学食から教室に戻るとクドと来ヶ谷さんが一緒にいるのが見えた。 来ヶ谷さんが入り口近くにいた僕に気づき、クドに何かを告げる。 するとクドはこちらを振り向いて僕のほうに駆け寄ってきた。 「リキー、お願いがあるのですが」 背が低いクドは、僕と目を合わせる時どうしても上目遣いになってしまう。 「どうしたの?」 「私のルームメイトになってくれませんか?」 〜もし、○○が能美クドフャフカのルームメイトだったら〜 午前の授業が終わり、僕は真人と謙吾と一緒に食堂へ向かう。 鈴はどうやら他の皆と一緒にいるようで、今日はいなかった。 あっちはあっちで楽しくやっているみたいだ。昔の鈴からは想像もつかない。 学食に着くと恭介が席を確保しているのが見える。 とは言ってもいつもの場所なんだけど。 「ん? 鈴はどうした?」 「今日は他のみんなといるんじゃないかな」 「そうか…」 みんな好き好きの昼食を選んで持ってくる。 そしてご飯を食べながらいつものように談笑。 「最近は人数が増えて賑やかなことなんだが、昼飯の時は物悲しいぜ」 「放課後はみんな自然と集まるけど、お昼は集まらないよね」 「まぁ、女同士というものは色々あるのだろう」 「女ってのは、つるむのが好きだからな」 「僕たちも人のこと言えないけどね」 「ははっ、その通りだ」 僕らは子供のころからずっと一緒だったというのもある。 ずっとこのままでいたい、そう思っていたこともあるけど、実際はそう言ってはいられない。 来年恭介は間違いなくここから去ってしまう。 ……ご飯食べてるのに何でこんなにしんみりしてるんだろ。 ふと真人を見ると、既に食べ終わってる様子だった。 あまりしゃべってないと早いな… 「よし、腹ごなしに野球でもするか」 「そうだな、付き合おう」 謙吾も食べ終えていた。二人とも元気だなぁ。 「理樹と恭介はどうする?」 「まだ食べてる途中だからね……遠慮しとくよ」 「俺も止めておく」 「なら仕方ないな。真人、いくぞ」 「おう」 そう言って二人は食器を片付けてから学食を出て行った。 「あいつらも大きな喧嘩はやらなくなったな」 「謙吾が変わったのが大きいね。完全にネジ外れてるし」 「真人は相変わらずだが…そこがあいつのいいところか」 「もしかしたら、僕たちの気づかないところで変わってるのかも」 「理樹にわからないなら、俺にわかるわけないな」 ルームメイトで、という意味だろうか。 まあ、そんなことやっている内に僕と恭介も昼飯を食べ終える。 「恭介はこれからどうする?」 「今日は先約があるからな。自分の教室に戻るとするぜ。理樹は?」 「僕はやることがないから普通に戻るよ」 「そうか。ま、ここに残ってもやることがないからな、俺たちも行くか」 「そうだね」 僕達もさっきの二人と同じように学食から出ることにする。 「じゃ、放課後な」 で、恭介と別れて……教室に戻ったらクドが、 「私のルームメイトになってくれませんか?」 なんて言うものだから僕は一体どうしちゃったらいいのさ。 これは告白と受け取っていいのか僕が有頂天になってるのか、まずそもそも男女が毎日一緒の部屋で過ごすなんてダメだろう。 「ダメでしょうか?」 はっ、あまりの出来事に回想してしまった…… 「ダメと言うか……僕男だからね?」 「……はっ、そうでした。ごめんなさいです。来ヶ谷さんと話していると、まるでリキが女の子であるように聞こえてしまって……」 少し頬を染めながら話すクド。元凶は来ヶ谷さんか…そうだよね…クドの口からそんな大胆な発言が出るわけがない。 そして僕は、いつの間にかクドの隣にいた来ヶ谷さんに目を向ける。 「ちぃ、うまくいくと思ったのに」 「いくわけないからね、って一体クドと何を話してたの!?」 「何、理樹君が如何に女の子なのかを赤裸々に語っただけだ」 「そんな訳のわからないことやらないでよぉおおおお!」 この人の考えていることは本当にわからない。いや、知りたくもない。 何さ…確かに僕は真人とか謙吾とか恭介に比べれば男らしくないさ……でも女子じゃないよ…… 自信無くなってきた…… 何を話してたんだっけ……ああ、 「ルームメイトって言ってたけど、まだ決まってないんだ」 「手続き等はすべて済ませたのですが、肝心のルームメイトさんが見つからないのです」 受験生は受験に忙しい時期。 それに来年受験生の僕らにとっては一人部屋がいいと言う人は多いだろうし、探すのは難しい。 「リトルバスターズのみんなに頼んでみたらいいんじゃない?」 「うむ、だから理樹君を勧めておいた」 「なんでそこで僕が出てくるのさ」 他にも候補はいっぱいいるし、女子寮は男子禁制でしょ……ちょっと入るだけならどうにかできるんだけど。 それに女の子と相部屋なんて不可能……なんだけどこの来ヶ谷さんだからなぁ。 「わからないのなら教えてやろう。それはだな……」 〜もし、直枝理樹が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 朝、目が覚めると理樹君とクドリャフカ君が目を合わせる。 「あ…おはよう、クド」 「おはようございます、リキ」 どちらも笑顔で朝の挨拶を交わす。 ふたりともほんのり赤く頬を染めているところが、うん、最高だな。 まるで新婚の夫婦のようだ。 「朝ごはん、準備しますね」 「あ、僕も手伝うよ」 そして一緒のベッドから起きて朝食の準備をするふたり。 …………は? 一緒に寝るなんて当然じゃないのか? 