理樹が目を覚ますと、そこは見慣れぬ部屋だった。 自身が横たわっているベッドの隣にはもう一つそれがあり、左手の刈安色のカーテンが開かれた窓からは、若干落ち始めた日の光が部屋に差し込んでいた。窓の下には茶や藍鼠といった色の棚がいくつか並べられていて、それらの両側には机が一脚ずつ置かれており、それらの手前には、赤いクッションのついた回転椅子が適当な方向を向いている。両角の吊り棚の右側には小物と本が雑多に並べられていているが、左側の棚には何もなく、がらんとしている。 ――ここは、美魚の部屋だ。 寝たままぐるりと見渡した理樹は、ここが女子寮の一室らしいということを理解すると共に、この部屋の持ち主を西園美魚と踏んだ。それ程来た事はなかったが、彼女の部屋の使い方はどことなく覚えていた。そして何よりも、今寝ているベッド、そして掛けられた布団には、言葉では言い表せない甘い香りが染み込んでいて、それが彼女のものと酷似していた。部屋の使われ方だけでは理樹も美魚の部屋だと言うことは出来なかっただろうが、それが理樹の確信を強めた。 しかしながら、何故自分がここで徒寝しているのかは、全くわからなかった。窓から見える太陽の色合いから夕刻だろうということは察したが、ここの主である美魚の姿はなく、理樹は彼女の匂いに包まれながら疑問符を浮かべる事しか出来なかった。 「うっ!」 無意識に首を傾げようとし、枕を擦り付ける様に頭を捻った瞬間、後頭部に激しい痛みが襲った。苦悶の声が漏れる。思わず上半身を起こし、そっと手を添えてみると、頭の尾部がぼっこりと盛り上がり、こぶが出来ていた。手で触れると熱を帯びているのがわかり、わずかに接するだけでも鋭い痛みが走った。 一体何が起きたのか。いよいよもって現状が全くわからず、今度こそ小首を傾げた時、かちゃりと目先に見える扉が開いた。 「……起きてたんですね」 部屋に入ってきたのは、やはり美魚だった。両手には洗面器と包帯、そしてガーゼを数枚持っており、理樹の姿を目に入れると、ほっと安堵の息を吐いて、ベッドへと歩み寄る。近づいてくる美魚に目を向けながら、理樹はおずおずとした様子で問うた。 「あの、僕は、どうしてここに?」 「……野球をしていたのは、覚えていますか?」 「え?」 質問を質問で返されて戸惑いの表情を理樹は浮かべたが、美魚はそれに構わず続ける。 「野球、です。今日は土曜日、皆でお昼を食べた後、午後はグラウンドに出て野球をしていたんですよ」 「……」 「思い出しましたか?」 「……あぁ」 「思い出したよ」とどこか呆けた声色で呟いた理樹にうっすらと笑いかけて、美魚は片方のベッドの上に、手に持っていた物を置いた。 「だけど……」 「どうしてここにいるのかはわからない、ですか?」 美魚に先を読まれ、理樹は一瞬を口を噤ませたが、その通りと言った具合で、すぐに頷いた。野球をしていたことはおぼろげながら思い出しはしたが、自分が何故こんな状態になっているのかは、皆目見当もつかなかった。 そんな理樹の心情を見透かした美魚が、静かに口を開く。 「飛んできたボールを捕ろうとした理樹の後ろから、三枝さんが突っ込んだんですよ」 「え?」 「バッター井ノ原さん、センター理樹、ライト三枝さん。鈴さんのボールに対し豪快にバットを振り抜いた井ノ原さんのボールは、右中間に高々とフライ。理樹と三枝さんが目測しながら落下地点へ。理樹が先に着き、大きく両手を広げました。そうして、落ちてきたボールを収めようとグローブを掲げたところで――」 「もういいよ、美魚」 「思い出しましたか?」 美魚の問いに、「完璧にね」と理樹は苦笑しながら言った。思い出されたのは悠々と待ち構えながら腕を上げ、グローブを青空に向けた時に背中と後頭部に激しい衝撃が襲った事だけだったが、美魚の話しぶりからその人物は葉留佳であったということ、その後の記憶がなく、今こうして美魚の部屋に運ばれているということは、自分が気を失っていたのだろうということはわかった。それさえ理解できれば、大方の経緯は把握することが出来た。 なるほど、そういうことだったのかと数度頷いていた理樹であったが、ふと何かを気づいた様に顔を上げる。そして、洗面器の中にガーゼを入れている美魚に言った。 「葉留佳さんは大丈夫だったの?」 「えぇ、痛い痛いって大騒ぎでしたけど、ぴんぴんしてました」 美魚の言葉を聞き、理樹はほっと息を吐く。 「そっか。何事もなかったのなら良かった」 「頭を強くぶつけたみたいでしたが、こぶも出来てませんでしたし、何ともありませんでしたよ」 「むしろ理樹が倒れた事の方で騒いでいました」と付け加えながら、美魚は洗面器からガーゼを取り出した。