朝。寒さで目が覚めた。 冬だから寒いのは当たり前なんだけど今日はいつもより寒い。 とりあえずベッドから降りて、カーテンを開いた。 見えたのは白に染まった外の世界。 雪が降っていた。 「とけないもの」 着替えて、一人で食堂へ行く。今日は休日だからのんびりいっても構わないんだけど、寒くて二度寝する気にはなれなかった。僕が起きた後珍しく真人も起きたんだけど、一緒に行こうって誘ったら、 「寒さで筋肉達の動きが鈍いんだ…理樹、暖機運転しとくから、先に行ってくれ!」 と言いながらベッドで腹筋を始めてしまった。いつまで暖機運転するつもりなんだろう…? 早い時間なので生徒は少ない。朝の定食を受け取って、席へ向かった。椅子に座って、さっそく朝食を食べていると、クドがやってきた。 「ぐっどもーにんぐなのです、リキ!」 なんだか楽しそうだ。 「おはよう、クド。来るの早いね。寒くて目が覚めちゃった?」 「いいえ、昨日天気予報で明日は雪ですよ〜って言ってたので、目覚ましを朝早くにせっとしたんです」 「なるほど…クドは雪好きなの?」 「はいっ、大好きです!」 「そうなんだ」 「雪、けっこう積もってますね」 「そうだね。まだ降るのかな?」 「予報では、夜まで降り続けるらしいですよ」 「じゃあ、もっと積もるね」 クドと二人でそんな事を話しながら窓の外を眺める。 雪の積もった外は、なんだか知らない場所のように見える。 「リキ、良いこと思いつきましたっ」 「何?」 「雪だるま作りましょう!」 と、いうわけで。 僕は今中庭にいる。芝生内の木の下でクドを待っている。 提案に僕が賛成するとクドはすぐに朝食を食べ終えて、 「中庭で待っててくださいっ」 と言って食堂を飛び出した。僕も急いで朝食を食べ終えた。手袋を取りに一旦寮へ戻る。するとそこでは真人がまだ腹筋…いや、暖機運転の真っ最中だった。 「お、理樹。帰ってくるの早いな」 「真人…いつまでそれやるの?」 「そりゃあ、オレの筋肉達が暖まるまでさ」 「もう十分でしょ…」 真人はすっかり汗だくになっていた。朝食も摂らずになんでこんなに運動できるんだろう…? そんな事を考えつつ手袋を取る。 「理樹、どっか行くのか?」 「うん、ちょっと学校に」 「そうか。筋肉持ってくか? 風避けになるぜ?」 「いやいや、筋肉は外れないから」 そんなツッコミをして、寮から出たんだけど。 「クド遅いな…」 僕より早く食堂からでたのにどうしたんだろう? ちょっと心配になってきていると。 「リキ〜、おまたせしました!」 遠くからクドの姿が。僕は木の下から出る。その隣にはストレルカがいた。…あれ? 「クド、ヴェルカは…」 どうしたの? と聞こうとしたその時。 ひゅんっ! 「うわっ!」 目の前の雪の中から白い物体が飛び出してきた! とっさに避けたのはいいけど、雪に足を取られて僕は見事にこけてしまった。 「リキ! 大丈夫ですか?」 「なんとか…」 雪が積もっているおかげでケガはないけど全身雪まみれになってしまった。 「さっきのはなに…?」 「ヴェルカです」 「え…?」 さっきの白い物体をよくよく見てみると、確かに雪まみれのヴェルカだった。 「びっくりした…」 「ヴェルカは小さいから、ここに来るまでの間にすっかり雪だるまになってしまいました」 そういいながらクドが芝生内に入ってきた。もちろんストレルカも。 確かにこんなに雪が積もっているんだ、小さいヴェルカじゃ歩くというより雪の中に潜ってしまうだろうな…。 クドはひょいとヴェルカを持ち上げて雪を払い、ストレルカの背中に乗せた。 「ストレルカ、ヴェルカが落ちないように気をつけてくださいね?」 「ワンッ」 ストレルカの一吠え。どうやら了承してくれたみたいだ。 「じゃあ、作ろうか」 「はいっ」 とりあえず、僕が体、クドが頭を作るという事になった。小さな雪玉を作って転がす。しばらくしたら形を整えてもう一回転がす。それを何度も繰り返す。 「クド、どれくらいの大きさにしよっか?」 