理樹君は主に色々並べ、クドリャフカ君は台所に立つ。 エプロンをつけたクドリャフカ君の姿はもうアレなほど可愛い。 「味噌汁とご飯並べたよ」 「ありがとうございます。あ、まだ時間がかかるので、待っててください」 「じゃトイレにでも行ってくるよ」 と台所を後にする理樹君。キミはこの後ろ姿をみてなんとも思わないのか? ……何、見えない? 心の目で捉えるといい。 「〜♪」 全く鼻歌なんか歌いながら食事を作るちっちゃくて可愛い後ろ姿は反則だろう? 準備が終わったところで、テーブルの上に色々なおかずを並べていく。 クドリャフカ君のお手製玉子焼きは絶品だぞ。今度理樹君も食べさせて貰うといい。 もちろん口移しでな。 ……なんだ、こんなにおいしいシチュエーションなのに不満か。 まあ、それよりもいっそ自分をテーブルにならべて…… 『リキ、私が今日のおかずです。どうぞ……』 とか言っちゃってくれたらもうやっちゃうしかないだろう。やってしまえ理樹君! 私も参加したいのは山々なんだが遠くからじっくり眺めることにするよ。 服装は王道だが裸にエプロンというのはどうだ? おねーさんは大歓迎だ。 『わかったよ……クド…』 『わふーっ』 その台詞と同時に獣の如くクドリャフカ君に襲い掛かる理樹君。 クドリャフカ君が作ったおかずに目をくれずにクドリャフカ君という素材を調理しようとする。 そしてあんなことやそんなことをやり続け…… ぐはぁっ。これ以上はもうおねーさん死んでしまいそうだよ…… ―――――――――――――――――――――― 「ということだ」 「なるかぁぁぁぁああああああ!!!」 「わ、わふー……」 頭どっか逝っちゃってるんじゃないかこの人は! クドはクドで真っ赤になってるし……嬉しいことには嬉しいんだけど、でもこれはどう考えたって…… 「ふむ、ダメか?」 「まだ僕たち高校生だし、それとルームメイトの話だからね。なんで同棲生活してるのさ!? そして来ヶ谷さんの中で僕はそういうキャラなの!?」 「だってそのほうが楽しいじゃないか」 「あああああの、その、えと、わ、私はー、私は大歓迎ですよっ」 「クドも乗らないでよ!」 「リキと一緒に生活なんて……まだ早いといいますか…いえ、早いに越したことはないです。私のルームメイトになってくださいっ」 「む、こちらのほうが効果が高かったか」 「絶対わざとやってるよね!?」 「いやいや、そんなことはない」 と言いつつも全く変わらず余裕の表情。 クドはさっきから独り言をつぶやいている。内容は怖くて聞けない…… 例えクドと一緒に生活するとしても、あんなことには…なら…… ……いやいやいや、そうじゃなくて、 「全く…だったら来ヶ谷さんがクドとルームシェアすればいいじゃないか……」 その台詞を言ったと同時に、獲物を狩る狩人の如く来ヶ谷さんの目が光る。まるできゅぴーんと効果音がでているかように。 いや、怖いから。クドは僕の方を向いているので、その後ろにいる来ヶ谷さんは見えていない。 クドが今の来ヶ谷さんを見たら卒倒するだろう。 「少年、キミは私にどうしろと?」 「ただクドのルームメイトになってあげれば…」 「いいか、私がクドリャフカ君と一緒になってしまったらだな……」 あまり知りたくなかったけど、既に手遅れ。 来ヶ谷さんは自分の妄想を話り始めた。 クドに聞こえてないといいんだけど…… 〜もし、来ヶ谷唯湖が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 まず一緒にお風呂に入ることにする。 ……これだけで危ないといわれるのは心外だな。こんなのはまだ序の口だ。 「クドリャフカ君、背中を流してやろう」 「ありがとうございます〜」 そしてクドリャフカ君のキメ細やかな肌と、白いうなじ、そしてエロティックな背中を舐め回すように見る。 密室の風呂場。そこにいるのは私と魅力的な少女。 当然私のとった行動は。 「わふっ、一体何をするのですか、来ヶ谷さん」 「こんな綺麗な体を目の前にして襲わずにいられるか」 「や、止めてくださいっ」 「さぁさぁさぁ、私が体の隅々まで洗ってやろう」 「わふーーっ」 まぁご想像にお任せしよう。ふふふ…… 次にお風呂上りに髪を乾かすクドリャフカ君。 私も隣で同じ行動をとる。 実に…実にいい。亜麻色の長い髪が色々とそそる。 「……来ヶ谷さんのおっぱいは大きいですよねぇ」 「そうだな。大きいほうだろう」 「私も来ヶ谷さんのようになれるでしょうか?」 「実はとっておきの方法があるのだが…」 「え!? そんな方法があるのですか! 是非教えてくださいっ」 「髪を乾かした後でいいだろう。痛んでしまう」 今すぐにでも襲ってしまいたい衝動を抑える。 女の子の髪は大事だからな。大切に扱ってやらないとな。 「終わったか? なら目をつぶってそこに立つといい」 「はい、わかりました」 私はクドリャフカ君が目をつぶったのを確認し、真正面に立つ。 ふむ……ここからどうしたかは各々方にお任せするか。 最後にクドリャフカ君が眠ってから。 ……ここでやっちゃう以外の選択なんて存在しないが? そうだな。今の状況を説明しよう。 クドリャフカ君はいつもと同じ、ピンクを貴重としたドロワーズを着ている。 ええい、布団が邪魔だな。少し寒いだろうが後で私が直接暖めてあげるとしよう。 布団を剥ぐと赤子のように背を丸める格好ですーすーと小さな寝息を立てながらクドリャフカ君は眠っていた。 やはり寒いのか、すこし震えながらさらに体を丸める。