中には白濁した液体が少しばかり入れられていて、ガーゼはそこに浸されていたらしかった。 ガーゼと包帯を持って、美魚は理樹のいるベッドへ乗り、水気を多分に含んだそれを理樹の患部に当てた。熱を持ったこぶが、ひやりとした感触に包まれる。洗面器を指差しながら、理樹は口を開いた。 「あれは?」 「砂糖水です。何でも砂糖には硬くなった細胞を緩ませる働きがあって、たんこぶや青あざにはこういった処置法があるのだそうです」 そう説明し、ガーゼを手で抑えながらもう片方の手に包帯を取り、ガーゼがしっかり患部に固定されるよう、器用に包帯を頭に巻く。何週かしたところで、額のやや上の所で蝶結びにして、美魚はベッドから下りた。 「これで完了です」 「ありがとう」 「自分で言うのも何ですが、完璧な仕上がりです」 「そうなの?」 「えぇ」 きょとんとしながら訊ねた理樹に、美魚はしれっと答える。大きめの蝶結びがまるでリボンの様になっていることに、理樹は気づいていない。包帯があるので髪を結っている様には見えなかったが、可愛らしいアクセントとしては十分な存在感を示している。美魚はそれを教える気は全くない様で、『そっか、ありがとうね美魚』と柔らかに笑う理樹を見やりながら、ただただ悦に入った目を向けていた。 「そういえば、皆は?」 ややきつく巻かれた包帯に違和感を感じ、理樹は落ち着かない様子で頭に手を添えながら言った。美魚は、一先ずといった様子で右側の机にベッドにあった物を置きながら答える。 「最初のうちは皆さんここで理樹を待っていたのですが、すぐに目を覚ますと思ったので、私が看ていますからと言って、グラウンドに戻ってもらいました」 「あ、そうなんだ」 「えぇ。私はマネージャーですし、それに――」 「……それに?」 「……いえ、何でも。ちなみにここへは、井ノ原さんと宮沢さんに運んでもらいました」 「そっか。後でお礼言わないと」 「それがいいと思います」と言いながら美魚はベッドへと戻ってくる。そして上半身だけ起こしていた理樹をやんわりと寝かしつけて、「安静にしていてください」と優しげな声で囁き、自分は片方へのベッドへと腰掛けた。 理樹は美魚の言いつけに素直に従うことにし、力を抜いてベッドに身を預けた。別に横になっていなければならない程のものではないのに美魚がそうさせたこと、皆をグラウンドに戻したこと、そして言いかけてはぐらかしたこと。彼女が何を望んでこの状況を作り出したのか、理樹は察していた。そしてそれについてどうこう言うつもりはなかったし、むしろそれが良いとも感じていた。結果として、欲の為に皆を部屋から追い出してしまったということは些か良心が痛んだが、この程度なら構わないだろうと思ったし、わずかばかりの恋人同士の穏やかな一時を作ることくらいで、彼らが咎めることなどまずないだろうと思い流した。 美魚はいつの間に持ってきたのか、文庫本を太腿に置いて読んでいた。枕に頭を置いていると、窓から差し込む鋭い西日が眩しいまでに当たっていたのだが、ちょうど美魚が間に入ってくれたおかげで陽は遮られている。膝元の文庫に目を落とす美魚がページを捲る。ぺらり、ぺらりと数分ごとに捲る音が聞こえる。窓が閉められているからか、部活をやっている者達の喧騒も耳に入ってこない。静かな空間の中に、ページが捲られる音だけが響いている。美魚は本に集中しており、当分戻る様子はなさそうだった。 美魚の様子をぼんやりと眺めていた理樹が、ふと寝相を正すかの様に身じろぎをした。わずかに持ち上げられた布団が、中の空気を吐き出す。意識の彼方に放っていた、甘い香りが理樹の鼻腔をくすぐった。 ――美魚の、ベッド……。 そこで、理樹は己が恋人の匂いに包まれているのだということを初めて強く意識した。落ち着き払った後で、美魚と二人きりで、そして自分は美魚の毎日寝ている布団に包まっているということが、理樹の心を激しく昂ぶらせた。 細く、しかし女特有の柔らかさを持った美魚の身体が思い出された。抱きしめた時の美魚の温もりと、ドキドキとした気持ちが思い起こされる。 ――あっ……。 気づいた時には遅かった。今までベッドに横たわっている間パンツの中で何一つ反応しなかった陰茎が、瞬く間に怒張していた。足の方を向いていたペニスは一気に硬く膨張し、伸縮性の少ないスラックスを突っ張っている。美魚の四肢を想起し、無意識下で交わる期待を抱いてしまったのだ。 美魚は静かな二人だけの時を望んでいるというのに、自分はこの様な劣情を抱いてしまっていることに理樹は恥ずかしくなり、頬を赤く染めた。同時に自己嫌悪にも陥るも陰茎は萎えることはなく、むしろ一層硬さを増していき、パンツを擦り上げるようにして腹部の方へと反り返っていった。 