目が覚めると来ヶ谷さんの顔が真正面にあった。 「……え?」 「起きたか少年」 「…………来ヶ谷さん?」 「キミには私がいったい何に見えると言うんだね」 訳がわからない。どうして僕は見慣れない部屋のベッドに寝かされてるんだろうか。 そもそも今、ふとすれば鼻が触れそうなほど近くに来ヶ谷さんがいるってことはつまり、 「いやしかし、理樹君の寝顔は実に可愛らしいな。おねーさん思わず頬擦りしてしまいそうだったよ」 「え、ええええむぐっ!」 「あまり大きな声を出すと危険だぞ少年」 何が危険なのさ、と反論したけれど、口を塞がれているので言葉にならない。 間近で見る来ヶ谷さんはやっぱり綺麗で、でもそんなことを考えてる余裕は正直これっぽっちもなく、 僕は現状を把握するためにどうしてこんなところにいるのかを思い出そうとした。 確か……放課後になって僕は体育館裏の自動販売機に向かってたんだ。何だか喉が乾いてたから、部室に行く前に飲み物を買おうとして。 裏庭を歩いて抜けようとした時、来ヶ谷さんに声を掛けられて、うん、今日は雲行きが怪しいって話をしたのも覚えてる。 朝からいつ雨が降ってもおかしくないような空模様で、もしかしたら野球の練習は中止になるかもしれない、とか、 そんなようなことを話してたら、突然ふっと膝の力が抜けて―― (ああ、そうか……。そこで僕は、倒れたんだ) ナルコレプシー。何の前触れもなしに意識を手放してしまうことが、僕にはある。 それはリトルバスターズのみんなにとっても周知の事実だけれど、いつ発症するかはわからないし、 迷惑を掛けたことも一度や二度じゃなかった。あの事件以来、頻度は減ったとはいえ、結局完治には至ってない。 今もたまに倒れてしまうことがあって、来ヶ谷さんと一緒にいる時に発症したのは今回が初めてだ。 (あれ? 初めて、だったかな) 前にも同じようなことがあった気がする。でも、具体的には思い出せない。 妙な既視感を覚えて首を傾げていると、来ヶ谷さんが心配そうな表情で僕の顔を覗き込んだ。 「大丈夫か理樹君。まだぼうっとしているようだが」 「あ、平気……って来ヶ谷さん、顔近いよっ」 「別に問題ないだろう。むしろ年頃の男の子にとっては実においしいシチュエーションだと思うぞ。 だからキミも素直にヒャッホウこいつぁ役得だぜとか言いながらおねーさんのおっぱいに好きなだけ顔を埋めるといい」 「しないよっ!」 「ふむ。相変わらずキミはよくわからんな。私がもしキミの立場にいたら迷わず顔を埋めた後に揉みしだくぞ」 来ヶ谷さんは絶対本気でやるだろうから恐ろしい。 「それはともかくだ。話には聞いていたが、実際に少年が倒れた時は焦ったよ。危うくそのままお持ち帰りするところだった」 「焦るところが違うよね絶対……」 「まあ、実際にお持ち帰りしてしまったわけだが」 不穏な台詞に僕は慌てて跳ね起き、部屋の様子を見る。 必要最低限の家具が理路整然と設置された、殺風景とも取れる室内。当然ながら普段女子寮には踏み入ることがないので、 誰の部屋がどんな内装かなんてことは知るはずもないけれど、さっきまでの来ヶ谷さんの発言を思い返せば答えは明白。 ――どうやらここは、来ヶ谷さんの部屋らしい。 「って何でわざわざ女子寮の方に運ぶのさ!? 恭介にでも連絡して男子寮に運んでくれればよかったじゃない!」 「それは勿論、面白いからに決まってるだろう」 ある意味予想通りの言葉に僕は頭を抱える。 うう、この問答も何だか前にあったような気がするなあ……。 「ところで理樹君」 「……何?」 「キミは鏡を見たかね?」 「鏡? 見てないけど……」 「折角だから一度自分の姿をしっかり確認してみるといい」 部屋の隅に申し訳なさそうに置かれた鏡へ、ふっと視線を向ける。 ……そこには、全く見知らぬ誰かが映っていた。 「…………へ?」 首を傾ける。鏡の人も同じように傾ける。 手を挙げる。同じように鏡映しで挙げる。 最後に僕はゆっくりと、自分の顔を指した。やっぱり同じように動いた。 「言い忘れていたが、キミをここまで運んでいる途中に雨が降ってきてね。服が濡れてしまっていたので、 風邪をひかないようにと着替えさせてもらったよ。ついでに薄く化粧をしてウィッグも被せておいた。我ながら渾身の出来だ」 ……えっと。ちょっと待って、これ、もしかしなくても……僕? Don't feel like it! 「………………」 「どうした理樹君。もしや女装した自分があまりに可愛いので惚れてしまったか」 「そんなわけないでしょ! 何で僕女子の制服に着替えさせられてるのさっ」 「いや、無防備なキミを見ていたらつい女の子らしくさせたくなったのでな。 見立てではかなりいい線行くと思っていたが、まさかこれほどまでに似合うとはおねーさん少しびっくりだ」 色々突っ込みどころが多過ぎて気付かなかったけど、全身を包む違和感がこれは現実だと告げていた。 ベッドから降り立ち上がった僕が来ているのは、来ヶ谷さんと同じ女子の標準制服。 ということは当然下はスカートなわけで、もうこの時点で既に恥ずかしくて死にたくなる。胸が膨らんでるのはパッド入りだからか。意外と大きい。 膝上までを隠すサイハイソックス(というんだと教えてくれた)の色は来ヶ谷さんと正反対の白。スカートの長さは腿が半分隠れるくらいで、 正直心許ないにも程があった。すごくすーすーする。 ウィッグを付けた髪はセミロング、ちゃんと黒で金髪だったりしないことにちょっと安心したけれど、 うっすら施された化粧と相まって、鏡に最初映った時は一瞬それが自分だって自信を持てなかった。印象が、全然違う。 確かに渾身の出来と言ったのにも頷けるんだけど、こんな姿で男子寮に戻ろうものなら僕の学校生活は間違いなく終わるだろう。 それを言ったら来ヶ谷さんの部屋に連れてこられた時点で終わってる気がしないでもないけど、とにかく帰らなきゃ。 「とりあえず着替えたいんだけど……」 「すまんがそれはできない」 またもや訳がわからない。来ヶ谷さんの部屋で着替えさせられたのなら、僕の服はどこかに転がってるはずだ。 なのに見当たらないのは何故だろう。怪訝に思っていると、来ヶ谷さんはあっさりと答えを教えてくれた。 「ここまで来るのにすっかり濡れてしまったのでね、洗濯してからキミの服は男子寮の部屋に届けておいた」 「……僕の新しい着替えとかは?」 「当然ないが?」 さーっと自分の顔から血の気が引いていくのが、手に取るようにわかった。 着替えがないってのは要するに、この姿で男子寮まで戻らなきゃならないってことで。 女装癖の変態様として残りの一年とちょっとを過ごす未来が脳裏に浮かんだ。 クラスのみんなが向ける白い目。同情するような視線。誰もが一歩距離を置き、孤立していく僕……。 