その仕草がなおさら可愛さを増加させている。 見てるだけでも十分に満足できる状況なのだが、やはり触ってこそだろう。 クドリャフカ君の隣で一緒に寝ることにしようか。ここなら後ろからすぐ襲える。 そしてその状態から、クドリャフカ君の服に手を入れておっぱいを…ん? ブラはあるのかええい邪魔だ。 ほぅ……思ったとおりまだまだ成長段階だな…将来が楽しみだ。 「…んっ……すぅ……」 このまま喘ぐ声を出させるのもいいかもしれないな… そのままクドリャフカ君の下半身に手を入れて例の部分を……… ―――――――――――――――――――――― 「って来ヶ谷さん一体どこまでやるつもりなのさ!? もう変人の域脱してるよっ! そしてクドなんか教室の隅でずっと震えてるし、止めてあげてよっ。いやむしろ止めてください」 「おっと、少々取り乱してしまったようだ」 「これを少々と呼べるのがすごいね……」 もう付いて行けない。というか聞いているこっちが恥ずかしいし対象とされたクドはもう…… 寝ているという最も無防備な状態で何かされると知ったら寝るに寝れなくなるよ… 僕らはあまりの恐怖に離れ、頭を抱えて座りこんでいるクドを迎えに行く。 「ほら、クド。大丈夫だから……」 「く、来ヶ谷さんと一緒のお部屋はーーー、え、遠慮しますですーーー」 裏返ってるんだか掠れてるかわからない声でクドが答える。 「うむ、そうしてくれないと私の体が持たないからな」 はっはっは、と笑う来ヶ谷さん。シャレになってない。 来ヶ谷さんが持たないというより、クドの方が大変なことになる。 この二人は一緒にしちゃいけないな。 ……きっと鈴ともダメだろうな…おもちゃにされそう。 鈴……か。 「鈴とかどう?」 「鈴さんですか……」 「前は難しかったと思うけど、今度は大丈夫だと思うよ」 今の鈴ならきっとうまくやっていけるはずだ。 すると、どうやら復活したらしいクドが語りはじめた。 〜もし、棗鈴が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 移動するのは……きっと私でしょうね。 私の新しい部屋、鈴さんの部屋で荷物を整理することにします。 主に私の荷物ですけど。鈴さんにも手伝ってもらっています。 最初は全然うまくいきませんでしたが、今度こそいっぱいお話をするのです。 「これは……ふりすびー?」 「あ、それはストレルカとヴェルカと遊ぶのに使うのです」 二人ともこの学校に来ると聞いて送ってもらった遊び道具。 幼い頃は色々なもので遊んだものでした…… 「なにぃ? これを投げるととってくるのか?」 「はい、空中きゃっちが得意なのですよ」 「すごいな…あたしの猫はそんなことできない」 「鈴さんの猫さんは何をして遊んでるのです?」 「色々だ。あいつら飽きっぽいからな…同じのは続かない」 「そうなのですか」 「けど、そこが可愛い」 「ストレルカたちも可愛いですよ」 「そうだな……でも、あたしの猫のほうが可愛い」 「猫さんも可愛いですけど、私の犬さんたちのほうが可愛いです」 猫さん派と犬さん派は相容れないものなのでしょうか? でも仕方ないのです。ぶつかりあうこともあるのですっ。 「いや、猫だ」 「犬さんです」 「猫だ」 「犬さんですっ」 「猫だっ」 「犬さん!」 「猫!」 「犬さんのほうがわふわふで可愛いのですっ」 「なにぃ、猫だってゴロゴロにゃーにゃーで可愛いんだぞっ」 「わふーーーっ」 「ふかーーーっ」 バンッ 「クドリャフカ! 棗鈴! 五月蝿いわよ、少しは周りの寮生のことを考えなさい!」 ―――――――――――――――――――――― 「ごめんなさいです……」 「やっぱりダメかな」 「喧嘩できるほど、鈴君との仲が良くなったということだろう。喜ばしいことじゃないか」 「そうだね、前の鈴だったら会話すら成立しなかったし」 「でも犬さんは譲れないのです」 犬派、猫派。こだわりというのはあるのだろう。 動物好きには変わりないのだけど……どっちも可愛いならそれでいいという考えは甘いのだろうか。 「最後に二木さんが出てきたけど、二木さんはどうなの?」 「佳奈多さんですか? 佳奈多さんと一緒だったら……」 ストレルカやヴェルカ達と一緒に風紀委員の仕事をしてるから仲がいいのだろう。 ……僕はあまり得意じゃないんだけどね。 〜もし、二木佳奈多が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 「ふぅ……」 「あ、おかえりです、佳奈多さん」 私が宿題をやっていると、佳奈多さんが帰ってきました。 「ただいま、クドリャフカ」 「今日も遅くまでご苦労さまです」 「いつものことよ」 そう言って、佳奈多さんはカバンを机の上に置くと、うつぶせにベッドに倒れこみました。 「疲れましたか?」 「ええ、今日は特にね」 本当に疲れてるせいか、声にも中々元気がありません。 私は宿題を書く手を止め、佳奈多さんの背中に馬乗りになります。 「マッサージ、しましょうか?」 「遠慮してもやるんでしょ?」 「はい」 「じゃ、お願いするわ」 嫌々ながらもおーけーを貰い、マッサージをやり始めます。 佳奈多さんは全然素直じゃないですから…… 「あ…そこ…気持ちいい……」 「ここですか?」 「えぇ……上手ね……」 「そうですか? ありがとうございますっ」 佳奈多さんは風紀委員長ということもあって、デスクワークが多いです。 