美魚は理樹の様子に気づかず、本を読んでいる。横目でそれを確認した理樹は、どうしようかと考える。このまま美魚のベッドに寝続けていても、屹立したペニスは静まることはないだろう。むしろ彼女を一層意識してしまい、興奮の度合いを高めるだけだ。しかしベッドから抜けるとなれば、まずこの牡茎を縮めなければならない。直立すれば確実に股間が盛り上がるであろうし、かといって前屈みになるのは不審すぎる。しかしここは美魚のベッドなのであって、この場で萎えさせるのは不可能なのだ。 ――これじゃ堂々巡りだ……。 わずかな体の動きだけでも先端がパンツに擦れ、緩い快感を生む。美魚の匂いが理樹の頭の奥を痺れさせ、弱いがしかし、絶え間なく続く牡茎への刺激がもどかしい。心臓の激しい鼓動が全身を波打ち、後頭部のこぶがじんじんと痛んだ。 とうとう居ても立ってもいられず、理樹はそっと腹に置いていた手を、そっと牡茎に伸ばした。 「……理樹?」 そこで、美魚が声をかけてきた。理樹はぎくりとし、手の動きをぴたりと止める。本から顔を上げ、美魚は理樹の方を向いていた。 「何だか顔が赤いですが……どうかしましたか?」 理樹の顔と角度を揃える様に美魚が首を捻ると、短く切られている髪が肩口でさらさらと揺れ、細く柔らかい髪の毛の隙間から、うっすらと白いうなじが見える。「理樹?」と声を出す唇は小さく、そして薄い。しかし綺麗な桃色で、艶かしく煌いている。 美魚の一挙手一投足が理樹には美しく感じられると共に、性欲を爆発させている今では、そのどれもが絡みつくような妖しさを放っている様に思えた。欲情していることを知られてはいないはずだとわかっていても、美魚に見られているということが性感を高め、牡茎は一層逞しくなっていく。 己のこの変化に美魚は気づいていない様だと悟った理樹は、止めていた手を再び動かした。しかし、文庫に目線を落としていた時ならいざ知らず、完全にベッドの方を向いている美魚が、布団の下腹部の辺りが異様に盛り上がり、蠢いたのを見逃すはずがなかった。 「……何を、しているんですか?」 「いや、別に何も」 「トイレなら、気にせずどうぞ」 「いや、そういうわけでもなくて」 「じゃぁ一体どうし――」 そこまで言って、美魚ははっとした様に目を見開いた。顔を赤くする理樹、そして蠢く下腹部。そこからそういった、性欲的考えが過ってしまったであろうことは、想像に難くない。理樹も気づかれた事を理解した様で、恥ずかしそうにそっぽを向いている。 「……理樹、布団を取ってもいいですか?」 「いや、それはちょっと」 「どうしてですか」 「一身上の理由で」 「失礼します」 「あっ」 有無を言わさず、美魚は掛け布団を剥ぎ取った。 理樹が咄嗟に股間を両手で隠す。しかしながら、一瞬にしろ、美魚の目には大きく膨らんだ局部が移っていた。 「これは、どういうことですか」 「いや、その」 「私の布団の中で、理樹は何をしようとしていたのですか」 美魚が非難めいた目を向ける。居たたまれず、理樹は美魚から視線を逸らしたまま、ぼそりと呟いた。 「美魚のベッドで寝ていると思うと、なんだか変な気持ちになっちゃって……」 「……」 ――あぁ、終わった。 美魚が黙りこくったのを感じ、理樹は心の中でうなだれた。きっと幻滅したことだろうと、破局の陰を感じ取った。 美魚と交わったことは、頻繁ではなかったにしろ、今までにも幾度かある。時には自分の部屋であったり、ここ、美魚の部屋であったり、デートの道すがらのラブホテルに立ち寄ったりと、数にしてみれば両手で数え上げられる程度ではあるが、幾ヶ月の恋人生活の間、理樹達は体を重ね、愛し合ってきた。清廉潔白な仲でいる事を否定したあの日から、理樹達は体を交えることや、劣情を顕にすることへの抵抗は薄れていた。別々の存在であっても、一つに繋がることで心は近しくなり、通わせることが出来るとわかったからだ。 しかし、今回はそれらとは話が違った。二人の心を近づけ合い、愛し合うものではない。美魚の気づかぬところで彼女の匂いを嗅ぎ、それに興奮していたのだから、まるでそれは下着や、体操着を盗む者の類ではないか。一言で表すならば、変態と言っても差し支えないだろうとさえ、理樹は思った。性欲を曝け出すことに恥じらいがなくなってきたとはいえ、こんな性癖を持っていた自分を見て、恋人たる美魚に秋風が吹かないわけがあるだろうか。 理樹の胸にそんな、諦念とはちきれんばかりの悲しみが広がりかけた時、下腹部の方で、カチャリという音がした。 そっぽを向いていた目を陰部の方へ向ける。するとそこには、ベルトのバックルを外す美魚の姿があった。 