「うわあああああああああああっ!」 「懊悩する少年もそれはそれでいいものだな……」 「何しみじみと人の不幸をダシにしてるんだよっ」 「はっ。……大変なことに気付いてしまったよ理樹君」 「今度は何……?」 「キミはウィッグを着けなくても十分過ぎるほどに女の子だ。ということで外そう。そして代わりにリボンでも付けておく、と」 誉められてるのかどうかも判別できない。 諦めの境地に達した僕は来ヶ谷さんの為すがままにされながら、本当どうやって帰ればいいんだろうと重い溜め息を吐いた。 ウィッグが取られ、髪型はいつも通りになる。それでもやっぱり、鏡に映っているのは僕じゃない誰かのままだった。 ……いや、どんなに否定しても僕なんだけどさ。認めたら最後の一線を越えちゃうような気がして……。 「さて理樹君。キミの着替えの件についてだが」 「え、もしかしてさっきのは冗談とか?」 そうならどれほど嬉しいことか。 「まさか。キミは私が真顔で冗談を言うように見えるのか?」 「すっごく見えるよ……」 「残念ながら今回は本当だ。勿論私の部屋にキミが着られるような服もない」 それはそうだ。あったら怖い。 来ヶ谷さんならこんなこともあろうかと、なんて言ってどこからともなく取り出したりしそうだけど。 「つまりだ。キミはこれから男子寮まで向かい、衣服を取ってきて誰にも見つからず着替える必要がある」 「全然気が進まないんだけどね……ってちょっと待って。来ヶ谷さんは僕の服を一回男子寮に持って行ったんだよね」 「うむ」 「じゃあ、もう一度来ヶ谷さんが行って取りに行けばいいんじゃないの?」 「ほう。理樹君は私がキミの着替えを抱えて自室に入る様を寮の生徒達に見てほしいのか?」 「……あ」 僕の持病のことは、恭介達も含め結構な人が知っている。 今も雨が降ってるのは閉めたカーテンの向こうから聞こえてくる雨音でわかる。実際服が濡れて、来ヶ谷さんは親切心で洗濯までしてくれたんだろう。 僕が倒れたことと、それが外だったことを真人にでも伝えれば、来ヶ谷さんが服を届けるために男子寮に入っていったとしても変な風には見られない。 しかし、何の理由もなく再び来ヶ谷さんが取りに行けば……最悪、恭介や謙吾、鈴と鉢合わせして妙な誤解をされてしまう。 疑われる要素が満載過ぎて、今日の夜にでも尋問が行われそうだ。その時どれだけ弁解しても、きっと通じないと思う。 「上手く丸め込まれてるような気がしないでもないけど、結局僕が行くしかないのか……」 「まあ、私もできる限りのサポートはしよう」 そう言うと来ヶ谷さんは机の引き出しから何やら小型のイヤホンらしきものを取り出した。 手渡され、着けてみる。片耳なので少し違和感があるけど、不快なほどじゃない。髪の毛で隠すと傍目にはわからなくなる。 続いて来ヶ谷さんが携帯電話を手に取ったところで、僕は意図に気付いた。 「前に恭介氏が鈴君に着けさせていただろう。あれを見て、私も興味が湧いたのでね。試しに作ってみた」 「そんな簡単に作れるものなの?」 「素材と知識さえあればどうにでもなる。……聞こえるか?」 「うわっ」 受話器のマイクに向けた来ヶ谷さんの声が、イヤホンからかなりクリアな音で聞こえたのでびっくりした。 何だか耳元で囁かれてるようでこそばゆいというか、ゾクゾクするというか……。 「……フフフ」 「そ、その笑いは何?」 「理樹君はおねーさんの声にメロメロか」 「ち、違うって……」 「んっ……ふぅっ」 「うわあっ!」 いきなり携帯電話に来ヶ谷さんが息を吹きかけた。 艶のある吐息に背筋が震え、危うく腰が砕けそうになる。 そんな僕を見て、来ヶ谷さんはにやりとチェシャ猫のような笑みを浮かべた。 「キミは本当に可愛いな。よし、おねーさんがぐりぐりしてやろう」 「あう、ちょ、ちょっと来ヶ谷さんっ」 「……む。いかん、マジで欲情してしまいそうだ」 怪しい目になったので慌てて離れる。 「そんな逃げるようにしなくてもいいだろう」 「だって今の来ヶ谷さん、クドや小毬さんを見る時みたいな目してたよ……」 「キミが可愛過ぎるからいけないのだよ。正直眠っている間に色々しておけばよかったと少し後悔している」 正直過ぎる! 僕がさらに距離を置くと、来ヶ谷さんはわきわきさせていた手を下ろした。 「まあそれはともかくとして、だ。私がこの携帯電話で誘導しよう。対応に困った時は遠慮なく指示を仰ぐといい」 「誰にも会わなければそれに越したことはないんだけどね……」 「ちなみにここは旧館の一階だ。男子寮に辿り着くには、必ず新館を通る必要があるな」 「玄関から外に出るのは駄目なの?」 「雨足はかなり強いし、残念ながら私は今日傘を持っていない」 「……降りそうだったのに? 確か天気予報でも言ってたはずだけど」 「先日ちょっとした事故で真っ二つにしてしまってな。ストックがないんだ」 何をどうして真っ二つになったのかは訊かないことにする。 嘘だって可能性も十二分にあるけど、追及しても来ヶ谷さんはボロを出さないだろう。そういう人だ。 「ああ、言い忘れていた。靴は新館の玄関に置いてある」 「え、もしかして僕のをそのまま……?」 「いや、ちゃんと女子用のものを調達しておいた」 「………………」 ここまで準備が整ってるってことは、絶対に確信犯だ……。 「ねえ、真人はどうするの? 雨降ってるし、部屋にいると思うよ」 「そこも心配しなくていい。少年が男子寮に入る前に、私が電話で退室させる」 「完璧なお膳立てだね……」 「はっはっは、褒めても何も出ないぞ理樹君」 「褒めてないよっ!」 最後の抵抗も、結局無駄に終わった。 諦めて行くしかない。外に出ることを考えるだけで怖いけど、今は何とかなると信じるしかないんだ。 ごくりと唾を飲み、深呼吸を繰り返していざ扉に手を掛けたところで、来ヶ谷さんに呼び止められた。 「ああ、もうひとつ言い忘れていた。万が一の可能性を考えて、下着も女物に着替えさせてもらった」 「…………え?」 「ブラジャー、ショーツ、共に私のだ。無事任務成功した暁にはプレゼントするので夜のおかずにでも使うといい」 最早ツッコミも忘れ、僕は鏡と向かい合い恐る恐るスカートを捲り上げる。 そこにはいつも穿いている見慣れた下着の代わりに、妙にアダルトな黒のショーツが―― 「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 あらゆる意味で、しばらく立ち直れそうになかった。 「ああ……エロ可愛い」 ついでに後ろで来ヶ谷さんが萌えていた。 「もう立ち直ったか?」 「な、何とか……」 本当は全然立ち直ってないけど、とりあえず決心は付いたので頷く。 ここまで恥ずかしい思いをすれば怖いものなんてない。そう、パンツまで脱がされたことに比べれば……。 