姿勢が固まってしまいますからコリがすごいことになってますっ。 「風紀委員のお仕事は大変ですか?」 「それなり……にね。あの子がもっと静かにしてくれるといいのだけど」 葉留佳さんと佳奈多さんが姉妹ということがわかってからというもの、その皺寄せが佳奈多さんに来てるみたいです。 「でも…楽しそうですね」 葉留佳さんと前のように喧嘩することが無くなりました。 私には……二人とも明るくなったように見えます。 少し間があいてから答えが返ってきます。 「そんなことはないわよ……」 予想通りです、素直じゃないです。でも…もっと素直になっていただけると、私は嬉しいのです。 しばらくマッサージを続けます。 「佳奈多さん、」 「…………」 「佳奈多さん?」 「すぅ……」 いつの間にか眠ってしまっちゃいましたね。 横から覗くと…寝顔がかわいらしいです。だらけきってますっ。 結構時間が経ってしまいました。そろそろ宿題をやらないと。 「おやすみなさいです。ぐっどないと……」 ―――――――――――――――――――――― 「こんな感じでしょうか」 「これは中々興味深いな」 今までの候補の中でもっともまともだ。 ……よく考えれば異常なのは来ヶ谷さんだけか。 来ヶ谷さんの方を見ると……この満ち足りた顔は何だろう…不安になる。 クドも二木さんに好意を持ってるみたいだし大丈夫じゃないかな。 僕らと遊ぶのを止められるかもしれないのがちょっと気にかかる…… 「二木さんにお願いしてきたら?」 「それでもいいが、私たちだけ考えて理樹君は何も考えていないのは腹立たしい」 「そうです。リキも誰か考えてみてください」 「誰かって言われても……」 これやらなくちゃいけないのかな。 クドと上手くやれそうな人か。うーん…… 無難に… 「小毬さんとか」 「小毬さんですか。それはとっても楽しくなる気がしますっ」 「くっ、なんて天国なんだ……私と交えて三人部屋でいいじゃないか」 とりあえず来ヶ谷さんは放って置こう。 〜もし、神北小毬が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 「クーちゃん、お菓子食べよー」 「あ、ありがとです。では、紅茶を入れてきますね」 最初はこんな感じかな…… 「今日は何食べよっかなー」 とか言いながら、小毬さんは部屋にあるお菓子を選び始めた。 小毬さん色々食べるからなぁ…… そしてしばらくしてクドは紅茶を持ってくる。 「どうぞ、熱いので気をつけてください」 「ありがと〜。では、ワッフルでもどうぞー」 「ありがとうございます」 「よーし、食べよー」 といって二人はワッフルを食べ始める。 場には既にたくさんのお菓子が広げられてるわけだけど。 「ぽっきーとクッキーもあるよ〜」 「ありがとうございますー」 『ぽっきーゲームでもする?』 『是非やりましょう、小毬さん』 ちょっ、来ヶ谷さん、変なの付け加えないでよ! …………やらないからね! 「これもどうぞ。この間おじい様から送っていただいたお饅頭です」 「ありがと〜。クーちゃん和菓子好きだよねぇ」 「はい、でもお菓子なら大抵は好きですよ」 「私も大好き〜。でも苦いのと辛いのはダメだねぇ」 「少しなら大丈夫なのですけど」 「ふぇ〜クーちゃんすごいね〜。私には無理だよー」 「きっと私達以外は大丈夫なんでしょうね……」 二人とも残念そうな顔をする。 小毬さんもクドも刺激の強いの苦手なんだよね。 あと鈴も辛いのとかダメだったなぁ、真人は少しでも苦いのダメだし。 苦いのが好きそうなのって来ヶ谷さんと謙吾かな? 「小毬さんは胸焼けとかしないのですか?」 「えぇ〜、私だってするよ〜。いくらおいしくても、気持ちわるくなっちゃうぐらい食べちゃったら悲しいですよ」 「そーですよねぇ」 「おいしいことは幸せ。みんなと食べるともっと幸せ」 「一人より二人のほうが断然たのしいのですっ」 二人より三人、そしてどんどん輪は広がっていき、僕たちの場合はリトルバスターズになった。 そういえば、僕が最初に誘ったのが小毬さんだったなぁ。 ……いやまあ、正確には話を聞いてもらったら小毬さんが入ってくれたんだけどね。 「ようしっ。そろそろお風呂に入ろうかな」 「あ、私もご一緒しますー」 「うん、じゃー一緒にいこー」 「はいっ」 きっとこの二人、毎日のように一緒にお風呂に入るのかなぁ。 ―――――――――――――――――――――― 「理樹君は二人のことをそんな風に見てたのか」 「来ヶ谷さんに比べたらいいと思う…」 「して、風呂場のシーンは?」 「そこまでやったら僕変態でしょっ」 「やっぱり楽しそうですー」 「でも小毬さんにはルームメイトいるんだよね」 「笹瀬川女史だな」 「そうなのですか、残念です……」 クドは心底残念そうな顔をする。 小毬さんは皆に好かれてるし、付き合いの良さもある。引く手数多だったんだろうなあ。 「来ヶ谷さん、どうしました?」 なにやら考えている(おそらくよからぬことだろう)来ヶ谷さんの表情を見て、クドが声をかける。 「いや、笹瀬川女史とならどうなるかとな……」 「それはとっても気になるのですっ」 クドは興味津々といった様子だった。 僕も気になる。いつも鈴と喧嘩してるところしか見たことないし。 「ふむ。では語ってやろう」 というか来ヶ谷さんは笹瀬川さんのことが詳しいのだろうか? 〜もし、笹瀬川佐々美が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 2007年、秋。