専ら食事にしか使わないテーブルに、俺達は向き合っていた。 隣には舞と佐祐理さん。目の前にはまい。形式的には迷子の幼女に母親の特徴を訊ねる大学生グループだ。 しかし、実際は全く立場が逆である。小学生の話を真面目に聞く男女三人。よく考えれば実に変な構図だった。 「で、こんな時にどうした。似合わないシリアスな表情で」 「茶化すのは今回だけはなし。あのね、祐一くん。こないだ話したこと、覚えてる?」 「こないだっていつだ?」 「手羽先」 「ああ、あの時のか」 会話の最中、横の二人は呆然としていた。 それも当然だ。状況がわからなければ俺も同じ顔になってただろう。手羽先って何だよ。 「一個俺がお前の分を食べたことか?」 「じゃなくてー。ほら、あたし、なんか忘れてるような気がする、って」 「そういや言ってたな。……それが何なんだ? さっぱりわからん」 「あのね、いい? 言うよ?」 前振り付きでまいは一拍置き、 「みんなさ、一弥が押入れから出てきたとか、その辺忘れてない?」 そのひとことで空気が凍った。 俺は一弥初登場時の情景を思い出し、舞と、佐祐理さんと顔を見合わせる。 どうも馴染み過ぎて、事情諸々がすっかり頭から抜けていた。 「「「………………あ」」」 そう。一弥も、舞とまいの力によって現れたのだ。 "まい"のいる生活+1。 -6- その後の話を要約すると、こうなる。 まいの時とは違い、一弥は佐祐理さんが持つ過去の記憶を元に構成されたらしい。 魂が何たらとかは本人もよく知らないのだが、とにかく一弥の意思は佐祐理さんと共にあった。 具体的な"引き金"は不明だ。だが結果としてまいのように実体化し、今もこうして存在している。 問題は、どうして動けなくなるほど弱ってしまったかだ。 それに関しても、まいは理由はわかってる、と頷いた。 「たぶんね、過去の記憶に引きずられてるんだと思う」 「過去の記憶?」 「うん。佐祐理、今の一弥見て、気づいたことあった?」 ……質問は佐祐理さんにとって答え難いものだろう。 が、俺の心配は無意味で、返事は思いの外しっかりとしていた。 「昔の状況と、とてもよく似てます」 「一弥が…………その、死んじゃう前と?」 「……はい」 「ごめんね、嫌なこと思い出させて。でも、それで合ってるんだよ。一弥の身体は過去の出来事を辿ってる」 「つまり、このままだと――― 」 言葉は続けられなかった。考え得る限り最悪の未来のことを想像して。 けれどその中で、 「……まいちゃん。何か、手はあるんですよね」 佐祐理さんは強かった。 諦めたくない、諦めるわけにはいかないと、その目は語っていた。 少し逡巡し、まいは再び頷く。 「ある、んだけど…………」 「……難しい、ことなのか?」 「一弥がああなるのを決定づける何かがあったと思うの。それをどうにかすれば。……佐祐理、わかる?」 「………………前に話したこと、ありますよね。一弥は佐祐理と外で元気に遊びたかったんだ、って」 水鉄砲を持って、広い世界を走り回って。 疲れたら休んで楽しい話をして。 お菓子もたくさん食べて、笑い合って。 ……少年が夢見たのは、そんな些細なことだった。 「となると、広い場所が必要だよな」 「…………それだけじゃ駄目。この付近で、その条件が揃ってないと」 「んなこと言ったって、そんな都合のいい場所……」 ――― 不意に、幾日か前の一弥との会話を思い出した。 あの時確か、一弥は妙なことを訊いてきたのだ。 『この辺りに、広くて、水の汲める場所ってありませんか?』と。 そして俺は答えたはずだ。そう、一弥の出した条件にぴったりの場所がかつてあった。 「……麦畑ならどうだ?」 「麦畑?」 佐祐理さんが首を傾げる。当然だろう、今、この町にそんな風景を残すところはない。 だが、舞とまいの反応はあからさま過ぎるほどに激しかった。 