「み、美魚」 「はい、なんですか」 「何を……」 「理樹のこれを、鎮めようと思ったのですが」 美魚が、スラックスの上から優しく陰茎を撫でる。その手つきは慈しみと、そして言い様のない艶かしさが感じられた。 「確かに驚きはしましたし、最初は何を考えているのかと怒りもしましたが……理樹の言葉を聞いて、それは、私を思ってくれたからこうなったのだと思いました」 「……」 「言ったはずです。私はそういった劣情を否定するつもりはないですし、可能な限り受け入れたい、と」 「うん」 「私はあなたの恋人です。言ってください。一人で溜め込まないでください。私に抱いた欲望は、出来る限り受け止めます。そして今はそれが出来る時間、空間です。私にも、あなたの性欲を発散させるお手伝いをさせてください」 「下着を盗んではぁはぁされるのも困るので」と最後に茶化してから、美魚は留め具を外し、チャックを下ろして、スラックスを脱がした。理樹は抵抗しなかった。 ――僕はまた、同じ過ちをするところだったのかもしれない。 初めて行為に及んだあの日。それまで理樹は美魚にそういった穢れた目で見る事を怖れていた。清い関係でいればいいのだと思っていた。美魚は人形の様に美しくて、それを己の手で汚すことなどしてはならないのだと思っていた。 しかしそれを美魚は拒んだ。美魚はそういった、腹の中に溜めたものも吐き出して欲しい、曝け出して欲しいと言った。それでは心の距離は遠いままで、共有することは無理なのだ、と言外に訴えた。 隠したいかもしれない。恥ずかしいかもしれない。だが何よりも悲しいのは、隠されることだ。それを受け入れてもらえないと勝手に帰結されてしまうことなのだ。拒否されてしまうことを怖れていては、永遠に遠慮した仲になってしまうのだ。 「ねぇ、美魚」 「はい」 「ちょっと遅いかもしれないけど……お願いしても、いいかな」 「……はい」 小さく微笑んで、美魚は脱がしたスラックスをベッドの脇に置いた。伸縮性のないスラックスを取り除かれ、覆う物がパンツだけになった牡茎は、はっきりと見て取れるくらいに、硬く、大きくなっていた。 「あぁは言いましたが……凄い興奮していたんですね」 「う、うん」 パンツを脱がす前に、形が浮き出ている牡茎を美魚が握る。美魚の手に瞬く間に熱が伝わっていく。先端部分は、我慢できないと叫ぶかの如く、透明な粘液が溢れていて、パンツに染み出ていた。 「一体、何を想像していたんですか?」 「それは……」 「言えないような妄想だったんですか?」 「違うよっ。ただ、その……」 「その?」 「美魚と、エッチしたいなって」 「……そう、ですか」 ふふっ、と笑いを噛み殺し、美魚はパンツに手をかけ、脱がした。硬く猛った牡茎が引っかかった反動でニ、三度大きく揺れながら、外気へと姿を現した。 「こんなにしてたなんて……やっぱり理樹は変態です」 「そ、そんなこと言わないでよ」 「ということで、理樹にはおしおきです」 「おしおき?」 「理樹は何もしてはいけません。私がずっと、理樹を気持ちよくさせてあげます」 「そんな」 羞恥で潤んだ瞳を向けながら言う理樹に目を細め、艶かしく微笑むと、美魚はおもむろに牡茎を握った。軽く包み込むようにして握った手は、少しひんやりとしていた。しっとりとしていて柔らかい、白魚の様な指が、するすると絡める様に竿を撫でる。そのあまりにもやんわりとした刺激に、理樹は思わず呻いた。その声を耳に入れ、美魚がまたくすりと笑う。 「夢だったんです」 「何が」 「理樹を、目一杯愛してあげることが」 喘ぎながらの理樹の問いに美魚はそう答えると、ゆっくりとしごき始めた。大きく上下にストロークさせる。牡茎の先端から溢れ出る透明な液が、美魚の指に絡みつき、それが竿全体に塗りたくられていく。しごきは潤滑油を得て、速くなっていく。 「すごい、固くなってます……」 そう呟いて、今度は鈴口を包み込む様にして握り、鈴口だけをしごき上げる。時折手のひらで亀頭全体をこねる様に手を動かす。 ――ダメだ、物凄く気持ちいい……。 理樹は女の様に乱れた。美魚の焦らす様な、しかし時に激しい愛撫は強弱の快感の波を作り、理樹に押し寄せてきた。元々声の幼い自分が嬌声を上げると、まるでそれは女性が上げている様な錯覚にすら陥った。倒錯的な情欲が、理樹の性感をより高めた。そんなことでより興奮する自分に羞恥心が大きく膨らむも、それすらも快感を加味させた。 「理樹、気持ちいいですか?」 「うん、気持ちいいよ、美魚」 張り詰めた様に喘ぐ理樹にちらりと目線を送った後、美魚は竿全体を握ると、鈴口に舌を這わせた。