とある学校の寮に笹瀬川佐々美という女の子がおりました。 彼女の今のルームメイトは能美クドリャフカ。 二人は一緒のお部屋におりました。 「笹瀬川さん、笹瀬川さん」 「なんですの? 能美さん」 「笹瀬川さんにこれをプレゼントです〜」 といって差し出したのはキーホルダーが付けられた二つの鍵。 能美クドリャフカはルームメイトのための鍵を持ってきたのでした。 「このお部屋の鍵です。犬さんと猫さん。どちらかお好きなほうをどうぞ」 「えぇ、ありがとうございます。そうですわね……」 笹瀬川佐々美は非常に迷っておりました。 動物はとても好きなほうなのですが、 (どちらが猫でどちらが犬なのかしら……) そう、どっちがどっちなのかあまりに微妙すぎたのです。 悩んだ末に笹瀬川佐々美は、 「ではこちらをいただきますわ」 おそらく猫っぽいキーホルダーを選びました。 「はい、どうぞ」 「わざわざ申し訳ありませんわね」 「いえいえー」 結局自分が選んだのが犬か猫かわからないままでしたが、笹瀬川佐々美は思いました。 (ひとつだけ…というのもなんだか寂しいですわね…) 次の日。 「能美さん。ちょっといいかしら」 「はい、何でしょう?」 「これを。どちらか好きなほうを差し上げますわ」 笹瀬川佐々美が持ってきたのは二つのキーホルダー。 デザインはそれぞれ犬と猫。 「わふーっ、とても可愛いですっ。どちらがいいでしょうかねぇ」 能美クドリャフカは少し悩んだあと。 「こちらにしますっ」 「ええ、どうぞ」 「ありがとうございますー」 犬のキーホルダーを選んだ能美クドリャフカは、早速自分の鍵にキーホルダーを付けました。 同じく、笹瀬川佐々美もキーホルダーを付けます。 これで二人の鍵についているキーホルダーは二つになりました。 「これで、二匹とも寂しくありません」 「ふふっ、そうですわね」 気に入ってくれたようで、笹瀬川佐々美の顔から笑みがこぼれます。 「おそろいですー、わふーーっ」 それを聞いて笹瀬川佐々美は確信しました。 (わたくしが昨日選んだのは犬のキーホルダーでしたのね……) ―――――――――――――――――――――― あれ? 来ヶ谷さんの割には普通だ。 笹瀬川さんって思ってたより……普段があんなキャラだからかな? 「いいキーホルダー仲間になれそうですっ」 「まあ、彼女には小毬君がいるから難しいだろう」 「そうだね」 けれどさっきの来ヶ谷さんの話はかなり意外だった……なんであれで鈴とはうまくいかないんだろう。 「他には…誰がいいでしょう?」 笹瀬川さんもダメだとわかると、クドは更に提案を求める。 ふと辺りを見回して目に入ったのは…西園さんのいつも持っている緑色の本。 それが珍しくも机の上に置かれていた。 あの本を置いていくなんて……一体どこに行ったのだろう? ちょっと気になる。 「西園さんとか?」 「美魚君か、部屋も近いしな。移動するのも楽だろう」 そして一人部屋だったはずだ。 前はいつも一人で本を読んでいたけど、最近はみんなと話したり、遊んだりしてる光景を見ることが多い。 ルームメイトが出来たらきっと楽しめると思う。 「どうかな、クド?」 「西園さんですかー…」 「クド?」 クドは何やら呆けた表情をしている。 「西園さんですか……」 〜もし、西園美魚が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 「能美さん、ちょっとこちらへ」 「はい、何ですか?」 と案内されたのはふぃあーたんすです。 ……あ、命名は私です。 この前ちょっと触れた時に、すごい勢いで本が出てきて…… 西園さんが助けてくれなかったらどうなっていたことか……がくがくぶるぶるです。 「この中にある本の整理を手伝って欲しいのですが……大丈夫ですか?」 「ついにやってしまうのですね……」 「えぇ、この前のようになっては困りますから」 「本が……本の波が……」 わああぁぁぁーーーわぁぁあああああーーーー …………ごめんなさい、でもあれはすごかったんです。 ……リキはわかってくれますよね? ……よかったです。 とにかくこの箪笥には本がいっぱい詰まっているのです。 西園さんはギシッ、ギシッと音を立てているタンスの扉に手をかけます。 「それでは、開けますよ?」 「はい、行きましょう。私の命に代えましても」 そして西園さんは箪笥の扉を開けました。 ええ、わかってました。わかってたんです…… 結局私が埋まることに何ら変わりはありませんでした。 「に〜し〜ぞ〜の〜さ〜〜ん。たーすーけーてーくださーーい」 「わたしもよくここまで詰め込んだものですね……」 箪笥からとめどなく溢れてきたたくさんの本は私の方へ向かって雪崩れ込んできました…… その前にいた西園さんはというと、さっと横に雪崩を避けていて被害はなかったようです。 西園さんって結構ちゃっかりしてますよねー…。 私は西園さんに手を引っ張ってもらい、本の山から救出されます。 「ありがとうございます、西園さん。べりーべりーさんきゅーです」 「いえ、私の方こそ手伝ってもらってありがとうございます」 西園さんはいつものようにぺこり、とおじぎをしました。 私も同じようにおじぎを返します。 さて、本を整理しましょう。本の山を捜索して大きさごとに本を重ねます。 色々な本がありますよねぇ、薄い本は軽くて楽々ですー。けれど、 「その本……興味がおありなのですか?」 「え?」 「お貸ししましょうか?」 