「…………祐一、あそこはもう」 「わかってる。でもな、俺にはあそこしか思い浮かばん」 舞の指摘はもっともだった。黄金色の麦畑が存在したのは過去の話。 現在、その場所は俺達が通った高校へと変わり果ててしまっている。 無理か、と俺は俯く。あるいはこの面子なら何か手があるかもしれないと思っての発案だったのだが。 ……落ち込んだ俺を余所に、しかしまいははっと顔を上げ、舞に向かって何かを囁く。 まいの言葉を聞いたと同時、舞は小さく頷いて、表情を固くした。 その意味がわからず心中で疑問を膨らませた俺が訊ねるよりも早く、舞が口を開いた。 「…………祐一。佐祐理。何とか、なるかもしれない」 夏空の下を俺とまいは歩いていた。 散歩と言えば聞こえはいいが、実際にはそんな気軽なものではない、重苦しい空気が俺達の間を漂っている。 「………………」 「………………」 「…………なぁ、まい」 「ん?」 「他に、手はないのか」 「……ないと思う。思いつく限りじゃ、あれが最善の手段」 ――― 舞とまいの力で、あの麦畑に一弥を連れていく。 現状では、それが唯一の方法だった。 おそらく二人なら可能だろう。半年ほど前、まいが俺達の前に現れたのと逆のことをすればいいのだから。 まいの生まれた場所。今こうして存在するまで、ずっと一人で外に出るのを待っていた場所。 ……寂しいところだったから、みんなで遊べたらきっと楽しいよ。 そう呟くまいの表情に嘘も偽りもなく、本心からの言葉だとわかった。 けれど、舞はその手段を説明してから言ったのだ。 「…………これは、凄く危険」 「どうしてだ?」 「……普段、力の発現には時間が必要。まいの実体化にも、一ヶ月掛かった」 「でも今回は、時間がない……つまり、どうなる?」 「……意図的に大きな力を行使する場合、体力と精神力を消耗する。私は数日寝込むだけで済む。でも、」 ――― まいは、消えちゃうかもしれない。 まるで死刑宣告のように、最後のひとことは俺の頭の中で響き続けた。 佐祐理さんは沈黙を保ったままだった。まいと一弥。二人を天秤に掛けて、どっちが大切だなんて声に出せるはずもない。 ただ、まい本人はやる気で。明確に逡巡し、否定の意思を少なからず表にしたのは俺だけ。 握った拳を震わせる俺に、まいは「ちょっと散歩に行こっか」と外に連れ出した。 その結果として、俺達はとぼとぼと静かな夜道を行き先もなく進んでいる。 言わばこれは、まいの決意を受け入れ、俺が納得するために割いた時間だ。 帰ればすぐに始めることになる。あまりにもリスクの高い賭けを。 頭ではわかっているんだ。一弥をこのままにしたくない。だからこれしかない、と。 だが、もしかしたら、まいは――― 。それが何より怖かった。 大切なものを失うのは、言葉にできないほど辛い。俺も、舞も、佐祐理さんも、みんなそれを知っている。 だからこそ、そんな可能性を認めるのが嫌だった。 「……ねぇ、祐一くん」 とん、と。 まだ迷う俺の目の前に、まいは立った。 「あたしがさ、電話した時のこと、覚えてる?」 「電話? ……魔物が来る、ってやつか?」 「そう。あたしの精一杯の嘘。祐一くんを引き留めたかったばっかりについた、嘘」 「…………ああ」 全ては、そこから始まった。 今でも考える。もしあの時、少女の嘘を信じて、思いに気づいて、会いに行っていたならば。 舞は自分を傷つけ、苦しみ続けることはなかったんじゃないかと。 自分自身の嘘を守るために、剣を持ち、戦うことはなかったんじゃないか、と。 「……後悔、してる?」 けれど――― その答えは既に出ている。 「してるよ。でも、だからなかったことにしたいなんて思わんさ。だって、その嘘がなければ、ここにはいないかもしれない」 「…………うん」 「舞に会えた。佐祐理さんにも会えた。まいにも、会えた。それで十分だろ」 過去は戻らない。