冬も真中、師走も終わりを告げようとしている。

十二月三十一日。世間で言う『大晦日』だ。
年越しそばと大掃除と二年参りで有名な日……だよな? そうだよな?

で、まあ色々あって大掃除をしていなかったので、午前中全部と午後少しまで敢行することになった。
佐祐理さんは細かな箇所を担当。
舞は主に窓拭きをしている。
俺は重量物をどかす作業と、高い位置のモノ担当。

まいはというと、

「やっほー」

掃除機で床をがーがーやっているんだが、



「とりゃー」

適度にこちらを邪魔するような進路を通っていて、



「そいやー」

切れ掛かっている電球を取り替えようとしている俺が乗っている椅子に向かって突っ込んでくるまい。
ちょうど新しいのを付け終わったのと同時に、まいが椅子を吹っ飛ばした。



ごすっ、と鈍い音を立てて、背中から思いっきり倒れた。痛い。



「そこーっ」

大雑把にその辺を走り回っているまいwith掃除機。





「いい加減にしろーっ!!」





フルパワーでドロップキックをくれてやった。




















"まい"のいる生活。 -10-




















「マジで疲れた…………」
「祐一くんは頑張ったからねぇ」
「お前のせいだお前の」
「だーかーらーその手を引いてー」

無事(と言えるかどうかそもそも疑問だが)掃除を終え、今はまいと買い物をしている。
明日の食料のためだ。佐祐理さんと舞はまだやることがあるらしく、外出部隊は俺達二人となったわけで。

たかが年末、されど年末。
何に急いでいるのやら、せわしなく動く人々。
年越し前に見られる独特の空気――― 期待と不安とその他色々を適当な分量で混ぜたような――― があらゆる所で感じられる。
もちろんのこと、俺もその中に混ざっている。どうもこの時期はわくわくしてしょうがない。
よくはわからないが、何かが起きそうな気がして……なんてありきたりな台詞だが、年の初めとはそういうものだろう。

買うモノは全て買った。
「疲れたー、背中に乗っけてー」と荷物ひとつも持たないヤツの言葉を黙殺して先に進む。
それでもまだ諦めないので、まいが乗りやすいようにしゃがんでやった。

「うんうん、良きにはからいたまへ」

無駄に時代かぶれの上流階級っぽいことを口走り、まいがこちらの背に体重を預けようとした刹那。
荷物を真上に放り投げ、後ろのまいも同時に跳ね上げる。
無防備に宙に浮いた状態のまいの足を掴み、流れるような動作で半回転ジャイアントスイングをかました。


その間、コンマ六秒。そのまま落ちてくる荷物をしっかりキャッチし、何事もなかったかのようにその場を走り去ろうと試みる。

「…………ゆ、祐一くん…………それはないんじゃないかな…………」
「おお、大丈夫かまい。心配したぞ」
「思いっきり棒読みで誠意が欠片もこもってないね」
「そんな些細なことを気にしていると大きくなれないぞ」
「あたしもうそろそろ十九歳」

こうやって時々は主導権を握っておかないとやってられない。



人として最低なストレス解消法だな、と微妙に再認識して閉口。
………………ま、いっか。相手はまいだし(投げ遣りに)。











今日の夕食はそばだ。
どうも無言で、ただひたすらずずーっとつゆに浸けたそばを啜っている。
まぁ、舞はいつもの通りだが佐祐理さんやまい、俺もひとことすら発していない。
カニ食べてるわけじゃないんだから、とも思うが、ネタがないのは確かだ。

何となく、言葉を出しづらい。

正月は何をしようか。今年は大変だった。来年は旅行でもしないか。
そんな単純なことでいいのに、言ってしまうのが躊躇われる。


何故だろうか。


「ねぇ、みんなー、明日どうするの?」

まいが口を開いた。
…………それだけで、先程までの空気が嘘みたいになる。

「そうですねー、近くの神社にお参りしてから、祐一さんのご両親に挨拶しに行きましょうか」
「え、ちょっと待った佐祐理さんっ! そんなのひとことも聞いてないっ!」
「当たり前じゃないですか。言っちゃったら秘密にならないですよ?」
「……………………楽しみ」
「ヤメテー! 心の準備もできてないし連絡取ってもいないからっ!」
「仕方ありませんねー。明日は佐祐理の実家に行きましょうか」
「ふぅ、助かった…………」
「あ、祐一さんのご両親に会うのは三日にしますね」
「回避不可能っ!?」

これが、普段の食卓。
少しうるさいぐらいだけど、みんなが笑っていられる時間。


まいは、そんな光景を笑顔で眺めていた。










一月一日は、もうすぐだ。
心臓の高鳴りと同じく、テレビのカウントダウンも始まる。

第一声はやっぱり「あけましておめでとう」か。
それとも、趣向を変えて違う角度から攻めてみるか。



余計なコトを考えて、その中でひとつのモノが浮かんだ。





そう。



まいは、何も教えてくれていない。











今日もまったりかるちゃーしょっく!(挨拶) 自分は正直者だと思えない、神海でございますー。

まい「いきなり訳わかんない挨拶だね」

夏休みはテンションアップの大きな要因だねっ。ゆっくり起きられるって素敵っ。

まい「でも忙しいんでしょ?」

まあ。だけどその分わくわくジェノサイドだから、軍資金が飛ぶことを嘆くだけだよ。

まい「切実だねー(他人事のように)」

あははー(空笑い)。で、本編の話なんだけど。

まい「うわ、反転したよ」

いきなりシリアスっぽいような雰囲気入りましたが、これからは少しずつこんな調子になるかと(まいの台詞は敢えて無視

まい「中途半端にいい話になんてしない方がいいのに」

だってネタ尽きるし。もともと私は面白い話を書ける人間じゃないんだって。

まい「そこまではっきり言うのもアレだよねぇ」

事実だもん。さて、全く人様に迷惑かけるのが特技らしい私ですが、今回もcamelさんにあとがきをお任せしたいと思います。

まい「他人を苦労させるのもほどほどにね」

うぅ…………(滝汗) で、ではcamelさんお願いしますー。

まい「このあとよろしくねー」



ハイよろしく任されましたcamelですよ準レギュラーですよデリシャス。

まい「ひょっとしたら、そのうち舞より多くなるかもね」

うむ、ナイスな感じに神海さんへプレッシャーをかけてるねぇまいさん。

まい「でも、あたしと君は異口同」

おだまり。

まい「…目つき悪っ(実話)」

第9話では必死だったから。生きてるって素晴らしい。ところでまいさん、今回のラストなんだけど。

まい「意味深だよねー」

祐一君もジャイアントスイングかけておきながらややセンチな感じです。

まい「あれは本気で効いたんだよ」

それはそのうち試させてもらうとして、今後の展開に期待がかかりますな。

まい「試すのっ!?」

それでは神海さんに多大なエールを送りつつコレにてー。

まい「試す!? ねえ試すって言ったよね!?」