冷たさに一瞬腰を浮かせた理樹だったが、舌が透明な液を舐め取る様に亀頭を舐めまわし始め、その鋭い刺激に声にならない声を上げ、思わずシーツを掴んだ。 くるくると舌先が亀頭を回る。その下では、指が竿を小刻みにしごいている。牡茎全部が気持ちよすぎて、理樹はもうよくわからなくなっていた。ただただ気持ちいいという思いだけが募るばかりだった。とりあえず射精だけはまだすまいと思い、真人と筋肉で遊ぶことを考えたが、それも美魚が亀頭全体を口に含んだことにより、あっという間に霧散した。 亀頭のカリ部分まで口をくわえ込むと、そこで唇を締め付ける。そして、前後に小さく動かし始めた。口の中の温かさと唾液のぬめり、舌の適当な動き、そしてすぼめられたくちびるによる摩擦が先端を刺激する。息苦しさに口を離し解放されても、竿をひたすらしごき続ける手が、快感を緩めさせてはくれない。 そう思っていると、とうとう美魚は手を離す。そして今度は、竿全体に舐め始める。亀頭側から、裏筋を舌先で下方へ辿っていく。そしてふぐりまで到達すると、また上へと戻っていく。裏筋への執拗な責めに、理樹はくぐもった呻きを上げるほかない。 美魚の小さい口では理樹の陰茎全てを口に含むことは無理なのか、竿を舌で舐める事が続く。零れ落ちてくる横髪を掻き上げつつ、美魚はその可愛らしく赤い舌で、血管浮き出る陰茎に唾液をたっぷり馴染ませていく。緩慢に動く舌と唇は、お世辞にも可愛らしいとは言えず、むしろ妖しい気を放っていた。 「皆さんは、今野球をしているんですよね」 口を離し、手を筒の様にして牡茎全体をしごきあげながら、美魚はふとそんな事を口にした。唾液と、鈴口の端の細い切れ込みから溢れる透明な粘液によって、牡茎はぬらぬらとぎらついている。それをしごく美魚の手も淫靡に濡れそぼっていて、にちゃりと濁った水音を立てる。 美魚の呟きに、理樹ははっとした。たまたま自分が気を失ったからグラウンドを外しているだけなのに、何故こんなことをしているのか。無邪気に野球をしている親友達の傍らで淫らな行為に耽るという現状を思い做すと、理樹の心臓はどきりと跳ねる。そして、妙な興奮が湧き上がってきて、美魚の手に包まれている牡茎も揺れた。 「理樹の、びくってしましたよ? もしかして、エッチな気持ちになったんですか?」 「そんなことは……」 「隠さなくてもいいんですよ? だって、私も……」 そこで言葉を切り、美魚は牡茎への愛撫に集中した。 とろりと粘り気を孕んだ瞳が、理樹の陰部に注がれている。自然と近づけられた美魚の口から漏れる熱い吐息が、牡茎と陰毛を撫でる。突っ張った皮を、美魚がひたすらにしごく。竿に滴る粘液が、美魚の手との間に白く濁った糸を引く。 理樹が甲高い声を上げた。 「理樹、女の子みたいですね」 くすりと笑いながら、美魚が言った。 かぁ、と顔が熱くなるのを理樹は感じた。羞恥心が瞬く間に膨らんでいって、そして性欲と混じりあい、体を巡っていく。抑えたくとも抑えられない喘ぎは、より高く、そして大きくなっていく。 「可愛いです」 ちろ、と美魚の舌が牡茎を舐める。 ――あぁっ、何でこんなに愛らしいんだろう。 美魚の愛撫には、まだあどけなさが残っている。淫猥な雰囲気を持ちつつも、どこか少女らしい可憐さを滲ませている。牡茎の不随意な挙動や、意図せずに触れた部分に理樹が敏感に反応したりすると、目を見開いて驚いたりする。オーラルセックスも初めてに比べれば慣れてきたようだが、未だたどたどしい仕草がしばしば見られる。気持ちいいのはもちろんのことだったが、何よりもその美魚の愛愛しさが、理樹の興奮と性感を果てしなく高めていた。 「美魚、そろそろ」 理樹が短く呻きながら言った。射精感はすぐそこまで来ていた。快感と愛しさが全身に拡がって、今すぐにでも白い樹液を放ちたくなる。真っ白な美魚の手に、それより少し濁った、どろどろとした体液を撒き散らす光景を思うと、凄まじい情欲が込みあがってくる。 「出そう、ですか?」 ちゅぽん、と牡茎から口を離し、手で牡茎をしごきながら美魚は言った。その顔は微笑に覆われているが、ところかしこに妖しさが満ちている。悪戯好きの小悪魔の様な表情である。 「うん、出そう」 「そうですか……でも、だめです」 「何で」 懇願するかの如く問う理樹にさらに頬を緩め、美魚は立ち上がった。ベッドの横に置いていたティッシュを二枚取って手を拭くと、窓の方へと行く。そして窓下の棚の上段を開け、そこからコンドームを取り出した。 「それは……」 「私だって、一応持ってるんですよ?」 「その時にないと困りますから」と言いながら、美魚がベッドの方へと戻ってくる。そして、おもむろにスカートとショーツを脱ぎ捨て、ベッドに乗り、理樹の上に跨った。