西園さんが不敵な笑みを浮かべながらこちらを見ています。 怖いです……なんか危ないです…… 「お気持ちは大変嬉しいのですが、遠慮しておきますー」 「そうですか、残念です」 とりあえず避けておきます。そうしないといけない感じがします。 「非常に残念です」 「……」 あえて無言で本の整理をやり直します…… ―――――――――――――――――――――― 「一体何の本読んでるのかな…」 「きっと危ないのです…」 「私はあまり好きではないな。どうせなら逆のほうがいい」 来ヶ谷さんは何か知っているようだったが、何も言わないでおく。 何かを失ってしまいそうだ。 「話を聞いてる限りだと、西園さんはダメなのかな?」 「西園さんも本も大好きなので大丈夫です。ただ、あの雪崩だけは嫌なのです…」 もともとクドは背が低いから、簡単に埋まるだろう。 よっぽどのトラウマなんだなぁ。何故か僕も雪崩れる本を考えるとすごく怖い…… 「まあ、その辺は力のある真人少年や謙吾少年に手伝ってもらうといい。特に真人少年なら『強敵があらわれたんだ! キミの筋肉がひつようなんだ!』とでも言えばすぐにでもその力を発揮してくれるだろう」 「確かにやりそうだけどその台詞は何!? 遠い昔に聞き覚えがあるんだけど」 「井ノ原さんの筋肉はとっても頼りになりますっ」 筋肉が必要だといえば、真人はすごく喜ぶだろう。 毎日筋トレをしてながらそれが役立つ機会は不思議と少ないのだけど、野球とバトルでは溢れんばかりにその力を発揮している。 「ということで真人少年はどうだ?」 「いやいやいや、男子禁制だからね」 「想像するだけならできるだろう。理樹君がやるといい」 「僕がやるんだ……」 「部屋の半分がトレーニンググッズで埋め尽くされる気がしてきました…あれも重いのですよねぇ」 この前、僕が部屋に戻ったとき、クドと真人が筋トレグッズで遊んでたな。 真人基準が多いから、その対極に位置するクドが使えるものはほとんどなかった。 あの時はクドが英語の宿題をやりに来たんだっけ。二人でやっても進まないだろうしなぁ。 〜もし、井ノ原真人が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 クドは宿題を、真人はいつものように筋トレを始める。 「クド公、何やってんだ?」 「今日出た英語の宿題です……全くわからないのです」 「そうか、まぁがんばれよ。ふっ…ふっ…」 「って井ノ原さんも同じ宿題が出されてます!?」 「え? 後でクド公が写させてくれるんじゃねぇの?」 「ダメですよ。ちゃんと自分でやらないと」 「ちっ、仕方ねぇな」 「どうせなら一緒にやりましょう。そのほうが捗りますっ」 そう言ってクドは真人を勉強に誘う。英語が苦手ってのもあるだろうけど。 しぶしぶ真人はクドと同じ机の上に道具を広げ宿題をやり始める。 真人と一緒に勉強するのって、実は結構体力を使うんだよね。 「うぁぁ……頭がいてぇ」 「早すぎですっ」 真人は何かを考えることに関しては諦めが早い。 「れっつ、めいく、いんぐりっしゅ」 「英語を作んのか?」 「正確には英文です。英作文を作るのは難しいです……」 「俺はそんなの作るより筋肉を作ったほうがいいんだけどな……」 「筋肉を使った英文ならいいのでしょうか?」 「お、そいつはいいな。なんかカッコイイのを頼むぜ」 「って私が考えるのですかー」 真人に考えさせたらおそらく日が暮れるだろう。 宿題は早く終わらせないとみんなで遊べなくなるし、僕は率先してやってるんだけど。 ……真人一人だと宿題出さなくなるからね。 「まさと おぶたいんど ざ まっする おぶ ざ あいである。とかどうですか?」 英文というよりただの文だ。 「英文だとやっぱりしっくりこねぇな…いっそ筋肉レジェンドでいいか」 「なるほど……ではクライマックスマッスル、略してクライマッスル!」 「おおっ、なんか響きがカッコイイぜ」 とかなんとかやってるうちに話が脱線して行き、真人のノートには意味不明な筋肉英語が並んでいく… 誰か突っ込まないと永久に終わらなくなるだろう。 それでもこの場には天然ボケ役しかいない……当然。 「全然終わりませんでした……」 「ふぅ、明日にでも使える筋肉語が勢ぞろいだぜ……」 うん、でもそれ授業どころか日常生活ですら全く役に立たないからね。 ―――――――――――――――――――――― 「リキは……私のことをそんな風に見てたのですか……?」 「おーよしよし。おねーさんが慰めてあげよう」 「ゴメンナサイ……」 クドが涙目で僕を見た後、来ヶ谷さんに抱きつく。その瞬間来ヶ谷さんの顔がだらけた。 ゴメン、クド、真人。僕もまさかこんな風に見てるなんて思いもしなかったよ…… 「どうせ……どうせ……私は英語ができなくて、頭もよくなくて、井ノ原さんと一緒に『脳みそ筋肉なのです〜』とか言ってればそれでいい存在なんですなんですですす……」 「以後気をつけます…」 「真人少年の筋肉のペースに引き込まれてしまってはな、確かにクドリャフカ君では脱出するのは難しいだろう」 「だよね……」 あれじゃ誰も突っ込まないからなぁ…謙吾だったらそのまま突っ走る予感がする。 けど宿題はちゃんとやろうね…… 「あ、ごめんなさい来ヶ谷さん。制服、汚してしまいました…」 少しして、クドが来ヶ谷さんから離れて謝った。 「何、かまわんよ。どうせならもう少しクドリャフカ君の泣き顔を堪能していたかったがな」 僕は女の子をさらう犯罪が起きないように願ってるよ……。 