「言っておくが目を閉じて穿かせたぞ」 「全然何のフォローにもなってないよ……」 「しかし理樹君の身体は実に細いな。思わず色々な場所をぷにぷにしてしまった」 「真人にはもっと筋肉を付けろって言われてるけどね」 「キミは是非そのままでいてくれ」 物凄い真剣な顔で言われた。 「さて、確認だ。少年はこれから私の部屋を出た後、旧館と新館の連結通路を抜けてまずは新館一階を真っ直ぐ進む。 玄関に置いた靴はサイズの違いで他の女生徒のものと区別できるはずだ。一応中に目印代わりの紙を入れておいた。それを確認して履くといい」 「うん」 「玄関から外に出たら、急いで渡り廊下まで駆け込む。その際私が真人少年に連絡を入れ、部屋から退室させる。 キミは渡り廊下から男子寮に入り、そうだな、不審がられたらキミ自身に用事があるとでも言って部屋に戻るのが上策だろう。 洗濯した着替えはベッドの上に置いてあるはずだ。それに着替え、今着ているものを畳んで隠せば任務は終了となる」 「……かなり厳しいね」 「うむ。だが、立ち塞がる壁が高いほどそれを乗り越えた時の喜びは大きいものだ。全力を尽くしてくれたまえエージェント」 と、来ヶ谷さんはそこで悩むような仕草を見せ、 「この場合は女スパイと言った方がよかっただろうか……」 「どうでもいいよっ!」 「ともあれ、ミッションスタートだ」 来ヶ谷さんの部屋を退室した僕は、新館を目指して歩き始めた。 足取りが重いのは仕方ないことだと思う。自然姿勢は俯きがちに。足音もなるべく殺すように。 『調子はどうかね?』 「今のところ誰にも会ってないよ」 『まあ、旧館はあまり人がいないからな。勿論新館と比較しての話だが』 「ってうわぁ、誰か来た……!」 『覚えのある顔か』 「知らない人だ……」 一人の女生徒とすれ違う。通路の右端を歩く僕に小さく会釈をして、上級生らしきその人は何事もなく通り過ぎていった。 僕は彼女が通り過ぎてから振り返り、しばらくその後ろ姿を眺めて、 「……全然気付かれなかった」 『今のキミは完璧に女の子だからな』 「少しも嬉しくないよ……」 『しかし現状ではそっちの方が有り難いだろう。理樹君、前向きに考えればいい』 「例えば?」 『ウエヘヘヘ女の子達のプライベートを見られて超最高だぜとでも思うのはどうか』 「それじゃただの変態でしょ!? そんなことのために僕はこんな恰好でいるんじゃないよっ」 『少年、声は抑えた方が賢明だぞ』 「う、うん、わかった」 ついヒートアップしちゃったけど、来ヶ谷さんの言う通りだ。 ちょっとでも尻尾を出したら終わりなんだから、気をつけなきゃいけない。 「旧館を抜けたよ」 『よし、予定通りそのまま一階を歩いていくんだ』 傍目にはわからないくらい小さく頷き、恐る恐る歩を進める。 旧館より人通りの多い新館の廊下は女生徒で賑わっていて、男一人だけだという自覚がある僕はどうしても縮こまってしまう。 何だか勝手に私生活を覗いてるようで、罪悪感を感じる。 入れ替わり立ち替わり顔を合わせる女の子は、半分が僕なんて見えないかのようにすれ違い、 もう半分は旧館で出会った女生徒と同じく軽い会釈、あるいは挨拶をしていく。 びくびくしっぱなしの僕は、我ながら蚊の鳴くような細い声でしか返せない。 バレたらどうしようという思いがずっと頭から離れずにいて、とても堂々は振る舞えなかった。 『順調なようだな』 「まあ何とかね……」 『私としてはもっとハプニングがあった方が楽しいのだが』 「別に来ヶ谷さんを楽しませるためにやってるわけじゃないよ……ってうわっ」 『む、どうした理樹君』 「葉留佳さんだ」 よくわからない鼻歌を歌いながら葉留佳さんがスキップで向かいからやってきた。 妙に上機嫌みたいだけど、何かいいことでもあったんだろうか。気にならないと言ったら嘘になるけど、 正直葉留佳さんと関わるとロクなことがない。顔をさり気なく逸らしてやり過ごそうと思う。 『よし、おもむろに葉留佳君の胸を揉め』 「そんなことしたら即行で捕まってバレるよっ」 来ヶ谷さんの無茶な指令に反論している間に、葉留佳さんは軽快に横をすり抜けていった。 と、跳ねた反動でか葉留佳さんのポケットから何かがことんと落ちる。 思わず僕は拾おうとし、そこで落とし物に気付いた葉留佳さんも立ち止まり振り返ってしゃがみこんだので、 「あうっ」 「アイタっ」 申し合わせたかのように額をぶつけた。 お互い同時に頭を擦り、謝る。 「ご、ごめん……なさい」 「いやいやこっちこそ拾おうとしてくれてサンキューですヨ」 「あ、額、大丈夫……ですか?」 「平気平気ー。そっちこそ腫れたりしてない? 結構イイ音しましたからネ」 いつもみたいに答えようとして、今の僕の姿を思い出しどうにか敬語を付け足した。 初対面の人が馴れ馴れしい口調だったら変に思われるだろう。性格的にそういう人もいるけれど、 僕は見た目からしてそこまでオープンじゃないことは自覚している。不自然さは人見知りだから、と考えれば傍目には問題なさそうだ。 『ほう、理樹君も随分計算高くなったものだな』 「………………」 来ヶ谷さんの冷やかしはスルー。 「あれ、もしや頭打った衝撃でボケた? まだ先生もいるだろうし保健室まで付いていこっか?」 「あ、いえ、お気遣いなく……」 「そっか。平気そうだし、じゃあここで……っと、ちょっと待ちたまえそこの彼女」 心臓がびくりと跳ね上がった。 一番バレちゃいけない人にバレたかもしれない、そんな不安で冷や汗が滲み出る。 平常心を装いながらも、僕は祈るような心持ちで葉留佳さんの方を向いた。 「……な、何ですか?」 「何かどっかで見たような気がするんだけど……会ったの初めてだっけ?」 「はい……そう、ですけど」 「そーかなぁ……。まあいいや。ありがとね、えっと……おっきいおっぱいの子!」 物凄い呼ばれ方をされた! 僕が突っ込む暇を与えず、葉留佳さんはスキップで去っていってしまう。 「………………」 『正体が露見しなくてよかったな、おっきいおっぱいの理樹君』 「来ヶ谷さんが付けたんじゃないかっ」 『はっはっは、本物かどうかは重要ではないよ。大事なのは、実際に揉めるか否か、だ』 「無視して先行くね……」 『む、反応してくれないとおねーさんは少し寂しいな』 「というか来ヶ谷さん、全くサポートしてないでしょ」 『失礼な。ちゃんとキミ達の会話は聞いているぞ。葉留佳君なら私が口出しするまでもないと判断したのだよ』 「危なくなった時は助けてよ……」 進行再開。 「わふー、ふらつきますーっ」 「能美さん、急がなくてもいいですよ。ゆっくり行きましょう」 二秒で平穏が終わりを告げた。 どうしてこう、会いたくない時に限って顔を合わせるのかなあ……。 