先程持ってきたコンドームの封を開け、するすると淀みない動作で牡茎へ着けていく。半透明の、コバルトグリーンのゴム状の薄膜が、膨張した牡茎を包んだ。 「今日は、私が思う存分理樹に尽くしてあげます」 艶やかな瞳を理樹の方に向けてそう言うと、美魚はコンドームが着けられた牡茎を掴み、自らの割れ目へとあてがった。 手と腰を操って、牡茎の先端を陰口へと導く。笠が肉びらに絡みつき、滑っていく。鈴口が粘液でまみれていく。牡茎が肉裂を擦っていくのを感じたのか、美魚はくぐもった声を上げながら、腰を少し揺らす。 ――濡れてる……。 亀頭を滑らしているのが、コンドームに塗られた潤滑剤だけではないことに、理樹は気づいていた。鈴口の先端に感じるのは、美魚の秘裂から溢れ出た熱いうるみだ。視線の先に見えるのは、処女雪の様に白い美魚の下腹と薄っすらと生える茂みだけだったが、接された牡茎の先端が美魚の欲情の証にまみれているであろうことを理樹は感じていた。もしかするとショーツも既に湿った状態だったのかもしれないと思い、理樹は美魚がベッド下へと落とした衣服へと目を向ける。しかしながら、ショーツはスカートの上に落ちていたものの、クロッチ部分は床に隠れていて見えず、それをうかがい知ることは出来なかった。 意地悪するかの様に、暫くの間牡茎を割れ目の間で右往左往させていた美魚であったが、ようやく割れ目の溝へと笠を合わせた。馴染ませていたのか、余韻を味わうかの様に、湿った息を吐く。 「それでは、いきます」 改まってそう言うと、美魚は腰を少しずつ沈めていった。牡茎が割れ目の中に入っていく。理樹の目には、美魚の茂みの中に牡茎が押し入っていく様にも見えた。しかしながら、熱いうるみと、波打ちながら吸い付いてくる肉襞の感触が、美魚の肉壺に己の牡茎が入っていくのを実感した。 理樹の目から、徐々に牡茎が見えなくなっていく。美魚の秘部との距離が短くなっていく。美魚がうっとりとした声を上げる。悶えるように腰を前後にうねらせる。白い下腹部と薄い茂みが、波の様に揺れた。 圧迫してくる様な肉襞の動きが、ゴム皮越しにも伝わってきた。奥へ、奥へと導くように牡茎を絞り上げる肉のうねりが、鋭い快感を生む。太腿に密着する美魚の柔らかい尻の感触も、より心を扇情的にさせた。 笠が最深部へと到達した。己と美魚の茂みが混ざり合っている。ふぐりに、温かなうるみを感じる。 「動きますね」 切れ切れの声でそう言うと、美魚はゆっくりと腰を上げた。 腰が引き上げられると肉襞がめくり返って、牡茎を吸い上げていく。美魚の割れ目と茎の根元との間に、うるみによって糸が引くのが見える。 ――ああっ、動きたい。 理樹は自らの腰を突き立てたい衝動に駆られた。わざわざ改まって宣言してから行動に移す美魚のいじらしさに、理樹は美魚をどうにかしてやりたい気持ちになった。 自分も気持ちよくさせたい、喘ぐ姿を見たい、己の愛撫によって快感を吐露する美魚を見たい。短い喘ぎ声を上げながら、理樹は激しい責めの欲望を膨らませた。 「ねぇ、僕も動いていいかな」 「だめです。今日は、私が理樹を気持ちよくしてあげるんですから」 「そんな」 「だから、そのまま寝ていてください」 理樹の腹に手をついて、美魚は腰を上下に動かし始めた。散々大胆な事を言ってきても、悦楽の声を素直に上げるのにはまだ恥じらいがあるのか、鼻から漏らす様に喘ぐ。腰が沈むと、理樹との接合部の間でくちゃりと粘っこい水音が響く。 上半身は制服を身に纏っているのに、下半身は裸という姿が、理樹の興奮を高めた。胸の前で結わえられたリボンが、美魚の上下の動きによって、ひらひらと揺らめいている。快感を噛み締めるかの様に、理樹の上着を強く掴んでいる。美しい彼女の乳房を見れないのは少しばかり残念ではあったが、下半身を露出させて情事に耽る姿は、理樹の心を十分に淫猥にさせた。 「騎乗位、と言うんでしたか?」 「うん、そうだね」 「動くのが、難しいです」 快感に悶え、眉根を寄せながら、浮き沈みさせたり、時には前後にくねらせたりと、おずおずと言った様子で美魚は腰を動かす。動作自体は緩やかなものではあったが、美魚の肉壺はうるみを溢れさせ、襞はキュウキュウと牡茎に纏わりついてくる。愉悦に満ちた二人の声が重なって上げられた。 「まるで、女の子としているようです」 短い喘ぎを上げながら、美魚が言った。理樹は自身の頭の蝶結びには気づいていない。しかしながら、少なからず自分が女らしい声や表情をしていただろうことをわかっていたので、美魚のその言葉は恥ずかしくてたまらなかった。 「なんだか、興奮してしまいます……」 そして、ついて出た美魚のその言葉が、理樹の箍を外した。 