過ちは、決して取り返しのつかないものだ。 なら俺達に何ができるのか。結局、今を生きて、未来を生きるしかない。 そう。償いだって、無理にすることはないのだ。今できることを、すればいい。 「なら、ひとつ約束して」 「何だ? 手羽先を三倍にして返せってか?」 「いい加減それ置こうよ。いい?」 まいは小指を残し握った右手を俺に差し向け、 「……今度はあたしを信じて、迎えに来てくれる?」 俺は頷き、まいと同じ形に作った右手を差し出して、 「ああ、約束する」 ぎゅっと、互いの指を絡め、繋いだ。 ……あとはもう、まいを信じるだけだ。 帰ってきた俺とまいを見て、舞と佐祐理さんはどういった答えが出たのかわかったらしい。 まずは一弥を起こす。浅い眠りにだったのか、目覚めは早かった。 「…………祐一さん?」 「一弥。辛いだろうが起き上がってくれないか」 「……はい」 佐祐理さんの介添えでベッドから抜け、テーブルのところまで辿り着く。 青白い顔に、一層細く見える手足。肉体的にも精神的にも弱っているのは明白だ。 確かにこれではあまり時間も残されていない。急がなければ、という気持ちと共に、これからすることの説明を行う。 初めは大人しく聞いていたが、まいの件に話が入ると、一弥は声を荒げた。 「そんな、駄目です、止めてください……っ!」 「一弥、無理しないで!」 激しく動きかけ、しかし身体はついてこず、咳き込む。 呼吸を整えながらも、一弥の瞳は今からすることへの否定の色を宿していた。 「僕の、ためなんかに……危ない橋を渡る必要なんて、ないです」 「一弥…………」 俯いて、弱々しく呟く声には、痛ましさしかなかった。 俺は頭を抱える。ひとつ大きな溜め息をつき、一弥に近づこうとして、 「ばかっ!!」 ぱあん、と。いっそ清々しいくらいの打音が部屋に響いた。 ……佐祐理さんが、一弥の頬を叩いた音だった。 「まいちゃんがどんな気持ちで決めたことだと思う!? 舞も、祐一さんも、わたしもっ! どんな気持ちで認めたと思うの!?」 「姉さん…………」 「わたしは、賭けたいの! この一ヶ月足らず、一弥といられて嬉しかったから。だから、信じてるの!」 「………………」 「それなのに、一弥が信じないでどうするの……っ!」 涙を溜めて。肩を震わせて。 悲しさを抑えて叫ぶ佐祐理さんの姿は、凛々しく、そして強かった。 戸惑う一弥の正面に俺も立ち、両肩に手を乗せて真っ直ぐ見つめる。 「いいか、一弥。お前は俺達の家族だ。家族なんだ。それは前にも言ったよな?」 「……はい」 「俺達はお前を必要としてる。そして、必要とされるってのは、"ここにいる"のを許されるってことだよ」 ここにいていいから、ここにいてほしい。そういうこと。 「だから信じろ。お前の大好きな姉と、その家族のことを」 「………………」 「返事っ!」 「はいっ!」 お膳立ては全て揃った。 全員で輪を作り、手を繋ぐ。まいが始まりを告げる。 「みんな、目を閉じて。祐一くんは、あの麦畑の光景を思い浮かべて。強く、しっかり」 瞼の裏に思い出を投影する。 陽の光を浴びて黄金色に輝く麦穂。風に揺れて傾く情景。 俺と舞が、出会った場所。大切な記憶の一部、忘れられない、忘れることない世界。 空気が変わった。肌に感じるのは懐かしい何か。 草の匂いが漂う。セピア色の過去が、次第に鮮明になっていく。 「…………っ」 「まいっ!」 「大丈夫っ! みんなが、祐一くんが、信じてくれてるからっ!」 俺は祈った。 頼む。この願いを、希望を、挫くことなく叶えてくれっ! そして―――――― ――― 光が、全てを包み込んだ。 「う…………」 ゆっくりと、閉じていた目を開く。 まず初めに見えたのは、俺の背と同じくらいの麦の群れだった。 「………………はぁ!?」 いやいやいやいや、ちょいとこの麦穂、高過ぎないか? 