『次はクドリャフカ君と西園女史か』 「山積みの本を抱えてるみたいだけど」 『おおかた買い物帰り……と言いたいところだが、まあ恭介氏にでも借りたのだろうな』 「本当だ、よく見ると全部漫画だよ」 『おそらく読む物が無くなってしまった西園女史に、これがオススメだと押しつけたのだろう』 「西園さんが漫画を読むってのはちょっと意外だけど、そんな恭介の姿はすごい想像できるね……」 一学期の半ばからルームメイトになった二人は、クドの積極さもあって仲が良い。 野球の集まりでもクドが西園さんにじゃれてる光景を割と見たりするし、西園さんも悪い気分じゃないみたいだった。 なんていうか、寡黙でしっかり者の姉と元気で慌てんぼうな妹、って感じかもしれない。 ……とまあ、眺めてる分には微笑ましいんだけど、今はなるべく関わりたくない。 二人の邪魔にならないよう通路の端に寄って避け―― 「あ、能美さん」 「わふーっ!」 「うわっ!」 ――るつもりだったのに、クドがバランスを崩してよろめき、僕と肩が触れる。 前のめりに転び、抱えていた本がどざーっと散らばってしまった。 思わず「うわあ……」と声が漏れる。 『どうした理樹君』 「クドが転んで持ってた本をばら撒いた」 『それは能美女史らしいな……。ところでクドリャフカ君は仰向けに倒れたのか? それともうつ伏せか?』 「え、何でそんなことを訊くのさ」 『大事なことだ。答えてくれ』 「……うつ伏せだけど」 『そうか。少年、助け起こしてやるといい』 「うん。大丈夫……ですか?」 「だ、大丈夫ですー……」 言われなくてもそのつもりでいた。西園さんは本で両手が埋まってるので動けないから、第三者である僕が手を差し出す。 しばらく突っ伏していたクドはむくりと起き上がり、僕の助けを借りて立つ。 真っ赤になった鼻が痛そうだ。すごい音したからなあ。びたーん、って。 『よし、次はクドリャフカ君の鼻を擦って、痛いの痛いの飛んでけー、としてみろ』 「ええぇっ!? いきなりそんなことしたら絶対変な人だって思われるよっ」 『問題ない。それにキミはその鼻を見て何とも思わないのか。少しは痛みを和らげてあげようと思わないのか』 「いや、そりゃあ可哀想だとは思うけどさ……」 『ならば迷うより実行に移せ。クドリャフカ君のためだ』 釈然としないものを感じながらも、僕はクドの顔に手を伸ばす。 突然のことに驚いたクドは、僕が鼻に触れても振り払おうとはせず、為すがままだった。 少し熱を持ったそこを優しく撫で、来ヶ谷さんの指示通り言おうとして、今更それがかなり恥ずかしい台詞だと気付いた。 結果、 「い、痛いの痛いの、飛んでけー……」 「………………」 「………………」 『まだ照れ臭さと恥ずかしさを捨て切れていないな。だがそれがまたいい』 「……はっ、本を回収しなければいけませんっ」 呆然としたクドはともかく、西園さんの無表情な視線が痛かった。 しばらく何とも言えない空気が漂い、最初に気を取り直したのはクド。 「あ、ぼ……私も、手伝います」 「ありがとうございますっ」 どうやら先ほどの奇行は流してくれるらしい。また危うく口を滑らせ、僕と言いかけたけどセーフ。 だいぶ広い範囲に散らばった本を一冊一冊拾い上げていく。 その間西園さんは、表情を変えないまま僕のことをじっと見つめ続けていた。 「どうにか全部片付きましたー。お手伝いいただき感謝ですっ」 「いえ、こっちこそぶつかってごめんなさい。鼻は平気?」 「鼻……わふー」 失言だった。 さっきのことを思い出したのか、恥ずかしそうに頬を赤らめるクド。 僕もなんて言えばいいのかわからず、苦笑いを浮かべる。 「だ、大丈夫なのです。どんとふぃーるらいくなのですっ」 「能美さん、それでは“そんな気にならない”という意味になってしまいます。正しくは、Don't mindかと」 「どんとまいんど、なのですっ」 「う、うん……」 言い直した! しかしこの二人、ボケとツッコミに綺麗に分かれてて、本当にいいコンビっぽいなあ……。 『相変わらずクドリャフカ君は可愛らしいな』 「来ヶ谷さん、息荒くして言わないでよ……」 「あの……よろしければお名前を教えてくれませんか?」 「ええ?」 「お世話になった方ですから、お名前くらいは知っておきたいと思うのです」 ど、どうしよう。まさかそのまま答えるわけにもいかないし。 『ここでおねーさんの出番だ。そうだな、安易だが、リカというのはどうだろう』 「リカ?」 『理樹君の理に香る、と書いて理香だ。これなら比較的ありふれた名前で不審にも思われ難い』 なるほど、確かに来ヶ谷さんの発案は悪くない。 僕は少しだけ悩み、他に良さそうな候補もないのでそれで行くことにした。 「……理香、です」 「リカさんですか。可愛らしくていい名前ですー。あ、私は……」 「知ってます。能美、クドリャフカさんですよね」 「はい。是非ふらんくりぃーに呼んでいただけると嬉しいですっ」 「わかりました。……それでは、すみません、急いでるので」 「あ、気付かなくて申し訳ないです。行きましょう、西園さん」 「能美さん、先に戻っていてください。わたしは理香さんとお話がありますから」 「わふーっ、西園さんはリカさんとお知り合いだったのですかっ」 「え、えっと……」 「ではリカさん、しーゆーあげいーん!」 ぱたぱたと歩き去っていくクド。この場に残った西園さん。……妙な展開になった。 クドの姿が見えなくなると、西園さんは僕に近付き、本をそっと地面に下ろしてから、 「………………」 「あ、あの」 頭の両端に結わいつけられたリボンを触り始める。 そのまま十秒ほど僕の顔を見つめて、一歩下がり、言った。 「直枝さん、ですか?」 「え!?」 「……可能性は高いと思っていましたが、どうやらそのようですね」 バレた! 完全に気付かれた! 顔からさーっと血の気が失われていくのが、手に取るようにわかる。 そんな僕を見て西園さんは一人頷き、大丈夫ですよ、と呟いた。 「事情はわかりませんが、好んでそんな姿でいるわけではないのでしょう」 「そりゃあね……」 「もっとも、直枝さんがただの女装趣味の変態であるという線も捨て切れませんが」 「そこはお願いだから捨ててよ!?」 「ですが、どうして女装して女子寮を? ……ミステリです」 「いや、真実は面白くもミステリでもないんだけどさ……」 もう隠す必要もないので、これまでの経緯を簡単に説明する。 西園さんも僕の持病については一応知っているから、大筋に間違いがないことは理解してくれたみたいだ。 というか、来ヶ谷さんの名前を出したら一発だった。 「すみません、来ヶ谷さんに代わってもらえますか」 「うん、いいよ。ちょっと待ってて……はい」 イヤホンを耳から外して西園さんに渡す。 『さすがだな美魚君。いつ気付いた?』 