もう我慢できなかった。ゾクゾクと背筋に鳥肌が広がった。責め立てたい気持ちがいっきに膨らみ、肉壺の中に埋没する牡茎がぴくりと揺れた。 「あぁっ、理樹のが」 「ごめんっ、美魚」 「だめですっ。動かれると」 美魚の甲高い制止の声を無視して、理樹は激しく腰を突き立てた。美魚の背中が弓なりにしなる。衝撃を抑えんと、理樹の上着を今まで以上にきつく掴む。最高潮に膨らんだ牡茎は肉襞をなぎ倒す様に押し入っていき、最深部を強く打ち付ける。 激しい肉の打ち付けあう音が部屋に響く。美魚の自制できなくなった呻き声が上がる。自らの愛撫で乱れる美魚の姿に酔いしれ、理樹はさらに深く、深く挿入せんと腰を動かした。 「ううっ、すごい。激しすぎて……」 「我慢できないっ、ごめん」 謝罪を述べても、腰は止まらない。うるみは股間からさらに溢れ、二人の茂みを、そして尻をも濡らす。 理樹は美魚の尻を持った。小ぶりで柔らかい肉の感触が、手に埋まり、隙間から零れる。唐突な理樹の行動に、美魚の体がビクンと跳ねた。 快楽からか、瞑られた美魚の目には、涙が浮かんでいた。うめき声を上げながら、頭を左右に振っている。快感に震える美魚の姿が、理樹は愛しかった。 「美魚、そろそろ」 「あん、きてくださいっ、理樹」 そう叫ぶと、美魚は理樹の唇を奪った。首に手を回し、激しくくちびるを吸ってくる。理樹もそれに応えるべく、尻から背中へと手を動かし、美魚を抱き寄せた。 積極的に唇を求め合った。唇を吸い上げたり、舌を絡ませ、歯茎や歯の裏を舐めあう。混ざり合った唾液を、息苦しくなりながらも飲み込む。お互いの液体を飲み込むという行為は甘美で、性感を高めていく。 胸が押し付けられる。制服と、そして中の下着もあり、ごわごわとした硬い感触があったが、その奥にある乳房の柔らかみがきちんと感じられる。直接揉みたくなったが、交わっている上にキスもしていて、そして体を重ねあっている今、それをするのは少し難しいだろうと、名残惜しみつつ、手を背中に回したままにした。 キスをしている間も、理樹はひたすらに腰を動かしていた。唇を吸い付けると肉襞がひくつく。割れ目にまみれたうるみは白く濁り、粘ついている。美魚の体があり見ることはできなかったが、滑らかな挿入から、牡茎が粘液まみれであろうことを、理樹に確信させた。 上唇を吸っていたところで、美魚が上体を起き上がらせた。 「きてっ、理樹。私、もう」 「うん、僕もそろそろ」 「あぁっ、だめ」 うわずった声を上げながら、美魚は仰け反った。後ろに倒れこむのではないかというくらいに、背中をしならせる。下腹部が痙攣を起こしたかの様に、激しくうねった。肉襞がギュウと引き締まった。 「いくよ、美魚」 その声と共に、理樹は頂点に達した。牡茎の先端から四肢、頭部に向かって衝撃が走った。強烈な快感と共に、牡茎がビクンビクンと脈打ちながら、白濁液を噴出していくのを感じた。 ピンと張り詰めた様に体を硬直させた後、美魚はがくりと力尽き、理樹の胸元へと崩れ落ちた。 「動いてはだめ、と言ったじゃないですか……」 「ごめん」 息切れしたままそう呟くと、美魚は理樹の手を握り締め、上目遣いで理樹を見ながら言った。 「理樹」 「ん?」 「よかった、ですか?」 「……もちろん」 その言葉を聞いて、美魚は笑った。理樹の胸が愛しさで一杯になり、彼女を抱きしめた。 この時になって、理樹はこぶの痛みと、美魚の甘い匂いを思い出していた。 「理樹くん、大丈夫っ?」 グラウンドへと戻ってきた理樹と美魚を最初に出迎えたのは、葉留佳のそんな切迫した声だった。練習中なことも気にせず、グローブを嵌めたまま張り詰めた表情で走り寄ってくる。 「うん、何ともないから。心配しないで」 「そっか……よかったぁ」 「三枝さんは、もう少し落ち着きを持った方がいいと思います」 「わかってるよー! 今それ言わなくたっていいじゃんか、みおちんのいじめっこーっ!」 「友人からの真面目なアドバイスです」 葉留佳と美魚が、たちまち言い合いを始める。理樹はそれを苦笑しつつ、未だ違和感の感じる頭の包帯を一撫でした。額の上にあったはずの大きな蝶結びは小さくなり、耳の裏にひっそりと移されていた。 葉留佳にやや遅れて、全員が理樹達の下へと寄ってくる。 「よぉ。無事で何よりだ」 「うん。あ、真人、謙吾、運んでくれてありがとね」 「何水臭いこと言ってんだよ」 「そうだ、親友じゃないか」 「……そうだね」 そう言って、三人は笑い合った。 それを見ていた恭介は人知れず微笑むと、葉留佳と相変わらず言い合いをしている美魚の下へ行き、肩を叩く。美魚が振り向く。 「恭介さん」 「よっ。