慌てて俺は自分の手足を眺め、大変なことに気づいた。 「…………俺、小さくなってる?」 「うん」 「ぬおっ!? その声、まいか!?」 「せいかーい♪」 ひょこっと現れたまいは、相変わらず変わらない姿。 しかし今の俺にしてみれば随分大きく感じる。むしろ逆か。 「なんで?」 「だって……こうじゃないと、約束、果たせないよ?」 「……なるほど」 「さすが順応早いね祐一くん」 「俺を舐めるなよ。かつては101匹妖怪大戦争と呼ばれた祭りの立役者と言われた、」 「与太話はいいから」 結局、あんまりシリアス過ぎるのは俺達に似合わないらしい。 互いに向かい合い、微笑する。それから俺はその表情を保ったまま手のひらを突き出し、 「ほら、迎えに来たぞ。で、魔物はどこだ?」 「……ううん。いないよ。あれは嘘だったの。でも……祐一くんは来てくれた」 まいが近づく。 そっと俺の胸に顔を埋め、細い手指が背中に回される。 抱きしめることに迷いはなかった。艶やかな黒髪を梳くように頭を抱え、優しく包む。 少女がついたたったひとつの嘘から始まった過ちと、俺の間違いは、これで清算できただろうか。 ただ、確かなことがあるとするなら、俺の胸から離れたまいは笑っていた。それだけだ。 「じゃ、行こっ。一弥達のところに」 「ああ」 「先に着いた方が明日の夕飯おかず一個摂取権!」 「待て、宣言しながらフライングは反則だ!」 子供みたいに俺達は走る。 今は許されるだろう。実際、こうして子供に戻っているのだから。 駆けた先で、まいを除いた三人は待っていた。勿論全員子供の姿だ。うわ、佐祐理さん可愛いな。 ちなみに競争は俺の勝ち。途中でつまずいて転んだあいつが悪い。 「遅いですよー、二人とも」 「…………祐一、まい、遅刻」 「すまん。ちょっと男の威厳を懸けた勝負がな」 遅れてやってきたまいは、五人分の水鉄砲を持っていた。 どこから調達してきたのか、しっかりいっぱいまで水が入っている。 「一弥、いいか。無制限一本勝負、タイムリミットは飽きるまでだ」 「祐一さん、チーム分けはどうするんですか?」 「俺と舞、佐祐理さんと一弥」 「…………あれ、あたしは?」 「的」 「ふざけんなー!」 「ぎゃあっ! この野郎、不意打ちで背中とはなかなかやるな! だがサバイバル祐ちゃんの名は伊達じゃなうおっ!」 隙あり、とばかりに連射してきたのは一弥だった。 俺は振り向き、追いかける。逃げる一弥は本当に、心の底から楽しそうにしていた。 かけっこが始まる。 そういえば昔からだったが、舞の運動神経は半端なかった。 その優秀さは鬼ごっこに留まらず、水鉄砲の打ち合いでも存分に発揮される。 当然ながらまいも(むかつくことに)動きが良く、俺はとにかくやたらめったら背中から撃たれた。 佐祐理さんはというと俺の想像を力一杯オーバーした機敏さで、なんか結局、的になってたのは俺だった。 若干ぎこちないながら一弥も上手く、襲撃を避けられることは一度や二度では済まなかった。 水の補給中に狙われたり、また逆に狙ったり。 乱立する麦穂を利用した回避法を舞が編み出したり。 一弥に後ろを取られ振り向いて避けようと思ったら何も持っておらず、二丁の佐祐理さんに散々濡らされたり。 最終的にぐったりと疲れ果て、五人揃って仰向けに倒れた。 決して嫌な疲れ方ではない。清々しい、充実した気怠さだ。 ついでに今更だが、舞のうさみみは黒でまいと見分けがつくようになっている。都合良いな。 「…………一弥。楽しかった?」 「うん。とっても。……姉さん、やっぱり凄いね」 「もちろん」 「祐一くん、情けなかったね」 「うっさいわ」 「…………祐一、可哀想」 「余計不憫になるわ!」 そんな温度差の高い会話を尻目に、陽が沈み始める。 終わりが来たらしかった。茜色の空が、黄金色の世界が、少しずつ薄れていく。 