「疑念を抱いていたのはほとんど最初からでしたが、確信に近いものに変わったのは直枝さんが能美さんの鼻を擦った時でした」 『ほう、それはあれか』 「はい、あれです」 『理樹君の恥じらいっぷりが実に素晴しかったな』 「痛いの痛いの飛んでけー……」 「うわああああぁぁああ――――っ!」 今になって恥ずかしさが噴出してきた……っ! 来ヶ谷さんもわざわざ音量上げて僕に聞こえるようにしてるし、嫌がらせとしか思えない。 『気にすることはないぞ少年。キミは充分可愛らしかった』 「全然褒め言葉になってないよっ!」 「今も女の子にしか見えませんよ?」 「西園さんも余計なこと言わないでっ」 『先ほどの音声は録音してあるのだが、気付いたご褒美に美魚君も要るかね?』 「はい、お願いします」 「配らないでよぉーっ!」 「……はっ、私としたことが忘れていました」 おもむろに懐からデジカメを取り出して、ぱしゃりと撮影。被写体は勿論僕。 色々な角度から何枚も撮り、西園さんは満足そうにデジカメを仕舞った。 「女装姿の直枝さんと棗さん……これもありです」 『キミが撮ったものをどう使うのかはわからんが……よくやった』 「後ほど来ヶ谷さんにもデータを渡しますね」 『うむ』 「うわああああぁぁああ――――っ!!」 僕、無事に着替えられても立ち直れないかもしれない……。 『元気を出すといい。そうだ、後でおねーさんがぱふぱふしてあげよう』 「別にいいよ……」 『少しも動揺しないとは、重症だな』 「誰のせいだと思ってるのさっ!」 玄関までの道程がこんなにも遠いとは思わなかった。 西園さんと別れてからたった五分歩いただけなのに、もう息が切れている。 ……いや、切れてるというよりは、精神的に瀕死だった。 「これで西園さん以外の人にも気付かれたら、僕は二度と学校に行けないよ……」 『まあ美魚君なら誰彼構わず言い回ったりはしないだろう。この場合は、バレたのが彼女だけでよかったと思った方が楽だぞ』 「そうポジティブに考えられたら苦労しないんだけどね……っと、玄関に着いたよ」 『靴はあるかね?』 「今探してる……あ、これかな」 明らかにサイズの違うものが一足ある。念のため人がいないことを確認し、僕は靴の中に手を入れた。 奥まで突っ込むと、がさがさとした紙の感触。目印らしきそれを引き抜きとりあえず懐に仕舞う。 「見つかったよ」 『うむ、ではそれを履いて男子寮に向かえ。私は真人少年を追い出しておく』 「了解」 『階段を下りる時は、スカートへの配慮を忘れないように、と忠告しておこう。下手な歩き方をすれば下着が見える』 「うん、気をつける」 『しばらく連絡が取れないので、その間は指示できない。自己判断で行動しろ』 「……わかった」 正直来ヶ谷さんのフォローがない方が上手く行く気はする。 『微妙な間が気になるが……まあ、健闘を祈る』 通信が途切れた。僕は靴を履き、立ち上がる。 土砂降りとは行かないまでも、結構強い降り方だ。時間も中途半端だし、外に出る人はほとんどいない。 それでも僕は飛び出さなきゃいけないんだ。濡れるのは嫌だけど、迷っている余裕はない。 意を決して外に続く階段に足を踏み入れた瞬間、下から慌てて駆け上がってくるふたつの人影が見えた。 「すごい雨だねー……」 「……ずぶ濡れだ」 「りんちゃん、水が滴ってるよ」 「こまりちゃんもだ」 「あ、そういえばよく、水も滴るいい女って言うよね」 「なにぃ? じゃああたしはいい女なのか?」 「うん、りんちゃんは可愛いよー」 「……こまりちゃんも水がしたたってるからいい女だな」 「そんなことないよ〜。りんちゃんの方がいい女だよ」 「いや、こまりちゃんのほうだ」 「鈴ちゃんの方だよ〜」 「こまりちゃん」 「りんちゃん」 鈴と小毬さんだった。 というか、何なんだろうこの二人……。ボケ倒しだ。 「っ、くしゅん!」 「わああ、りんちゃん大丈夫?」 「……ちょっと寒い」 「それじゃ一緒にお風呂入ろー」 「あ、あたしはいいっ!」 「駄目だよ、からだあっためないと風邪ひいちゃうよ〜」 「うう……」 そんなやりとりをしていると、親切な女生徒がバスタオルを持ってきた。 渡されたそれで頭を拭き、楽しそうに談笑しながら、おそらくは小毬さんの部屋に向かった二人を見送る。 まあ、相変わらず仲良さそうでよかった。 「……早く行こう」 立ち止まってても仕方ない。びしょびしょになるのを覚悟で、僕は女子寮を脱出した。 階段だけはスカートの下が見えないよう慎重に気を配りながら下りる。 雨粒を微かに纏った風は煽る形でスカートをめくろうとするので、手を添えて押さえつけた。 最下段に辿り着いたらダッシュだ。髪を、肩を、服を濡らす雨に構わず走り抜ける。 女子寮と男子寮はそれなりに離れているけれど、急げばさほど時間も掛からない。 僕が男子寮側の渡り廊下まで来たのは、女子寮の玄関を出ておよそ二十秒ほどしてからのことだった。 たったそれだけでもかなり濡れてしまった。肌に張り付く服がちょっと気持ち悪い。 でも我慢できないほどじゃないし、まだ問題は残ってる。女子寮にいた時とはまた違う、緊張感を覚えた。 『理樹君、どうだ?』 「あ、うん、どうにか男子寮の前まで来たよ」 『こちらは真人少年を体育倉庫まで連れ出すことに成功した』 「なんで体育倉庫……?」 『気まぐれだ』 「一応訊くけど、どんなことを吹き込んだの?」 『唐突だが、体育倉庫には伝説のダンベルが存在するのだと言ったらすぐに飛んでいったぞ』 「真人……」 少しは冗談だって疑おうよ……。 筋肉のことになったら見境ないんだから。 『ということで、今がチャンスだ。さくっと行ってさくっと着替えるといい』 「……そうだね」 真人には悪いけど、来ヶ谷さんの言う通りだ。 今なら気付かれることなく着替えられる。部屋に行くまでにバレないかちょっと心配だけど……。 『大丈夫だよ少年。今のキミなら乗り越えられる』 「すごく不名誉なことなんだけど、今回ばかりはそう信じることにするよ」 『うむ。では行きたまえ、ラストミッションだ』 返事はせず頷き、僕はいよいよ男子寮へと足を踏み入れる。 まばらに通りかかる生徒から受ける興味と好奇の視線に息苦しさを感じながらも、真っ直ぐ自室へ向かう。 男子寮が女子禁制じゃなくて本当に助かった。鈴なんてしょっちゅう来るしなあ。 『少年、男どもからはどんな風に見られているかね?』 「よくわかんないけど、視線が……その、……に」 『どこに?』 「む、胸とスカート辺りに集中してる気がする……」 『まあ、年頃の男子というものは皆女性に飢えているものだしな。彼らにとってキミは殊更魅力的に映るのだろう』 「それなら鈴とか、もうちょっと人気があってもよさそうだけど」 『鈴君はキミ達と馬鹿をやっている姿の方が目立っているからな。