「んーそうですね…じゃあ井ノ原さんくらいのを」 「いや、それはさすがに無理じゃないかな…」 そんな事を話しながら作る。 なんだか、幸せだ。雪は冷たいけど、こうしてクドと一緒に何かをしているとそんな事は気にならない。だけどクドを見ると、何故か表情が少し曇っていた。手も止まっている。 「クド?」 「わふっ!? すみません! ボーっとしてました」 「どうしたの?」 「いや、その…なんといいますか…あはは」 クドはそう言うと、雪玉づくりを再開した。 なんだか気まずい沈黙が続く。クド、どうしたんだろう…? 「リキ…話を聞いてくれますか?」 急にクドが言った。 「…いいよ。何?」 「さんきゅーなのです…じゃあ、話します」 そう言って、クドは少しずつ語り始めた。 「今、わたしはとても幸せです。 リキや、リトルバスターズの皆さんと一緒にいろんな事をして毎日が楽しいです。 でも、たまに…ほんとにたまになんですけど、ちょっとだけ不安になるんです。 いつかこの幸せは終わってしまうんじゃないんだろうかって。 そんな事を考えていると、急に寂しくなって… 怖くなって……なんだか自分でもよくわからなくなるんです」 「さっきはそれを考えていたの……?」 「はい…」 そう言うとクドは俯いた。 「幸せだからこそ、怖いんです……」 今は幸せ。だからこそ、それを失う時の事を思うと不安でたまらない。 僕にはクドの言いたいことがなんとなくわかった。 僕はゆっくりと近づいて、そっとクドを抱きしめた。 「わふっ!? リ、リキ…」 「大丈夫だよ、クド」 僕はゆっくりと言葉を紡ぐ。 「たぶん、いつかは皆離れ離れになってしまう」 「……そうですね」 「でも…思い出は無くならないよ。皆で過ごした日々の思い出は」 「そう……なんですか?」 「そうだよ…ほら、雪だるまといっしょだよ」 「?」 「ほら、雪だるまだって、いつかはとけてしまうでしょ? でも、僕らは雪だるまを作ろうとしている。 いつかとけるのをわかっているのに、それでも作ろうとしている。 ……それはさ、思い出を作ろうとしているんだよ。 二人で協力して、作ったっていう思い出を。 それと、いっしょなんだよ。 ……形は無くなってしまっても、思い出や、絆は、絶対無くならない。 ……だから、大丈夫だよ、クド」 そう言いながら、そっとクドの頭を撫でる。亜麻色の髪はすごく綺麗だ。 「わふ……リキはやさしいのです」 クドが体の緊張を解いた。そしてゆっくりと顔を上げた。そして、 「リキっ!」 「わっ!?」 僕に飛びついてきた。僕はバランスを崩して、またこけてしまった。クドと一緒に。 「リ、リキっ? すみません! 大丈夫ですか?」 僕の上にクドが乗っている。 「うん、大丈夫だよ、……安心、した?」 「はいっ、さんきゅーなのです!」 「そっか、よかった。…ははっ」 「どうしたのですか? リキ?」 不思議そうな顔をするクド。 「クド、雪まみれだよ」 「あ…でも、リキも雪まみれですよ。あははっ」 「ほんとだ。はははっ」 「あははっ」 お互い笑いあう。クドの顔から不安はすっかり消えていた。 「じゃあ、作りましょうか、思い出」 「そうだね」 「目指せ井ノ原さんサイズ! なのです」 「いやいやいや、それは無理だから……」 そのあと、雪だるまは無事完成した。 真人サイズは無理だったけど。 でも。 とても大きな思い出ができた。 雪だるまはとけても。 思い出は。 とけることはない。 永遠に。 おしまい。 (あとがき) はじめまして。アホ中学生のユウヤという者です。 今回書いたこれが初めて書いた作品です。 しかも私立高校一般入試五日前に書き終えたものだったりします。 ……勉強しろよ俺。_| ̄|○ 初めて書いた自分の下手な作品を最後まで見てくださいましてありがとうございました。 誤字・脱字・表現間違いなどなどいろいろ変なところがあるかもしれませんが、許してください。 専用掲示板にじゃんぷですー |