これで、一弥の体調も戻るだろう。 悲しい思い出は、楽しい記憶に塗り替えられる。 痛みが消えることはなくとも、それ以上に尊いものを手に入れたのだから。 風が色を流していき、後に残るのは白の空間。 夢はいつか覚める。そして待っているのは、生きていくべき現実だ。 空だった場所を見上げながら、俺達は手を固く繋いだ。 叶う限り、ずっと、そうであることを願って。 「……祐一さん。舞さん。まいちゃん。姉さん」 最後に、一弥は。 「僕は、ここにいたいです。…………いいですか?」 聞くまでもないことを確認した。 「当然だ」 八月、下旬。 未だ欠片も和らごうとしない暑さに辟易しながら、俺は傍らの麦茶を飲み干す。 「そろそろ夏も終わりか」 「ですね」 「秋は……どうするかな」 「暇があったら温泉巡りとかどうでしょう。あったまりますよ」 「んなおっさん臭いこと……賛成だ。あとで掛け合ってみるか」 「まぁ、姉さんなら間違いなく即答しますけどね」 「違いない」 倉田一弥。 俺達の新しい、家族だ。 こうして、少しだけ賑やかになった生活は、まだしばらく、このまま続きそうだった。 ということで、ぐだぐだなラストはともかく、『"まい"のいる生活+1』、これにて終了です。 いかがだったでしょうか。何だか全体的にはっちゃけっぷりが無印より足りない気はしますが。 でも、やっておきたいことはほとんどできたので作者としては満足です。 当初、このネタ……つまり、一弥の登場云々は無印連載終了時に思い浮かんだ軽いアイデアでした。 ただそれを書く機会が訪れず、頭の隅にぼんやりと残ったまま今に至り。 ふと「KanonSS久しぶりに書いてみようか」ってことでふわっと出てきたのがこのおはなし。 まい生活は私の中でもしっかり世界が確立できている貴重なものなので、有効活用しない手はないだろうと。 コンセプトとしては、まい生活内で解決していないふたつの問題をクリアすること。 舞に関してはゲーム本編で既に済んでます。となると、ふたつというのはまい、そして佐祐理さん。 困ったことにまいは舞と別の存在で(無印参照)、魔物が生み出された時点で分離しちゃってます。 つまり、あの時来なかった祐一くんのことをある意味待ち続けていたのですよ。 そして佐祐理さん。気づいたでしょうか、ところどころで彼女は『わたし』という一人称を使ってます。 佐祐理さん視点の時はそれで統一してますが、そうでない時も一部の会話で。 彼女は少しずつ、自分の仮面を剥がしていってます。しかし一弥の過去という呪縛がある限り、完全には叶わない。 ちゃんとその辺を消化する必要がありました。故のこんなシリアス展開w ちなみに、この後も佐祐理さんは一人称変えません。『佐祐理』って言い方に慣れてしまったらしくw けれど、その言葉に込められた意味合いは、もう全く違うのですね。ここまでやってみんな幸せになれました、という。 最後、補足程度に。 舞の力は願いを叶えるもの、ゲーム本編では『希望』と呼ばれてましたが、こちらでは若干アレンジ入れてます。 本質的には変わりません。でも結構自由度高くなってます。受け入れたから。 自分の願いはあんまり叶えられませんが、他人のものなら叶えやすく、必須条件は願いの意思が一定以上の強さであること。 特に大規模なものになると、意志の強さだけでなく時間も掛かります(時差?)。まいの実体化とかかなりきつい部類。 でも便利技だから割と適当。舞やまいの身体強化も可能。簡単なレベルなら。 麦畑の件に関しては、まいが"かつていた場所"へのゲートを開いただけというか。 一から創造するより楽だけど、それでもかなり厳しく。時間短縮の反動は体力、精神力の消耗。 結局事が済んでから川澄コンビは丸二日寝込んでます。まぁ、奇跡ってそんな安易過ぎちゃ駄目ですよね。十分安易だけど。 よし、これで語るべきことは全部。