その印象が先行してしまえば、なかなか女性としては見られないと思うぞ。 それに何より、今のキミと鈴君との決定的な違いがひとつある』 「……違いって?」 『おっぱいの大きさだ』 「ぶっ!」 『大概の男はやはり大きい方が好きだろう。私は小さいおっぱいにも小さいなりの良さがあると思うのだが』 「そんなことどうでもいいよっ!」 あと来ヶ谷さんはおっぱいおっぱい連呼し過ぎ。 『理樹君はどうだ? 思わず揉みしだくなるほど大きい方が好みか? それともつるっつるのぺったんこが好きか?』 「どっちでもいいし僕が答えなきゃいけない理由はないと思うんだけど」 『まさか少年は女性に興味がないのか? 男ならいつでもおっぱいを揉みたいと考えているはずだ』 「とりあえず来ヶ谷さんはその考えを捨てた方がいいと思う」 『む、では誰のおっぱいが本命なんだ? 自分で言うのも何だが、私のはなかなか揉み心地もいいはずだぞ。 葉留佳君のは手のひらにすっぽり収まる丁度良いサイズだな。美魚君は小ぶりだが綺麗な形をしている。 クドリャフカ君は本人が気にするような胸の薄さだが、私は似合っていて可愛いと思うし、何より小さいことを悩む姿は素晴らしい。 鈴君はクドリャフカ君以上美魚君以下といったところか。触る機会は少ないが、未成熟な膨らみは実に魅力的だ』 「………………」 『あと、小毬君はああ見えて意外と大きいぞ。あれは良いものだ』 う、うわ……来ヶ谷さんがそんなこと言うから想像しちゃったよ……。 自分でも顔が熱くなるのを感じる。来ヶ谷さんの発言が妙に生々しいものだから、頭に浮かんだ映像はかなりリアルだった。 そ、そっか……。小毬さん、結構大きいんだ……。 『……やはり理樹君も男だな』 「うう……」 『何、恥じることはない。それが正常な反応だよ。……ああ、美魚君ではないがデジカメがあればよかったな』 そうすれば今のキミを撮りに行ったのに、と呟く来ヶ谷さんに突っ込むことも忘れ、僕は恥ずかしさのあまり俯いた。 もしここでみんなと会ったら、まともな受け答えをする自信がない。 「大丈夫か?」 「……え?」 聞き覚えのある声に僕は振り返る。 ――そこには、何故か謙吾が立っていた。 え、えっと……ちょっと待って、何でいるのさ。 『どうした理樹君。今、謙吾少年の声が聞こえたが』 「あ、うん、謙吾と鉢合わせした……。ねえ来ヶ谷さん、真人に電話した時、謙吾は部屋にいたの?」 『いや、ちゃんと一人なことを確認した。他には誰もいなかったはずだ』 「じゃあどうして……」 『おおかた退屈にでもなってぶらついてたんだろう。今日は雨で外では遊べないからな』 なるほど、それはすごく今の謙吾らしい。 『しかし、もし謙吾少年の目的がキミか真人少年なら困ったことになるぞ』 「どちらにしろ、行き先が同じになるからね……」 『その場合は速やかに誘導する必要があるな。大丈夫だ、私に考えがある』 「信じるよ……?」 ここは来ヶ谷さんに頼るしかない。 僕にできるのは、最悪の可能性に当たらないことを祈るだけだ。 「ぼんやりしているようだが……体調が悪いのか?」 「……いえ、大丈夫です。お気に、なさらないでください」 「そうか。で、どうして君は男子寮にいる? 鈴達以外の女性が訪れるのは珍しいんだがな」 「その……」 「いや、言いたくないのなら言わなくてもいい。ただ、女性一人で歩くのは見ていて危なっかしいのでな、 迷惑でなければ俺が目的地まで送ろう」 『本人に自覚があるのかどうかはわからんが、滅茶苦茶自然に口説いてるな』 「ロマンティック大統領らしいからね……」 『さて少年、私の言う通りにしてくれ。上手くいけばここで謙吾少年を退けられる』 「どうすればいいの?」 『それはだな……』 来ヶ谷さんは、簡潔に対応の仕方を囁いた。 僕は声だけで頷く。成功するかどうかはわからないけど、やるしかない。 俯いた僕の様子を訝しむ謙吾に、頭の中で来ヶ谷さんの言葉を反芻しながら僕は小さく言った。 「……わたしは、直枝さんにお願いされて来ました」 「なに? 理樹にか?」 「はい。宮沢さんに話したいことがあるから呼んできてほしい、と」 「それなら携帯を使えばいいと思うんだが……」 「お部屋に置き忘れてしまったと言ってました。また、今は動けないから自分で行くこともできない、とも」 「そうか……。どうして俺がここにいるとわかった?」 「それは、直枝さんが、宮沢さんなら男子寮で見つかるはずだからと」 「む、さすが理樹だな。離れていても俺の居場所がわかるとは、正に絆の成せる技だ」 見事に騙された! 自分でもちょっと説得力のない理由だと思ったのに……。 「それで、理樹は今どこにいるんだ?」 「体育倉庫に」 「わかった。男子寮までわざわざありがとう。今行くぞおおおおおおぉぉぉっ、理樹ぃぃぃぃぃっ!」 そう言うと、物凄い勢いで走り去っていく謙吾。 何というか……まあ、うん。 『女性を装うのもだいぶ板に付いてきたな』 「褒め言葉として受け取っておくよ……」 『はっはっは、理樹君も一皮剥けたようで、おねーさんは嬉しいぞ。まあともかく、あと少しだ、頑張れ』 「……そうだね」 いくら何でも、もう安心していいだろう。 ようやく最終目的地、僕と真人の部屋に辿り着き、周囲に誰の視線もないことを確認してドアノブに手を掛ける。 鍵は閉まってなかった。不用心だけど今回ばかりは有り難い。押し込み、中に入る。 ふう……。これでどうにか着替えられる―― 「ん? 今は理樹も真人もいないぞ……って、誰だ?」 「……あ」 ――誰もいないはずの部屋の奥に、恭介が座っていた。不意打ち過ぎる状況に僕は固まってしまう。 硬直した僕を恭介は値踏みするように見つめ、そして、 「もしかして……理樹か?」 『見事だな。ほぼ一発で見破るとは、付き合いの長い恭介氏だけのことはある』 「………………」 「その反応からして間違いないみたいだな……。正直ちょっと自信なかったんだが」 『少年、呆然としていないで、諦めて腹を割るといい。ここまで来て誤魔化すのは不可能だろう』 「わ、わかってるけどさ……」 恭介に知られたのが、かなりショックだった。 うわぁ……女装趣味の変態だって思われたらどうしよう、そうなったらこれからやっていける自信がないよ……。 動揺を隠し切れず落ち込む僕に、恭介はそっと近付いてくる。 そして、ぽん、と肩を叩かれた。 「大丈夫だ。こんなことで俺はお前を見限るわけないだろう?」 「恭介……」 「そう、例え理樹が女装趣味の変態だったとしてもな」 「うわああああああぁぁぁあぁぁぁぁ――――っ! 違うよ恭介、絶対違うからねっ!?」 『必死だな少年』 「誰がこんな状況を作ったと思ってるのさっ!?」 「おい、さっきから誰と話して……ああ、そうか。理樹、来ヶ谷か?」 しかも来ヶ谷さんのことまで見抜かれる。 