正月の朝食といえばお雑煮だ。 誰が何と言おうとも、その事実は覆せない。 よく取れたダシの味を堪能し、同じく味の染みた温かい食材の数々を口の中に放り込む。 広がる熱。口内に響き渡る旨味。この寒い時期にこういうモノはぴったりだ。 こう、一口を感じる度に幸せになれる。随分と安いが、安いに越したことはない。 「佐祐理さん、バッチリ美味しいですよコレ」 「そう言ってもらえると作った甲斐がありましたよー」 「………………おかわり」 「あはは、舞は食いしん坊だねー」 「わ、あたしもあたしもーっ」 「お前は食べ過ぎだ。もう五杯目だろ」 新年を迎えたにも関わらず、いやだからこそなんだろうか、全くこの雰囲気は変わらない。 今日も素敵にはっちゃけた食事風景だ。いつも通り、何ら変わるところがないというのもある意味凄い。 最後まで残さず飲み干し、茶碗を片付け一息。 テレビでは正月になると決まってやるような隠し芸大会だのが垂れ流しされている。 ぶっちゃけて言うと、誰も見ていない。でも点けておきたい、なんて気分に駆られるのが正月たる所以か。 「……うふふ、ゆういちくぅん、いまひまぁ?」 「暇だけど何だ? この話は良い子が読むんだからな」 いきなり猫撫で声を出されると鳥肌が立ちそうになる。 俺にそんな趣味はない。というか、まいがそんなことをしても猫の発情期程度にしか聞こえん。 「そうじゃなくてー。まだお参り行くまで時間あるから、トランプでもやんない?」 違ったらしい。 …………ということで、四人でしばらくトランプをすることになった。 七ならべ。 根気と運と作戦が必要なゲーム。 「ほらほら、どうしたの祐一くん? パス? パスかな?」 「あははー、祐一さんギブアップはまだ早いですよー」 「…………………………手詰まり」 残り一枚、手元にはスペードの3。今、場に出ているのは5まで。 「……………………………………だぁああぁあーっ!!」 今ひとつ、根気が足りなかった俺だった。 "まい"のいる生活。 -11- さほど人はいない。 この街の人口は少ないのか、それとももっと大きな所に行っているのか、それはこちらの与り知ることではない。 少し外れの方にある神社。俺は普段通りの服装で、舞達は振袖姿で此処に来ている。 横に視線を向ける。 明るく飾った豪華な振袖を着込んでいる舞と佐祐理さんは、どうにもいつもより輝いて見える。 ……正直言えば、可愛い。必要以上に女性を意識してしまう。 え、まい? …………聞かないで。 「祐一さん、どうですか?」 「へ?」 突然疑問形で声を掛けられ、戸惑う。 「これ、似合ってます?」 「………………答えて」 「ああ、似合ってるよ凄く。本心で言ってるから、頼むその手を引いてくれ舞」 「ねーねー、あたしはー?」 「ノーコメント(一秒)」 「何も即答しなくたって…………」 そんな馬鹿馬鹿しい会話をしながら賽銭箱の前まで辿り着き、いくらまで投げ入れるか迷っていた時に後ろから呼び止められた。 振り向くとそこには、 「お、みっしー」 「親しげに呼ばないでください」 「じゃ、みしみし」 「もうそのネタは出尽くしてます。だいたいそれでは今にも壊れそうじゃないですか」 ……天野美汐嬢がいた。何故か巫女服姿で。 こちらの視線に気づいたのか、それとも地の文を読んだのか、先ほどの思考に回答する。 「親戚の手伝いです。毎年三箇日は此処で働いているんです」 「なるほど。まぁ、巫女服なのは突っ込まんでおくが」 「そうしてくださると助かります。作者の趣味としか言い様がありませんし」 しっかりと返してくれる天野。 こういう人材を俺は待っていたっ(ぐっ と、熱い台詞を交わしているところで裾を引っ張られる。 見ると、舞が目で催促してきた。 「……………………姫初め?」 こちらが言葉を発すると同時に、身体が宙に浮く。 蹴り上げられた、と気づいたところでもう第二撃が加えられていた。 さらに高く空に放り上げられた状態の俺に、振袖姿の舞は無慈悲に最後の一撃を鳩尾に入れる。 