「それはそれとして、ここまで来ると対にいる謙吾少年も気になってくるな」 「そうですねぇ。宮沢さんとはとても話が合いそうな気がするのですが」 「ふむ、では頼むぞ、理樹君」 「また僕なの!?」 確かにこの中で一番知ってるのは僕だろうけどさ。 謙吾とクドか…共通する部分は結構あるんだけど……難しいな…特に最近の謙吾なんて僕の予測できる範疇にいないからなぁ。 〜もし、宮沢謙吾が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 「宮沢さん、ちょっと聞きたいことがあるのですが……」 「なんだ?」 「なんでいつも剣道着を着ているのですか?」 毎日一緒にいると誰しも沸く疑問だろうなぁ。 でも、ずっと剣道着なのはこの学校に着てからだ。 「剣道着だけじゃない。リトルバスターズジャンパーもだ」 さらに今の謙吾はこうなっちゃってるわけで…… 「そういう能美だって、毎日同じマントと帽子を身に着けているじゃないか」 「これが一番お気に入りなのです。でも」 クドはそう言って立ち上がり、自分のクローゼットを開ける。 「うぉおおおおお、マントと帽子だらけじゃないか!」 「このように、同じものしかないわけではないのです」 「俺も負けるかぁああーー」 そういって謙吾も自分のクローゼットを開ける。 「わふーっ、リトルバスターズジャンパーだらけですっ」 「はっはっは、こんなこともあろうかと全員分を密かに作っておいた」 「でも、これ宮沢さんが着るわけでは…」 「む、確かにそうだな…」 「他のお洋服はあるのでしょうか」 「ないな」 「断言されましたっ」 「学校に行くにも、遊ぶのにも、この剣道着とリトルバスターズジャンパーさえあれば問題ない」 「でも学校でその格好は……」 「問題ない」 「そ、そうですか…」 有無を言わさない謙吾の言葉にクドがたじろいだ。 妙なところで頑固なんだよなぁ。 学校で制服なのは当然のことなのに…… ―――――――――――――――――――――― 「男の人ってお洋服はあまり持っていないのですか?」 「謙吾ほどじゃないけど、女の子からみると少ないかも」 「そういえば、来ヶ谷さんとリキの私服姿も見たことがないです」 「こっちで私服なんて着る機会が無かったからな」」 「僕は男同士で出かけるから制服だしね」 「そういうものなのですか?」 毎日着てるからしっくりくるというのもあるけど、男同士は暗黙の了解なのか制服だ。 多人数になったり、周りに私服、つまりは女の子がいるとみんながそれに合わせる。 女子で制服で出かける人ってあまりいないみたいだ。 「ここまで来ると恭介氏も欲しいところだな」 「また僕か……」 「リキ、かんばってください」 恭介とクド。クドが鈴みたいな扱いを受けそうだなぁ、実際そんな感じだけど。 〜もし、棗恭介が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 「さて、今日もいつもどおり夜となったわけだが」 「そうですねぇ……」 「何かやりたいことはあるか?」 「明日の分の宿題を……」 「それなら俺が後で教えてやる」 恭介の最優先事項は遊ぶことのような気がする。 「わ、わかりました。でも、他にやることがないです」 「やることならいっぱいあるだろ? 遊ぶとかエンジョイするとか、サタデーナイトフィーバーとか」 「全部同じですっ」 「まあ、そう固いこと言うなよ。さて、能美にはこの指示器をつけてもらおう」 5月ごろに、鈴に指示器をつけて野球のメンバーを探すっていうミッションをやったんだけど。 ……うん、全滅だったよ。 「何をするのですか?」 「無論ミッションだ。一人で夜の校舎に潜入せよ。ミッションスタート」 「いやなのですっ、夜に一人で学校に行くなんて嫌ですっ」 クドはいやいやと頭を抱えて首を振る。 「なんだよ、ノリが悪いな」 「暗いところは苦手なのです…一人も嫌なのです……」 「モンペチやるからやってくれよ」 鈴ならここで大抵折れるのだけど、相手はクドだ。 物でつるってのもどうかと思うけどね…… 「私は鈴さんじゃありませんっ」 「おっと、そうだったな……ならわんわん元気ゴールドでどうだ?」 「わふっ……」 臨機応変に対応する恭介。 「悩んだってことは脈ありってことか」 「それでも嫌ですっ」 「ヴェルカとストレルカ連れてっていいから」 「それなら……」 クドはそれを渋々承諾し、指示器をつける。 「よし、じゃあ行ってくれ」 「わかりましたっ」 結局クドは学校に向かったのだけど、学校についてしまってからあることに気づいた。 「って校舎内には2人とも入れません!?」 『行ってから気づくなよ』 ストレルカとヴェルカは基本的に校舎内には入れない。 「知ってたんですね……」 『そうでもしないと行かないしな』 「ひどいです……」 『さて、今からどうするか…』 「はい?」 『実は何も考えてない』 よくあるんだこれ、大体とっさの思いつきだから。 「私は何のためにここに来たのですか……」 『ま、試しにこの指示器がどこまで届くか、学校中をくまなく詮索してみてくれ』 「何故わざわざ夜になってから確かめるのですかーーーっ」 ―――――――――――――――――――――― 「確かに恭介氏ならやりそうな展開か」 「恭介にとっては部屋は狭すぎると思う」 「でも毎日ミッションはさすがに疲れるのです…けど、私には帰りを待つ二人の犬がっ」 人って動物には弱いのだろうか。