恭介はするりと僕の耳元に手を伸ばし、すぐにイヤホンを見つけて外した。 そのまま自分の耳に着ける。 「聞こえるか?」 『うむ。さすがは恭介氏……といったところだが、まさかここまで早く気付かれるとは。油断していたよ』 「単純に通路ですれ違ってたら騙されてたと思うけどな。化粧をしたのは来ヶ谷だろう?」 『他にもいくつか手は入れてある。髪形や服装、顔の特徴を少し変えるだけで、本人とはわからなくなるものだからな』 「ああ、すげえよ……ぶっちゃけ今も女にしか見えん。似合い過ぎだ」 『もしかしてちょっとときめいたりしたか?』 「……まさか」 『今の微妙な間が気になるが、詮索はしないでおこう。貸し一つ、だな』 不穏な会話が交わされている……。 「それで、お前はどうしてそんな恰好でここまで来たんだ?」 「あんまり話したくないんだけど……」 倒れたことと、来ヶ谷さんが旧館の自室に僕を運んだこと、着替えをこの部屋に置いていったことを教える。 女装して寮を歩いてきた理由は、僕が口にした断片的な情報だけで恭介は察してくれた。 話が終わり、イヤホンを僕に返して恭介は立ち上がる。 「じゃあ俺は外に出てるな。一応人が来ないように見張っといてやる」 「え、別にわざわざ部屋から出なくてもいいんじゃないかな……」 「何だ、理樹は俺に着替えるところを見てほしいのか?」 『ほう。羞恥プレイをお望みとは、目の付け所が違うな理樹君』 「……ご、ごめん、恭介は外に出ててっ!」 「あいよ。着替え終わったら声を掛けてくれ」 「うん、わかったっ」 そうだった。いっつも真人がいたりして、そういうことを気にする場所じゃなかったからすっかり忘れてたけど、 考えてみれば今の僕って、その……し、下着も……うわああああああ! 『ほら少年、馬鹿二人が戻ってくる前に着替えた方がいい』 「うう、わかってるけどさ……」 『それとも一人じゃ脱げないのか? ならおねーさんがすぐ飛んでいって着替えさせてあげよう』 「絶対に来ないでよね!?」 胸元のリボンを解き、まずは上着。単純な構造だから脱ぐのも早い。ボタンをみっつ外して袖から腕を抜く。 白のシャツが露わになり、僕の目は服を盛り上げている胸元に行った。薄く透けるブラジャーの膨らみは大きく、 自分の身体にこんなものがあるというのは何だかすごく気恥ずかしい。 (変な気分だ……) そう思いながらシャツも脱いだ。上半身はブラジャーだけになる。 うわ、全然ずり落ちない……。 「来ヶ谷さん……ブ、ブラジャーってどうやって外せばいいの?」 『それはリア式だからな、背中側にホックが付いている。後ろ手で探り当てて外すんだ』 「ん、しょっと……あれ? んっ……なかなか上手く、いかないな……」 『……喘ぎ声がエロいぞ理樹君』 「喘いでないしエロくもないよっ」 ぷちっ、と音がしてブラジャーが下に落ちた。 『パッドは抜いておいてほしい。簡単に取れるはずだ』 「えっと……よし、両方取れたよ」 『揉んでも構わないが』 「やらないからね」 次はスカート。そのまま腰から抜けばいいのか、他に脱ぎ方があるのか悩む。 少し屈んで腰に視線を向け、ちょっとわかりにくい場所に留め具があることに気付いた。 両手で外す。すとんという形容が似合うくらい綺麗にスカートも落ちた。 もう残りはショーツとサイハイソックスだけ。こんな姿を誰かに見られたら首を括りかねない。急いで着よう。 ベッドの上には、来ヶ谷さんが言ってた通りきっちり畳まれた僕の制服が置かれていた。 取り急ぎトランクスを引き抜いて、なるべく今自分が穿いているものは視界に入れないよう、一気にずり下ろす。 脱いだら手に持ったトランクスを広げ、足を通す。慣れ親しんだ感触に少し安心。 半袖の薄着を一枚着て、とりあえずは見られても問題ない格好になった。 もっとも、脱ぎ捨てた制服や下着を片付けるまでは部屋に人を入れるわけにもいかない。 『衣擦れの音が止んだようだが……着替え終わったのか?』 「まだだけど、やっと女の子の姿でいるのは終わったよ……」 『そうか。まあ、キミの女装が見られなくなるのは残念だが、今はお疲れ様、と言っておこう』 全く悪びれる様子もない。 そういうところが、カッコいいのかもしれないけど。 ズボンとシャツまで身に着け、ネクタイと上着は後回しにして脱いだ服を畳む。 自分で穿いてたものとはいえ女物の下着に触れるのは恥ずかしいけど、我慢するしかなかった。 できる限り皺を伸ばし整えていく。普段から真人の分もやってるし、こういうのはそれなりに得意だ。 畳んだ服は毛布の下へ。来ヶ谷さんに返すまでの間隠し通せればいい。 外からは見てもわからないことを念入りに確認し、残りを着た。最後に靴下を履いて完了。 「どうにか無事に着替えられた……」 『うむ。ミッションコンプリートだ』 「恭介、着替えたよ」 「おう」 ドアを開けて声を掛けると、恭介は頷いて部屋に入る。 「……理樹」 「え、なに?」 「頭をちょっと触ってみろ」 「どうしてそんなことを……あ」 リボンが付いていることを、すっかり忘れていた。 慌てて解くとするする音を立てて、小さく結ばれていた髪が戻る。 制服のポケットに仕舞い、二人で誰かに見られていないか辺りを見回す。 「大丈夫そうだな」 「うん、よかった……。ずっと着けてたもんだから、何かもう身体の一部になってたよ」 『少年はドジっ子属性持ちか』 「……何か言った?」 『理樹君は可愛いな、と言ったんだよ』 「今戻ったぜ……」 「ってうわっ! 真人どうしたの!? 謙吾も!?」 何故か二人ともボロボロになって帰ってきた。 「いやな、伝説のダンベルがあるって聞いて体育倉庫に行ったんだけどよ……」 「俺は女生徒に理樹が待っていると聞いて行ったんだが」 「全然見つからなくて探してるうちにこいつが現われてな」 「真人に俺は戦いを挑んだ」 「何で!?」 「いきなり謙吾が『まさか、お前が理樹を攫ったのか!?』とか言い出しやがってな」 『謙吾少年の馬鹿さにもだいぶ磨きが掛かってきたな……』 体育倉庫で一人ごそごそと存在しない伝説のダンベルを探す真人。 そこに乱入して突然「理樹はどこだ!」と叫ぶ謙吾、真人を見つけるや否や「まさか、お前が理樹を攫ったのか!?」 と指を突きつけ、殴り合いに発展……そんな光景がまるで見てきたかのように想像できる。 「しかし結局あの女生徒は何だったんだろうな……。理樹、知らないか?」 「え? う、ううん、僕は知らないよ」 「………………」 『理樹君には魔性の女になる資質があるぞ』 恭介の物言いたげな視線と、来ヶ谷さんの茶化したひとことが痛かった。 「なあ、オレってもしかして来ヶ谷に騙されたのか……?」 「だろうな」 「ぐあああああぁぁぁぁっ、どう考えても殴られ損じゃねえかあぁぁあぁ――――っ!」 