる予定だったんですが、他の方々は即興で考えたんですよ」 まい「香奈さんは正直出していいのかどうか迷ったんだって。許可も取ろうとせずに勝手に書いて送っちゃって」 舞「………………やっぱり馬鹿」 佐祐理「他にも、作者自身の所からゲスト用にオリキャラ引っ張ってこようとも思ったらしいですね」 舞「……誰も付いてこれなくなる」 まい「そうそう、いたずら好きなのもわかるけどやり過ぎはご法度だねー」 佐祐理「最後にも関わらず、こんなモノしか残せなくてごめんなさい、と死体が喋ってますよ」 舞「…………………………どうかご了承」 まい「番外編はこれからもちまちま、思い出したかのように書くつもりらしいから」 舞「まずは祐一の風邪ひき編。………………私が主役」 佐祐理「あとは電波次第らしいです。つまりはやっぱり適当ってコトですね」 まい「どうしようもないねー、っていう言葉が一番合ってるっていうか」 舞「……………………………………ごめんなさい(ぺこり」 まい「それじゃ、今まで付き合ってくれてありがとねー。camelさん、続きお願いします」 よもや最終回でまであとがきをやらせて貰えるとはッ! 佐祐理「なんだかんだで半分近くやりましたしねー」 まい「折角だからっていうのも有ると思うよ」 舞「…………お情け」 ……良いんスよ別に。とにもかくにも、全15話。お疲れ様でした。 佐祐理「まったりと進みましたね」 まったり同盟盟主だからねえ神海さん。僕はまったりすると何もしなくなるから怖くて加盟出来ないんだけどw まい「児童虐待がどれほど良くないかを社会へ訴える警鐘的お話だったね」 舞「…………初耳」 僕も初耳。 佐祐理「はぇ? ご存知ありませんでしたか?」 ………佐祐理さんの良く解らない黒い政治力も見物でした。 舞「知らぬが仏」 まい「好奇心は猫殺すって言うじゃない」 佐祐理「あははー」 15話できっと祐一君の体重は激減したんじゃあないかと。 佐祐理「祐一さんは男の子ですから」 舞「…………そういえば女3人に男1人」 まい「ハーレムだったね」 規格外も居たけどな(視線を下げつつ)。 まい「あたしっ!?」 ああもう纏まらないじゃないかー。えーと、なんだ。とにかく。 神海さん、お疲れ様でした。素敵な時間を有難うー! |