それとも、鈴とかクドが猫や犬を愛してるからなのか… 2人のようになればおのずとわかるかも知れない。 「それで、誰にお願いするか決めたの?」 「みなさんいい人なのでどうしましょう……」 「まあ、誰とでも楽しいことに変わりはないだろうよ」 クドのルームメイトの候補を挙げていったのに決まらなくなっちゃったな。 しかも最後の方とか全然関係ないし。 「葉留佳君といれば、きっと寂しいことは無くなるか」 「寂しさはなくなるけど、きっと別のものが増えるよね」 「葉留佳さんの行動は全く予測ができませんっ」 「一緒の部屋だったらどうなるんだろう?」 「うーん、きっと……」 とりあえずクドが普通の生活すらできなくなる光景が容易に想像できる…… 〜もし、三枝葉留佳が能美クドリャフカのルームメイトだったら〜 「ただいまです〜」 お部屋の電気はついたままでしたが、中には誰もいませんでした。 葉留佳さんの事ですから鍵もかけずにどこかに行ってると思うのですが…… パチッ バタン 「わふっ。まっくらですー」 「ふぁっふぁっふぁ。ようこそ、三枝葉留佳の根城へ」 その台詞と同時に葉留佳さんが後ろから抱きついてきました。 「は、葉留佳さん。一体何をするつもりなのですかっ!?」 「これから貴様は……全身をくまなく擽られるのだーー」 「わ、わふー、ちょっと…止め…ひゃあああーーー」 こちょこちょこちょ 「いやっ、葉留佳さん止めっ、わふぅぅううーー」 「うーん、じゃ今日はこれくらいにしとこう」 やっと葉留佳さんの魔の手から開放されます……擽りは反則なのです… 「改めておかえりクド公」 「ただいまです…挨拶が手荒すぎです…」 笑いながら葉留佳さんはおかえり、といってくれます。 「これぐらいは普通だから。次を楽しみにするといいよ」 「毎回こんなことされたら私の体がもちませんー」 「まあ、そんな危ないことしないからだいじょぶだいじょぶ。首を洗ってまってなさい」 とかずっと葉留佳さんのペースに引き込まれそうです。 ……たまには私だって反撃してみせますっ。 「ずっとこんなことが続くようなら他の方のところにお泊りしてきますー」 「つれないナァ。じゃ私も一緒にいってあげよう」 「佳奈多さんの所ですよ?」 そう言うと、葉留佳さんの笑顔が固まりました。 「うあ……そこは止めとこうよ」 「では、今度から帰ってくる度にいたずらするのは止めてください」 「えーそれくらいいいじゃん。減るもんじゃないしサ」 「今日から佳奈多さんの所に泊まりますね」 ―――――――――――――――――――――― 「お姉ちゃんを盾にするなんで卑怯だぞクド公ーっ」 「いつも脈絡ない行動をする人に言われたくないですー」 「ま、自業自得だ」 「ヒドいっすよ姉御……」 いつのまにかその場に葉留佳さんがいた。 突然登場するよねこの人…… 「やはー、姉御に理樹君にクド公。それでクド公のルームメイトの募集をしてるんだって?」 「え? 何で知ってるの?」 「クドリャフカ、話があるんだけど……ってなんで葉留佳がここにいるのよ」 「ありゃ、お姉ちゃんこそここに来るなんて珍しいね」 「クド、いるか?」 「今度は鈴君か。なるほど…そういうことか」 何がなんだかさっぱりわからない。 そんな僕に鈴が、 「クドのルームメイト募集のメールがきた」 「女子寮には携帯を使った連絡システムがあるからな。登録していると連絡メールが来るのだよ」 「そんなのあるんだ……」 女子寮仕組みまではわからない。けど、そういうのがあると便利だなぁ。 いつになったら男子寮の共有部分を掃除するのか……。 「ってことでクド公、私が一緒のお部屋になってあげよう」 「あなたにクドリャフカの相手が務まるかしら?」 「むきーなんだと貴様ーー」 「お前らうっさい。クド、あたしはどうだ?」 「わ、わふーっ。まさか皆さんから来てもらえると思ってませんでしたっ」 それはつまり、クドが好かれてるってことだ。 騒がしい人達に囲まれながら、クドは嬉しそうに話している。 「結局、僕たちが相談に乗る必要なかったよね?」 「そうだな。私は楽しかったからそれで十分だ」 「来ヶ谷さんもルームメイトとか募集してみたら?」 「ふむ……」 そう言って来ヶ谷さんは、クド達に近づくと、 「クドリャフカ君が大人気だからこのおねーさんで我慢するよ、という人はいないのか」 「絶対嫌じゃ!」 「遠慮しておきます」 「私もパスっ」 全員即答だった! そして来ヶ谷さんは僕のところまで戻ってくる。 「何もそこまで言わなくてもいいじゃないか……なあ、理樹君?」 「いやまあ」 そう話す来ヶ谷さんは少し寂しそうだった。 <あとがき> ここまで読みきってくれた方に感謝の言葉を送らせてください。読んでくださってありがとうございます。 素直にSSS形式にしなさいこの阿呆! キャラの妄想縛りという段階でやめるべきでした…… 設定甘い…文章書く経験なさすぎ…ほぼ私の妄想段階…あとぱっと出の設定作るな…色々寒い… あと三点リーダー自重しなさい。 男三人がgdgdすぎるのはもう大好きなのに書けないこの不甲斐なさが原因。それとLove。 あとがきのつもりが愚痴になってしまいましたああすいませんゴメンナサイ申し訳ありませんsorry. 最後に、クド公に葉留佳さんと呼ばせてるのは何かしら違和感があった&私の趣味です了承お願いします。 いや、問題はそこじゃなk(ry 専用掲示板にじゃんぷですー |