「……一番不憫なのって、たぶん真人だよね」 『本来何の関係もないからな』 「騙した張本人がしらっと言うことじゃないと思うけど……」 男子寮の通路に、真人の悲痛な叫びが木霊した。 あん えぴろーぐ 「来ヶ谷さん、いるよね?」 「うむ、鍵は開いている」 翌日僕は服を返すために旧館まで来ていた。勿論素のままで持ち歩くわけにはいかないので、紙袋に入れて。 部屋に踏み入ると、来ヶ谷さんはベッドに腰を下ろし足を組んでいた。思わずスカートから目を逸らす。 「別に見ても気にはせんよ。グエヘヘヘぱんつ丸見えだぜと涎を垂らしながら穴が開くほど眺めるといい」 「そんなことしないよっ」 「ところで、ちゃんと持ってきたか?」 「うん。……でも、本当によかったの?」 「何がだね」 「洗わなくても平気だった?」 あの後来ヶ谷さんは何故か洗濯せずに持ってきてくれと言った。 僕はその不可解な言葉に首を傾げたけど、とりあえず従うことに決めた。 実際制服も下着も畳んでからほとんど触ってない。 渡した紙袋に手を突っ込み、来ヶ谷さんが服を取り出す。 一応全部揃っているかを確かめ、ひとしきり眺めてから頷いた。 「別に下着は返さなくてもよかったのだがな」 「いや、普通返すでしょ……」 「夜のおかずには使わないのか?」 「使わない!」 「何だ、少年は不能なのか? それともやはり女性には興味がないのか?」 「下着を貰って喜んでたらただの変態だと思うよ……」 「私はそれでも一向に構わんが」 「僕が構うって」 「頑なだなキミは。少しくらい自分に素直になったらどうだ」 「素直に断ってるんだけど……。でも、どうして洗濯しないでほしい、なんて言ったの?」 「キミは例えば私に下着を洗濯されたらどう思う?」 「……ああ、ごめん。恥ずかしいよね」 「まあそれは冗談だが。本当は理樹君の匂いが染み付いた服を洗いたくないだけだ」 「それこそ冗談だって言ってよ……」 「はっはっは。まあ、悪いようにはせんよ」 苦笑いするしかなかった。 「そういえば、随分すんなりとここまで来れたようだが」 「何か僕、全然入口で止められないんだよね……」 「UBラインは外と寮の境界線だからな。そこで止められないのなら、中に入っても問題ないということだよ」 「一応僕は男なんだけど」 「男として見られてないのだろう」 「………………」 前にクドの荷物運びを手伝った時はどうとも思わなかったけど、来ヶ谷さんに言われるとすごい複雑な気分だ。 というか、割と傷つく。 「ところで理樹君」 「なに?」 「……本当に下着は持って帰らないのか?」 「帰らないよ!」 「ふむ、そうか、今日は帰りたくないか」 「え、そういうことじゃなくて……」 「フフフ……おねーさんが優しくしてあげよう」 「いや来ヶ谷さんちょっと待っ、」 ……結局、僕達は野球の練習に少し遅れた。 妙に上機嫌な来ヶ谷さんとは正反対に、僕は精神的にボロボロだった。 「うわ、理樹、すごい疲れた顔してんぞ。いったい何があったんだ?」 「あはは、ちょっとね……」 「オレの筋肉を分けてやるから元気出せ」 「いやいや、筋肉は人に分けられないから……」 ツッコミにも覇気がない。 ――僕はしばらく、来ヶ谷さんの部屋には絶対近付くまいと固く誓ったのだった。 「……来ヶ谷さん」 「む、どうした美魚君」 「例のものを持ってきました。SDカードは後で返していただければ」 「了解した。……しかし、この中に理樹君の恥ずかしい写真が入っているわけだが」 「そうですね」 「……まるで少年の弱みを握っているようだな」 「とすると、私達はさしずめそれを材料にして直枝さんを逆らえなくする悪い二人組でしょうか」 「これを公表されたくなければ言うことを聞け、といったところか」 「そして仕方なく命令を受け入れる直枝さん……」 「………………」 「今、ちょっといいかもしれないとか思いませんでしたか」 「気のせいだ」 「そうですか。……ところで、来ヶ谷さんはその写真をどうするつもりですか?」 「まあ、用途は色々ある。知りたいか?」 「……いえ」 「そういう美魚君はどうするつもりかね」 「色々です」 「色々か」 「はい」 「ふむ。……ああ、そうだ。次はこんなものを着せようと思っているのだが」 「直枝さんなら大概のものは似合いそうですね。個人的には、こういうのもいいかと」 「なるほど、一理あるな。ではこの辺りは」 「……ありです」 「フフフ、理樹君、楽しみにしているといい……」 「どうした理樹? いきなり後ろを振り向いたりして」 「いや、何か寒気が……」 そんな会話が、あったとかなかったとか。 あとがき 何かもっと短くなるはずだったのに気付けば50KB近くになってました。書き過ぎだよ私。 その割に面白くないネタですが、まあ適度に許容していただければ幸い。 女装理樹君が振り回される話、というのが一番わかりやすいでしょうか。来ヶ谷さんがちょっと自由に喋り過ぎてところどころで暴走してます。 裏テーマとしては出番の多さに関わらず全員を登場させることでした。これはどうにか。 今回はキャラクターを掴むための実験も兼ねてます。口調などできるだけ本編を見ながら矛盾や違和感がないよう気をつけましたが、 いやはやなかなか難しいものですね。特に来ヶ谷さんはちょっと自信ありません。 暇があったらリトバス二次創作用の資料も作りたいと思ってます。各キャラの呼称や『棗恭介風来記』から推察できる建物や制服のディテールとか、 そういう痒いところをメモっておくだけでも結構楽になるかもしれません。 女子寮は旧館と新館が連結してる、という設定にしています。おそらく一階二階(三階までは背景で確認できる)はそれぞれ繋がってるかと。 背景側の視点だと、左から男子寮→渡り廊下→女子寮新館→旧館という風に並んでいるように見えるので、暫定的にそういう形を取りました。 具体的な構造まではわからないので、適当にロビーと連結通路付近の二箇所に階段があるという独自設定。 クドと美魚さんが本を持って旧館側に向かっていたのは、二階のクドルームはそっちから行った方が近い(ような気がする)からです。 葉留佳さんを目立たせられなかったのはちょっと反省。鈴と小毬さんも何だか端役になってしまったかもしれません。 ……いやまあ、みんな好きですけど、敢えて一番を決めるとすれば姉御だったので。 あと、タイトルの英語はかなり適当です。文法も何もって感じで、私の英語力はだめだめワンコにもおそらく劣ります。 次回は現時点で目処が立っていません。ネタを思いついたら書きます。 というか、正直力注ぎ過ぎました……。 ではでは、ここまで読んでいただきありがとうございます。 くちゃくちゃ楽しめたというのなら、書いた甲斐がありました。しーゆーあげいんっ。 何かあったらどーぞ。 |