衝撃が水月を貫通し、意識を失う間もなく自由落下で地面に叩きつけられる。 「さ、さすがに死ぬ………………」 「………………健全に」 「りょ、りょーかい…………………………(がくっ」 「まだ寝ちゃダメ」 意識を失うのも舞は許してくれなかった。 「あははー、そこのお兄さん寄ってってくださいねー」 「………………おみくじ、引いて」 「はいそこっ、そう、今彼女連れて歩いてるキミっ! せっかくだからお守り買ってってっ! 損はしないから、ねっ!」 完璧なチームワークで客を呼び寄せる三人。 まいはともかくとして、舞と佐祐理さんはいるだけでも十分人が集まるほどの美貌だ。事実、初めは人口密度が低かったこの場所も今は半分以上が人間だけで埋まっている。 どんな経緯なんだか、俺達は神社での仕事を手伝うことになった。 報酬は巫女服三着(まいが切に希望)。そこにある意図は、俺には理解できない。 「相沢さんも大変ですね……」 「ああ、そうだな……」 その話題を振られると、遠い目にならざるを得ない。 「……でも、楽しそうですね」 「もちろんだ。アレで楽しくなかったら俺もう死んでる」 「そうかもしれませんね。実際私はあの輪の中に絶対入りたくありません」 「うわ、断言されたよ」 天野の顔は仄かな笑顔だった。 つられて、こちらも微笑を浮かべる。 「………………楽しいんだ、凄く。もしかしたら、ずっと続くんじゃないかってぐらいにな」 「…………………………本当にそうだと、いいですね」 それきり、会話は途切れた。 「よし立ち止まったね? じゃそこのお姉さん方どうぞお守りをひとつ。拒否権はないよ?(さわやかな笑顔で)」 「……………………おみくじ、一回100円(通りすがりの人の首筋に破魔矢を宛てながら)」 「何か買うまで帰っちゃダメですよー(エージェント待機中)」 裏方で作業中の俺は、今日一日絶対彼女達と一緒に表には立たないと強く誓った。 え、止めた方がいいって? …………世の中には、できないこともあるんだよ(虚ろな目で空を見上げて 結果、今日の売り上げは20万を越えたらしい。 巫女服を片手に意気揚々と帰る御三方を見て、本日犠牲となった一般人に密かに黙祷を捧げる俺だった。 なまむぎなまごめみこみこなーす!(挨拶) ゲームは買ってません神海です。 舞「……かえるぴょこぴょこみこみこなーす」 続けんでええって。とにかく、今回はまたペースを取り戻した気がしないでもない風味に仕上がりました。 舞「………………ちょっと出番が増えた」 頑張ってみたさ。でもあれが精一杯さ。さぁ、やるんならやるがいい(立ち往生のつもりで 舞「…………………………今日はいい」 え?(拍子抜け 舞「…………番外編、期待してるから」 そっちかー!(涙 舞「…………………………期待を裏切ったら、承知しない」 えっと、その……時間は掛かるけど何とかします(滝汗)。ではcamelさん今回もお願い致します(図々しい 舞「………………よろしく」 驚異! 書き手を脅す登場人物! 三流キャッチコピーと共にcamelですよこんぬづわ。 舞「……いとをかし」 まあいいか。今回は割りと饒舌だったのう舞さんや。 舞「………三回に渡って言い続ければ、流石に」 つまりこのアタクシが神海さんを脅した、と。 舞「そう」 そういう時は反応早くてナイスね。88点。そういえば、今回は美汐さんが出てきました。 舞「……巫女装束の似合う17歳」 彼女が出てきてしまうと、それはもう僕の中で色々と変動が起こるんですよ。愛故に。 舞「…………銃刀法違反、上等(正眼の構え)」 …出たな逆賊(六法全書を盾代わりに)。 舞「…うるさい国僕」 なんだってこう後書きでも殺伐とするかね君は。そんなんじゃ扱い難いって事になって困るんじゃないのかな? さあ剣を下げなさい。ね? 舞「…………貴様をやってから、そうさせてもらう」 アムロっ!? 舞「……………番外編では、きっと」 …あ、すげえイッパイ血出てるよ。ねえ。 舞「………では次回をお楽しみに」 ホラ手とか真っ白じゃん。マジで。あれ、膝が笑う。あれ? |