理樹の面倒見てくれて、ありがとな」 「いえ、私はこの部のマネージャーですから」 「そうか……そういえばそうだったな」 忘れていたとでも言った風情で、恭介は豪快に笑う。それに続けて美魚も微笑みながら、再度口を開く。 「それに、ですね」 「ん? それに、なんだ?」 「それに――」 そこで言葉を切って、持ってきた日傘を差す。西日が日傘に当たり、陰が美魚の顔を少し暗くする。美魚の陰と日傘の陰が混じって、ぼんやりと大きくなる。 日傘を握る感触を美魚が確かめる。そうして一つ頷き、恭介を見て、言った。 「私は、理樹の恋人ですから」 静かに、美魚は笑った。 後書き 普段まともに後書きなんて書いたことない私ではありますが、今回は思いの丈を綴ろうかと思います。 まずは、知っている方は改めまして、そして初めて私を知ったという方は初めまして、『Cmajor』というリトルバスターズの二次創作サイトを運営しております、marlholloという者です。よろしければ、以後お見知りおきを。 今回は『恋衣』を読んでいただき、ありがとうございます。そして後書きにまで目を通してもらっていること、とても嬉しく思います。 そして、この作品を置いてくださった神海心一様。私のサイトはアダルト描写ご法度でありますので、神海さんがいなければ、きっとこの作品を出す事はできなかったでしょう。『恋衣』を置いてくださったこと、改めて、心よりお礼申し上げます。 さて、ご挨拶はこの辺にして、そろそろ作品について触れていきましょう。 テーマは『エロいリトバスSS』、『性行為を覚え、快楽を貪る話』です。実際どれだけのリトバス18禁SSが存在しているのか、正確な数を出すことは私には適いませんが、私が探ってみたところ、初体験モノが多くを占めている傾向にあるように感じました。それがいけないとか、そんなことは全く思ってはおりませんが、『一本くらい、もう少しくらいエッチなSSがあってもいいのではないだろうか』。そういう思いが、このお話を書くきっかけとなりました。 読んでいなくても差し支えないようにしたつもりではありますが、今作は神海さんのSS『ほんとうのさいわい』を強く意識した作品です。当然の様に名前で呼び合う二人や、お話の中にもいくつか『ほんとうのさいわい』の流れを汲んでいる部分があります。完全な続編ではありませんが、できれば、『ほんとうのさいわい』の方も一読することを、個人的にはお薦めいたします。 性的描写に関しては、完全に私の趣味です。もし好みに合わないようでしたら、申し訳ございません。 気づけば、後書きだけで随分書いてしまいました。あまり長く書いてもどうかと思いますので、次の一言で〆たいと思います。 こういう、ほのぼのというか、『しあわせ』的なお話を書くのがめっぽう苦手な私ですが、性描写を含め、試行錯誤しながら一生懸命書きました。楽しく読んでもらえたならば、幸いです。 ここまでお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。 ということで、marlholloさんから有り難くも頂きました『恋衣』。私のサイトに展示される、自分以外の方の十八禁SSとしては三本目になります。くどふぇすの際にもひとつ頂いてるわけですが、そちらも拝見した読者さんならわかるでしょうか。marlholloさんの筆致というのは三人称を主体にした、どちらかと言えば情景描写に偏るものですが、淡々としながらも実に鮮やかですよね。繊細、とも言えるかもしれません。拙作の続きとして書かれたことは勿論嬉しく、その上でこういった描写を見られるのは何とも僥倖。 シチュエーション及び細かい仕草や台詞のエロさも含め、身体の芯が疼いてしまうほど性的な内容なのに、読んでいると一種の愛しさ、幸福感も伝わってくる。さすがのひとことですよ。 具体的なアレは敢えて口にしませんが、初体験ではそうそうしないことも、この話の中には組み込まれています。 性行為というのは本来実に生物的なものでして、ええ、言ってしまえばグロテスクですらあるんですよね。創作はそれを緩和、あるいは強調するものですけれど、本質はどうしたって変わらない。繋がること、ひとつになること、共に在ろうとすること、なのだと思います。 そんな想いが込められている限り、私は性行為を描く物語に是を唱えたいな、と、そんな風に考えているのでした。 感想はご本人に言っていただけると助かります。遠回しな方が色々と不具合ないかもです。 では最後に、こちらからも「どういたしまして」と「ありがとうございます」の言葉と気持ちを。 物語に触れた全ての人達が、何かを感じてくだされば幸いです。 |