たぶん。 つーことで、平常のあとがきはこれで終わり。いつものに戻ります。 ……正直言っていい? 佐祐理「はい、どうぞ」 この状況であれだけ喋るのはものすごーく辛かったんだけど。 舞「………………心頭滅却」 いやね、何これ。起きたら手足縛られて逆さ吊りってどこの拷問ですか。しかも皆さん何その格好。 佐祐理「駄目ですよー、必要最低限の発言しか被告人には許されてません」 って私被告人か! つまりこれ裁判!? じゃあ舞は? まいは? 佐祐理さんは? 一弥はどの役割? まい「あたし検事ー」 一弥「僕は弁護士です。被告人側の」 舞「…………裁判長」 佐祐理「佐祐理も弁護士ですよー。被害者側の」 なるほど。それはいいんだけど舞さん、槌がちょっと大き過ぎゃしませんか。 舞「……釘も持ってる」 私光になりたくありません。呪われるのも勘弁です。 舞「…………これより、裁判を始める。佐祐理、前へ」 佐祐理「はーい。罪状を並べ立てますね。被告人はかくかくしかじかでその罪はもう死んでくださいって重さであります」 いやちょっと待って! 色々とすっ飛ばし過ぎでしかも理不尽ー! 佐祐理「知りません。ではまいちゃん、細かくひとつずつどうぞ」 まい「まず被告人はあたしをぞんざいに扱い、そのせいで出番少ないし損な役回りばっかでした。だから死刑」 結論早い! つか何さ! ちゃんと最後にいいとこ持ってったじゃん! 舞「……被告人側、何かありますか」 どう一弥、反論とか用意してないのか。 一弥「全部そちらで言っちゃいましたから」 マ ジ か 。 舞「……まい、続けて」 まい「さらに舞にはセクハラを敢行し、あまつさえそのいたいけな心を力一杯踏みにじった感じでもう死刑」 うわー。もう諦めた方が良さそうー(遠い目) 一弥「反論、ありません……」 まい「さらにさらに、佐祐理の持ち味を見事に殺し、一介の悲劇のヒロインに仕立て上げようとした罪はどうしようもないので死刑」 あー、頭にすっげえ血が昇ってきたー。いやむしろ下りてきたのかー。 一弥「っ、被告人は、それでも精一杯頑張りましたっ。情状酌量の余地がありますっ」 いいんだよ、一弥、そんな頑張らなくて……健気でいい子だけど。 佐祐理「裁判長、判決をお願いします」 舞「死刑」 そこ即答か!(ツッコミの血が騒いだらしい) 佐祐理「ということで、連行お願いしますねー」 黒服一同「イエッサー!」 私と主要メンバー以外の表記初めて見たよあちょっと待ってそのまま引っ張らないでマジ痛いから――― ぁ(フェードアウト) 佐祐理「邪魔者もいなくなったところで、そろそろ終わりですねー」 一弥「姉さん、ちょっとは手加減してあげてね……」 佐祐理「一弥は優しいねー。でも大丈夫、あれはちょっとやそっとじゃ死なないから」 まい「あ、そうそう、番外編一個は書くらしいから、しばらく待ってね。主役は一弥と祐一くんだよ」 佐祐理「関係ないですがこれでハーレムじゃなくなりましたよね。男女比2:3で」 まい「何だか一弥はあんまり男として見られてない気もするけど」 一弥「………………」 佐祐理「ほら一弥ー、いつかいい人見つかるからー」 まい「こんな感じで最後まで締まらないけど、あたし達はずっとこのペースだし」 佐祐理「はい、いい意味で、変わることはないんです。それじゃ一弥、締めの台詞任せちゃうよー」 一弥「う、うんっ。えっと、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。いつか会う時が来たらまたよろしくお願いします」 舞「…………これにて閉廷(槌を振り下ろす)」 ……何か今遠くで凄まじい破砕音が聞こえたような。……え? この裁判所あと二分で爆発? んなオチありかっ! に、逃げっ その後、作者の姿を見たものはいたとかいないとか。ホント締まらないね。 |